東京ヴァンパイアホテル

TOKYO VAMPIRE HOTEL
2017
園子温 監督・脚本
夏帆、、、K (留学時にドラキュラ族となる)
満島真之介、、、山田(コルビン族の帝王)
冨手麻妙、、、マナミ (22歳の誕生日に覚醒するドラキュラ族の救世主)
神楽坂恵、、、エリザベス・バートリ (山田の恋人、女帝の娘)
安達祐実、、、コルビン族の女帝・姫 (姉妹の二役)
岩永ジョーイ、、、ジョー (コルビン族の凄腕殺し屋)
渋川清彦、、、コーディ (料理人)
森七菜、、、アカリ (ホテルで初めて生まれた子)
コトウロレナ、、、ノア (Kの親友)
階戸瑠李、、、サランド
Cristi Rigman、、、ドラキュラの族長

一話30分の全10話による配信ドラマ。
一度に観るには流石にキツイものがあった(笑。
大風呂敷を広げているので面白いと言えばそうだが、首を捻るところが多い。
荒唐無稽な世界観だとしても、それとして整合性がないと物語として成立しないものだ。
しかしエンターテイメントとして楽しませようというサービス精神は充分感じられる。

主題曲はこのころからかなり流行り出した一連のボーカロイド製作モノか。最近もよく耳にするタイプで皆同じに聞こえる。
セットは豪華であった。夏帆とコトウロレナは実際にルーマニアにロケに行ったようだ。お金はかなりかけた感じ。
キャストもちょいと知ってる俳優が次々出て来てその点でも面白い。セリフのある外国の俳優の数もかなりのもの。
惜しくも亡くなられた方も出ていて感慨深い。
過激な演出とかは話題になっていたが、殺し合いバトルの尺は確かに長かった。
性的な暴力はほとんどあからさまなものは無い。対象はマナミになろうが、主に血を吸われまくる。
そこが何より痛ましいのだが(とても痛そうであった。苦手こういうの)。
ドギツイ原色のホテルはギラついた舞台であったが、もっとギーガー風に生物と無機物の有機的な融合体のように仕上げても良かった。
それとの対比でアカリとコーディの落ち着いた(色調の)シーンが活きていたが。

冨手麻妙さんが猛烈に頑張った。あそこまでやってその後に繋がっていない気がするのだが、勿体ない。
夏帆ってこんなにカッコよいんだ。初めて知った。
印象に強く残るのはこの二点。
そうそう、安達祐実が不気味でキッチュだった。弄られてるみたいだったが、乗りまくっていた。
ホテルそのものになったりしていて実際に一番楽しそう(笑。だとすれば、一番苦しいのは冨手麻妙だろう。
バリカンで髪まで剃り上げてしまう。理由は全く持って分からん。

首を捻ったところとして(全部述べてる余裕はないが)、、、
コーディ はヴァンパイアのはずだが、昼の海辺で清々しく騙ったりして、、、日光に強いのか。
ホテルにはまだ人間もいたはずだが、Kが門を開けてしまったら皆消えてしまったのは何故?
(全員がヴァンパイア化していたのか。そうであるなら同族の血を吸っていたことになり、人間など最初から不要ではないか)。
マナミが人間に戻り、日光でも大丈夫のはずが、最後の海の向こうに行こうとコーディとアカリが対話していた時は、車内で厳重に光除けをして寝ていた。しかし彼女はエンドロール後に会社のOL山田さんとして普通に働いているではないか、、、立ち位置がよく分からない。
山田が独りで(エリザベスと共に?)あれだけ大袈裟なトリックを構築出来たというのも謎(合成動画は兎も角として特に扉の向こうの燃え盛る廃墟の演出など大規模なもの)、更に日本が終わると複数の占い師がパニックとなる光景が何に対するアピールなのか意味不明。単なる山田の嘘に関係ない外界でこんな芝居を打つ必要など全くないはず。
そもそも現首相である山田の父が何でコルビン族の女帝に子供を差し出すことでその地位を得たのかさっぱり分からん。
こんなことを挙げてゆくときりが無いのだが、、、。

ドラキュラ一族とネオ・ヴァンパイア(コルビン)族との抗争に巻き込まれたKやマナミ自身の闘争と運命、そしてコルビンの家畜として集められた人間の抵抗と妥協(共存)が描かれるが、それが愛や欲望の為の奪い合いでもあるような壮大な絵巻を作らんとした意図は分かる。
しかしKの属するドラキュラ陣営もルーマニア本部からさッと見切りを付けられ(単にマナミの血を提供しただけで)、実に小規模の山田達との抗争に矮小化された形で終わっていた(しかもKの族長に対する愛は、山田の謂うように裏切られて)。
ここで特殊なことは、山田が自分の治めるヴァンパイア達も騙し、世界は核戦争で終わったと吹聴してホテルに閉じ込めること。
後に残った人間と共存し15年間ホテルに缶詰めで暮らしたヴァンパイアも山田に騙されたと怒っているが、このクローズドな環境に籠ること自体、心身にとり不健康極まりない、上手い方法とはとても言えまい。核による環境汚染が100年で何とかなる根拠もない、実は先の見えないなかでこれからも悶々と暮らすのだ。やってられるか?
コロナ禍で籠る現状からもはっきり分かる。
父に捨てられコルビン族の女帝に引き取られたことへの怨念~トラウマによる行為としても余りに歪んでいる。

単に食料(血)の安全な確保というだけなら、他に手はあるはず。というより人間をその先100年飼育する食料をこそどうやってホテル内に幽閉しつつ調達するつもりであったものか。山田はノープランであるのは確か。最初から破綻している。当然、コーディ のような存在が外への抜け道を見つけ、そこでアルバイトしながら食料を調達せねばならなかった。これは飽くまでも偶然彼が外に出られた為の結果に過ぎない。
ホテルで生まれたアカリさえも外を意識し、実際にコーディ の後を追って外界に出てゆく。
しかしアカリが何故あのように過剰に外を意識するのか分からない。何が原因なのか。花弁からそれを意識したというだけでは弱過ぎる。外を知っている人間が寧ろ外を恐れて引籠りたいと言う方が説得力がある。
しかし血を供給し続ける存在がいないとホテルが存続しないというのも分かり難い。生物として生きているホテルなら(あの地下の落ちこぼれ族はどうなったのか、彼らも血を提供していたが)、それが具体的に何に還元されているのか(代謝の結果として)、、、。
その辺のメカニズムが分からない。
そして実質姫から引き継がれたKの身体から提供される血にも限界がきたとして、こんな非効率的な環境~ホテルなど意味がないだろ。
ただの無機物の建造物の方が遥かに合理的だ。
そして結局全てが日光で滅ぶ。

ヴァンパイアものだからそれで良いにしても、余計なものことが多過ぎる盛りだくさんエンターテイメント配信ドラマであった。
AmazonPrimeにて
- 関連記事
-
- デリバリーお姉さん
- チェンソーマン1話.2話
- 東京ヴァンパイアホテル
- 監獄学園-プリズンスクール-
- ヒーラー・ガール 1~8