ビザンチウム

Byzantium
2012
イギリス・アイルランド・アメリカ
ニール・ジョーダン 監督
モイラ・バフィーニ 原作・脚本
ハビエル・ナバレテ 音楽
ジェマ・アータートン、、、クララ(吸血鬼)
シアーシャ・ローナン、、、エレノア(吸血鬼、クララの娘)
サム・ライリー、、、ダーヴェル(吸血鬼、同盟)
ジョニー・リー・ミラー、、、ルヴェン(吸血鬼、同盟、クララを少女時代に娼婦にする)
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、、、フランク(高校生、バイトでウェイター、白血病、エレノアの彼氏)
ダニエル・メイズ、、、ノエル(ゲストハウス「ビザンチウム」のオーナーの息子)
トム・ホランダー、、、ケヴィン(高校の教師)
マリア・ドイル・ケネディ、、、モラッグ (高校の女性教師)
ウォーレン・ブラウン、、、ギャレス(吸血鬼、同盟の幹部)
何故ビザンチウムなのか。
泊まったゲストハウスの名前と言うだけではちょっと納得まで行かない。
ビザンチウム自体がひとからみあればもっと謎めいて面白かったかどうか、、、
寒色系の悲し気な色調の冷たい空気感をシアーシャ・ローナンが際立たせていた。
美しい絵が堪能できる映画である。
BGMも良く、エレノアの弾くピアノもとても情景にフィットしていた。
丁寧なクロスカッティングで現状と過去の情景が綺麗に編集され母娘の波乱の人生に沿うことが出来た。

この8歳差の母娘の吸血鬼は斬新であった。
(対極の性格の母娘である。どちらも吸血鬼になったときの姿のままで200年を生きている。母は24歳。娘は16歳)。
ふたりとも日光や十字架とか全然気にしないし、恐らくニンニクも大丈夫のはず。
噛まれた人間は単に血を吸われて死ぬだけ。噛む前にまず鋭く長く尖った親指の爪で血を吸う穴を開けるのが特徴。
血を吸わずには生きてゆけない孤独に苦しむエイリアンといったところか(エレノアだけ)。
もっとも斬新に思えたのが、母クララが生活の為と言ってせっせと金儲けを企むところ。
女の子を雇いノエルを利用して住みこんだゲストハウスを売春宿みたいにして札を数えている。
これはなかなか見ない吸血鬼だ。やはり人間社会に娘を守り安全に生きるには金がないと危ないことは心得ている。

エレノアは祈りを捧げつつ、死期の近づいた人の血しか吸わない(同意を得たうえで)。
母のクララは、大胆に誰の血でも吸うが、特に自分たちの秘密に気付いた人間は決して生かしておかない。
長生きしていても、常に警戒しながら葛藤もしつつ孤独の中で生き長らえて来たのだ。
娘の方は解放されて自由に正直に生きたいという気持ちをもって葛藤している。
(手記を書いては破り捨てるという行為を繰り返している。詩的だがリスキー)。
母は割り切って嘘を楽しくついて生きてるが。
エレノアは白血病で余命幾許もないフランクと恋に落ちる。
誠実な彼女は、高校の授業で出された課題の自分の真実の物語(私小説)を、彼に読ませる。
彼は激しく動揺する。
教師もその物語の出来の良さ~文才に驚くが、課題通りのフィクションでないのなら、穏やかではない。
彼は真偽を確かめに家庭訪問にやって来る。
場合によっては彼女を精神科医にも診せなければならない。
結局その教師は首を突っ込み過ぎてクララに血を吸われてお陀仏。

そんななか、、、
掟を破ったモノを罰するため吸血鬼同盟が警察に化けて彼女らを追い詰めてゆく。
彼女らは「創造」の罪を犯してしまったのだ。だから女は仲間に入れたくない、のだそうだ、、、。
ここが一番の窮地であるが、母娘共に捉えられ、十字軍が使ったという槍で処刑されそうになる。
だが、彼女らをずっと調べて来たダーヴェルがエレノアの慈悲深さなどに感銘を受けふたりを助けた。
そして母はエレノアの命を救うために吸血鬼にしてからずっと過保護にしてきたが、別れて暮らす時になったことを知る。
クララは島の地図をエレノアに渡し、フランクと共に生きることを促す。

エレノアは死期の近いフランクを吸血鬼にして生かそうと秘密の島に連れてゆく。
夥しい蝙蝠が潜む小堂のような空間に入ると何かが現れ、噛まれると吸血鬼として再生する。
魂と引き換えに生を得るという。そのシーンはダーヴェル、クララ、エレノアの時と同様であった。
死から逃れるようにして全く新たな感覚で吸血鬼として蘇るのだ。
蝙蝠が夥しく宙を舞い、全ての滝が血の色に染まる、、、。

これからは血さえ吸っていればいつまでも生きられる。
いつまでも生きているのが幸せとは謂えないにせよ。
お互いに孤独であれ、支え合って生きてゆけることは、大きいのでは。
シアーシャ・ローナンが冷たく怪しい光の中、儚げで異様に美しかった。
やはりこの二人の女優で魅せる映画でもあったことは確か。
AmazonPrimeにて
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは確かに以前、映画で観たと思い、このブログ上で検索すると「アンチ・ヴァイラル」の人だった。如何にも、である。
所謂、性格俳優であるか。
とても癖の強い役柄ばかりである。
「デッド・ドント・ダイ」、「ラスト・エクソシズム」、「ゲット・アウト」、「スリー・ビルボード」等々。
それから吸血鬼のもうひとつの特徴を書き忘れていた。映画のシーンでも観られるが、彼らは「招かれないと家には入れない」のだ。
確かにそのシーンがあった。何で外に立っているんだろう、と言うところがある(笑。
- 関連記事
-
- ブレア・ウィッチ・プロジェクト
- 洞窟
- ビザンチウム
- ベイビー・ドライバー
- ザ・ウォード 監禁病棟