昨日の月

途轍もなく大きな月であった。
昨日?いや一昨日だったか、、、。
記憶が定かでないのだが巨大な月だけはくっきり覚えている。
妻を車で迎えに行き帰宅の途上、夜空がポンッと開け放たれた虚空に巨大な月の出現だ。
赤く燃え盛る禍々しくもゾクゾクする月。
生まれてこのかた、初めて観るサイズの月である。
大昔、月は今より地球にずっと近く、大きかったと謂われる。それが遠ざかって行くものだから人類は手を伸ばして二足歩行となったという説もある。
わたしもネアンデルタール人の観た月を観たのであろうか、、、まだ充分に大きい。
時間の概念があらゆる物理法則から外され、過去も未来も今も無くなり出来事のみが起こる世界にあって、、、何の不思議もない、というよりただウキウキするではないか。
よく地平線近くの低い位置にある月は大きく見えるなどという俗説のあることは知ってはいるが、、、。
(物との対比で大きく見える錯視とか。その説明では余りに弱いし下らない)。
見えた時点でひとつの現実でありそれが全てなのだ。
それ以外のわたしの現実があろうか。
世界が絶えず変化するなか、これもひとつの出来事~イヴェントであり、月の巨大化によって新たにわたしの固有時が構成される。
それでよい。
現にわたしは、涼やかで禍々しい月から”破壊力”を吸収した。
一番欲しいものである。
では、また。
