ファミリー ファミリー

2019
大川裕明 監督・脚本・編集・音楽
大川裕明、、、ツバサ(弟、ラーメン屋でバイト、余命半年膵臓がん)
泉水美和子、、、アキ子(母、認知症)
彦坂啓介、、、マサル(兄、発達障害のニート)
29分の短編映画だが、途轍もなく重い。
逆にこれを120分でやられたら、こっちが倒れる(笑。
最後にデイサービスを頼んでいたが、生活保護の対象に入るケースのはずであり、申請を民生委員とかケースワーカーが勧めてくれれば良いが。
母は真夜中に突然起きて「よ~い、よ~い」と踊り出す。オムツも自分では覚束ない。長男を夫と勘違いしている。
弟はラーメン屋のキツイアルバイトがあるのに、毎晩起こされて睡眠不足で疲労が蓄積。
兄はニートで、漫画や小説を書くと言っているがやっている気配はない。
劣悪な生活環境であることから兄の耳にゴキブリが入り、それを3日後くらいに医者で取って貰うがその後、耳が唸るという。
元々、ワーキングメモリのある人ではないが、もうほとんど人の話がまっとうに聴けなくなる(特にお説教)。
これで仕事は、極めてキツイ。言葉の額面に強く拘り日常のやり取りも覚束ない。暗黙の意思疎通が利かなければコミュニケーションは滞る。
同時に、弟は医者の検査に引っかかっていて、造影CTの結果、膵臓癌のステージ4にあり、持って6カ月の余命を宣告される。
稼ぎ手はこの弟独りなのに。夕飯はいつも彼のバイト先のラーメン屋の煮卵とチャーシュー。流石に麺は持ち帰れない。
もう家の蓄えも底をついた。
この時点で制度的に保護がかからなければ、この一家の崩壊は免れない状況となる。
彼らだけでは余力も何もない。何も見えない。
弟は何とか自分がいなくなった後の生活を兄に託そうとする。
だが、兄にいったところで一切受け付けない。「だめだよ~。わかってるだろ」
認知症のかなり進んだ母と発達障害の兄の会話がほぼギャクになっていて所々で笑ってしまう。
もっとも深刻で絶望のどん底にある弟も思わず苦笑する。
兄に何とか頑張って欲しいと願っても無理だと突っぱねられ、その背景では今夜も母が「よ~い」と踊り出す。
「ピクニックに行こう」兄が提案する。「僕たちを残して行かないでよ。」
翌日レンタカーに練炭積んでピクニックに3人で出向く。
綺麗に晴れ渡ったピクニック日和に。
車内で無邪気に喜ぶ母。相手をする兄。冗談みたいなやりとりを聴きながら運転する弟。
これがただの休日の家族そろってのピクニックなら、、、
3人シートに寝そべり空を眺める。「たまにはいいよなあ~」と兄。
「長生きはするものよね~。」母は上機嫌で、隣の弟に、兄弟のことを褒めて聞かせる。
勿論、当人に言っているのではない。兄は夫だと信じ込んでいるし、弟は他人(ラーメン屋)だと思っている。
しかしこころは、ふたりの息子のありのままを愛し、一片の疑いもなく信じていることが分かる。
良い母だったということは、はっきりと分かる。だから今も大切にしているのだ(エンディングの曲の歌詞からしても)。
そして母は胃薬だと言って渡された睡眠薬が効いて眠りに落ちる。
ここで弟は、兄に死んだ気で頑張ってくれと泣いて懇願する。
兄は仕事に就いていた。
勿論、作業効率は酷く悪く上司からしこたま怒られていたが、言葉として彼には届いておらず笑顔で返していた。
だから、続く。
明日からデイサービスが入り、淋しくないですよという介護の女性が母に話しかけていた。
弟の気配は何処にもなく、、、。
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