家族ごっこ

2018
サトウタツオ 監督
奥咲姫、、、主催者ナナミ
以下、皆ごっこ役の家族
室上茂,
田口ゆたか
苑花奏,
田中克憲,
福原佑樹,
松永毅,
宇海凛
奥咲姫の主演ショートもの二本目。”Happy Hunting”に続き。
この女優さん、どんな役でも熟せそうだし、もっと沢山の映画に出て欲しいものだ。
今回も、普通の家の主に一部屋を使っているだけのもうこれ以上ないくらいの低予算もの。
でもこれで充分。
ある男性が「家族ごっこ」というチラシを見てその場所を訪れると自分を含め5人の「家族」が集合となった。
金目当てのチャラい感じから何やら抱えた重い雰囲気の人から、その面々ですんなり行くものかどうか、、、
怖いわ、結構。まあCUBE程ではない。殺される心配はなさそうだし帰れそうだし(笑。
だが、主催者がやたらとキツく要求レベルが高い割に集まった素人集団が酷い大根で成り立たない。
彼女は飴とか投げつけて怒り罵り、次々にクビにしてゆく。
当然クビだわと思うものと、かなり頑張って乗って来たのにというケースもある。
主催者のメガネに適わなければ、それまで。
一日1~3時間くらい家族の振りをして演じてくれれば、ひとり日給3万円。
これ自体、悪くない噺だ。
しかも前払い。出来不出来に限らず。
だが、不出来だと、その場でクビ。もう後がない。
気楽な気分で来た者は、皆途中からいなくなってしまう。
続かない。
主催者が、どれくらい(何日くらい)続けるものかも分からない。
全て彼女の気持ち次第。彼女の狙いとは、、、。
何で「家族ごっこ」なのか、、、。
暫く顔を合わせてゆくうちに、役柄ではなく、本心で喋る余地も生じて来る。
金だけ目当ての者は忽ち消えたが、それ以外は家族に問題を抱えて来た者で、疑似家族体験から何かが得られるのではとやって来たようだ。だから縋りつく情熱も多少ある。
一種のカウンセリング、セラピーのロールプレイ療法みたいな。それを金をもらって受けられるなら儲けもの?
家族問題でケアーを求める人は少なからずいるものだ。
主催者の若い女性も家庭崩壊を経て、これを企画したらしい。
このシナリオがあるようでない疑似家族体験がどう機能し作用するのか。
「家族」自体が本質的に最早無意味であることを悟り別の場所へと展出を図るのか。
「家族」を再定義し、新たな家族像を生成したうえで、その家族の中で生きてゆこうとするのか。
徒に適当な演芸を続けてゆくのも限界がある。彼女の貯えも心配になるところ。
結局、おとうさんとおかあさんの2人になってしまい、この家族は実質立ち行かなくなるが、役を離れた関係性(演者に対しメタ関係は彼女が強く禁じていたのだが)も自然に生じていたことから、翌日は素でこの男性二人と彼女が語り合おうということになる。
翌日、ただの人となった二人が食べ物の入った袋を手に訪れると、何と彼女が手首を切って倒れているではないか。
驚愕し絶望に打ちひしがれる二人。
そこへ彼女が。
ケチャップ狂言自殺である。(ここまでの流れは完全に予想がついた)。
これはショック療法か。何に対する?関係性の鮮烈な更新の為の?
すでに家族がどうというより、情の通った人間同士の関係が目覚めていたところに、これである。
全身冷水浴びたような気持で、きっと率直な噺が腹を割って出来た事だろう。
もう家族(という概念)自体、拘りも必要もあるまい。
最後はひとり吹っ切れた表情の彼女であった。
ちなみにわたしにとって、家族とか宗教とか全く無用なものだ。
早晩消えてなくなってよい。
AmazonPrimeにて
エンドロール後のオチのシーンには、そうきたか。である。
どういう結果を呼ぶかは分からないが、面白いとは思う。
ショートフィルム癖になる(笑。
この映画は、21分であった。
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