雪の花 ディレクターズカット

2014
小野寺昭憲 監督・編集
糸宇ひろみ 脚本
真柴史朗 音楽
渡辺裕之,、、、夫
原日出子,、、、妻
綾田俊樹、、、校長
35分の作品。
雪中花に囲まれて雪に横たわって夫婦で語り合うシーン、ちょっとどうにかならなかったか。
高校の校長が生徒の卒業の度に雪中花を植えてゆき既に廃校となり地図から村自体も消えてしまったにもかかわらず、ずっと増えて雪の下で咲き続けていた花である。
こんなに増えていたのか、、、
丁度二人分空白部分を中央に空けて雪中花が取り囲んで咲いている。
しかも花は雪の下から妻が堀出してその存在をはじめて知ったのだ。
横たわる二人を取り囲んで、雪の上に綺麗に咲き誇っているというメタ情景には流石に白ける。
ここは、ざっくりと掘り下げられたところに咲き誇る花の群れがあり、それに対し、しゃがむか座って臨み夫婦で語り合いイメージを交わし合う、でよかったはず。
また他にも二人で雪に横たわるシーンもありそれらのイメージがダブることからも逃れることが出来る。
だがその他の場面で気になるところはなかった。
閉店の貼り紙ひとつでこの夫婦のおかれた苦境も分かり、車がもうガス欠で先に進めず、ひたすら故郷の土地に向かい雪の中を踏み惑うところもふたりの絶望をよく表していた。
口癖のように夫は「雪の中で死にたい」と言っていたと。
幻想が雪原~死地の世界に自然に立ち上がってくる。

夫婦で駅の待合室のベンチに寄り添っていると、自分たちが高校を卒業して二人して上京する夢と希望に溢れた若かりし姿を共に幻視する。
雪中花を見つけた時は、校長先生が何故それを植えているのか、そのときの姿と言葉が生き生きと蘇る。
卒業生の誰もがこの花のように逆境にも負けず強く生き抜いてくれることを祈り植えていたのだ。
そしてふたりして高校の鉄棒を見つけそれを頼りに、校舎内を雪の幻想の中で共に巡る、、、。
ここのカットは見事であった。
ふたりして夢破れ、今や地図からも消えた故郷に戻り、雪の中で死のうとしたのだが、、、
雪の下で健気に生きる雪中花~越前水仙に触れることで、もう一度生きようという意思が夫婦に蘇る。
最後は夢をもって二人で列車に乗る高校を卒業したばかりの頃の姿からエンドロール、、、
先走る再生に向けた二人のイメージかも知れないが。
あの深い雪原から駅まで既に体力もあるまいに、どうやって辿り着けるのか。
実生活でも夫婦である。息の合っているのは言うまでもない。渡辺氏のご冥福を祈る。
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