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犬塚勉~リアルとは何か?

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それは、一片の欺瞞もないこと。
虚飾のないこと。
描ききること。
妥協を許さぬこと。
謙虚であること。
ストイックであること。

犬塚勉のように。
犬塚勉ーリアルの代名詞である。

犬塚は、「永遠に見続けたい風景」を描こうとした。
誰もが何と思うことも無い「梅雨の晴れ間」の原っぱをこれほど神聖な宇宙として描ききった画家が他にいるだろうか!
湿気と日差しによる柔らかさ、ちょっとこそばゆ気で愛しげな雑草のタッチ。
長靴で踏みつけられ折れ曲がった草も優しく折れて美しい。
彼はこの景色を描く頃から、面相筆を主に使い始めている。
スーパーリアリズムと呼ばれることもある彼の絵であるが、ただ細かく描けばこうなるというものではない。
写真みたいという、必ず声が聞こえるが、写真はこんなに鮮烈ではない。
自然の密度と重みが違う。
土の匂いが違う。
無数の生命の蠢きが聴こえる。
ルドルフ・シュタイナーがこの絵を観たら何というだろう?

まずは、精緻な観察があった。
表現と言う距離すら失くしてしまいそうになる近接があった。
犬塚は、独学で登山の技術をを身に付け、地に草の中を這いつくばって「自然」を知ろうとした。
風景を漠然と描きたいという幼いころの夢はいつしか「自然」そのものに深く分け入る気迫とともに、宗教的な畏怖の念をもって「自然」に向きあうようになっていた。
登山を繰り返すたびに、五感の研ぎ澄まされていくことが解る。
彼はさらに感覚が解放されてゆくのを知る。

「わたしは自然になりたい」
ブナの木となり、河原のひとつの石となる。
リアルとは何か?
その精緻な雑草の生い茂る原っぱの絵から無数の生命の営みの囁きが聴こえる。
この垂直的な描画が生命ー自然ー他者との出遭いを可能とした
つまり、自分の自我ではなく、他者としてのリアルを観たのである。
描きとめるのである。

1947~1988の画家の人生。
バブル期の浮ついた時代に、犬塚は短い生を行者のようなストイックな道をたったひとりで極めることに使いきった。
宮沢賢治も思い起こす。
稀有なしかし絶対的な重みをもって存在するヒトのひとりだ。

犬塚の鋭い感覚が立ち上る香りや押し寄せる濃厚な色彩を次第に鮮烈に受け止めてゆく。
彼はその度に大発見したと叫び、間髪を入れずスケッチをする。
それによって描かれた「ブナの森から」
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これは、ジェッソで下地を幾重にも塗ってから櫛で引っかき傷を作り絵筆で仕上げている。
風雪に耐えつつ、自然の流れを押し返して来た傷だらけのブナの質感と量感が極限的に捉えられている。

犬塚は油絵の他に細密画を描くに適したアクリルも多く描いている。
乾燥が早く的確でシャープな表現が素早くできる。
自分が捉えたイメージを直ぐに具現化するに最も適した画材である。
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ますます、神秘なる自然に対する姿勢は厳しいものとなり、死に限りなく近接する限りにおいて得られる自然の姿を描き取ろうとする。
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「暗く深き渓谷の入り口Ⅰ」絶筆。

彼は「どうしても川の水がうまく描けない、もう一度水を見てくる」と言って谷川岳に出かけたのを最後に帰らぬ人となった。

享年38歳。

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