ストレイドッグ

Destroyer
2018
アメリカ
カリン・クサマ 監督
フィル・ヘイ、マット・マンフレディ 脚本
ニコール・キッドマン 、、、エリン・ベル(刑事)
セバスチャン・スタン、、、クリス(エリンの元相棒刑事)
トビー・ケベル、、、サイラス(強盗団のボス)
タチアナ・マスラニー、、、ペトラ(サイラスの情婦)
ブラッドリー・ウィットフォード 、、、ディフランコ(弁護士、サイラスの資金洗浄係)
ジェイド・ペティジョン、、、シェルビー・ベル(エリンとクリスの娘)
スクート・マクネイリー 、、、イーサン(シェルビーの継父で養父)
トビー・ハス 、、、ギル・ローソン( FBI捜査官。エリンとクリスの17年前の潜入捜査を指揮)
ザック・ビーヤ、、、アルトゥーロ(強盗団のメンバー)
ボー・ナップ、、、ジェイ(シェルビーの恋人)
シャミア・アンダーソン、、、アントニオ(エリンの現在の相棒刑事)
「デストロイヤー」が「野良犬」に。何だろう、この変換。
そうかサイラスがエリンに言い放った言葉に「おまえは飢えた野良犬だ」というのがあった。
全編にわたりヒリツク映画であった。

トラウマ~悲惨な失敗と喪失に窶れ果てた刑事エリン。
彼女がニコール・キッドマンとは暫く気づかなかった。
(ただ気になるのは、ニコールもそうだしシャーリーズ・セロンもだが、オスカー狙う時、凄い顔の醜悪な変形させるのが、とても嫌。ゲイリー・オールドマンがチャーチルで取ったときもそうだが、彼の場合、変装の部類でとても面白かったからよいが)。
やはり美人女優は、その容姿のままで、演技でそれ~世界観を表現してもらいたい。演技力もあるのだし。
ここでの演技も凄まじいのひとこと。とは言え、こういうのあまりやってほしくない。
導入部が肝心な映画であった。
殺人事件の現場にエレンが酔っぱらった状態で現れ、そこで現場検証している刑事に迷惑がられる。
暫く状況を確認するが、ここはわれわれの管轄だから、帰って寝なさいと諭されると、「わたし犯人知ってる」と言って去ってゆく。
刑事は知ってるなら教えてくれとは言うが、期待はしていない。「おかしなやつだ」と呆れて見送る。
もう内面に秘めた執念と冷っとするような渋さで獲物を狙ってゆく、、、復讐劇なのだが。
精神的に蝕まれた感が強い。薬も飲んでるし睡眠不足丸出しで、大丈夫か、と誰もが尋ねたくなる為体。
あの事件から17年間、どれほど過酷な人生を背負って来たのかという凄い形相である。
あの事件というのが17年前の強盗団の潜入捜査で(二重の意味で)失敗し恋人でもある相棒を喪ったもの。
まあ、欲に目が眩んだことがそれを招いたもので自業自得であることは間違いない。
(あわよくばねこばばしようとしたのだから。連中が人を傷つけようとしたらFBIとして阻止するつもりであった)。

それで刑事はそのまま続けてはきたがアルコールのせいもありボロボロでヨレヨレ。
同僚には変人扱いされ、愛娘にはさんざん背かれ不良と付き合い夜遊びが絶えず、上からは要注意人物扱いか。
どうやら皆から疎まれている様子。
(娘の反抗は身につまされる)。
そんななか、昔の因縁の男、サイラスがかつて銀行で盗んだ札を一枚封筒に入れて送りつけて挑発してきた。
かつて銀行強盗したときに行員に仕込まれた粉料パックの紫色のついた札である。トラウマが疼く。
またやるつもりなのだ。今度こそ阻止する。
彼女は、たった独りでそれに立ち向かう。
独りで立ち向かうしかないのだ。真実は伝えられないし。
途中何度も細切れの過去の潜入捜査時のフラッシュアップが巧みに挿入される。
当時一緒にやった強盗団の一人アルトゥーロは教会で贖罪の意識からか難民相手に法的な相談役を果たしていた。
そんな連中に次々にあたりながら、徐々に探りを入れてサイラスに接近してゆく展開。
同時に、娘と何度も会い、何とか愛情を示し立ち直らせようとするが、娘は納得せず平行線のまま。
不良にもその都度邪魔される。後に彼を単独で呼び出し、せしめた金で紫色の付いていないものを全額渡し娘と手を切ることを誓わせる。これでかつて手に入れた金で使えるものは全て渡してしまう。
しかし既に娘とは関係性をいまさら更新出来ないことを知る。ある意味、最後は良い母親になれなかったことを詫びお別れの場面ともとれる。娘が独りカフェに取り残される様子が象徴的に映される。

サイラスの資金洗浄係の弁護士ディフランコともひと悶着。もう体も悲鳴を上げているのがよく分かり限界に近い感じ。
丁度銀行強盗に入った情婦のペトラをハアハアしながらどうにか捕まえる。
彼女の携帯からサイラスとの落合場所を知り、17年ぶりに遭ったところで男を射殺する。
そして、何と映画の最初の場面に繋がり重なる。凄い。こういうことだったのか。
(このパタン見るのが初めてではないが、実に手並みが鮮やかであった)。
車にいるところを今の相棒が元気付けにやって来る。
彼女は、捕らえたペトラのいる住所を書いた紙を渡して後を頼むと謂う。
車の中でのエリンの表情。
様子が変だ。
彼女はどうなるのか、、、。
Wowowにて
終始、暗い顔をしているエリンであったが、過去の潜入捜査の頃は結構、強盗団と仲良さそうに打ち解けて明るい顔が見られる。
彼女自身、恋人とこうした環境にいた方が元々楽しい人なのではないか。
これはニコール・キッドマンの演技~解釈の現れかも知れぬが、、、。
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