DUNE/デューン 砂の惑星

Dune: Part One
2021
アメリカ
ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督
エリック・ロス、ジョン・スペイツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ 脚本
フランク・ハーバート『デューン砂の惑星』原作
ハンス・ジマー 音楽
ティモシー・シャラメ、、、ポール・アトレイデス(アトレイデス家の後継者)
レベッカ・ファーガソン、、、レディ・ジェシカ(ポールの母、レト公爵の愛妾、ベネ・ゲゼリットのメンバー)
オスカー・アイザック、、、レト・アトレイデス公爵(ポールの父、アトレイデス家の公爵)
ジョシュ・ブローリン、、、ガーニイ・ハレック(アトレイデス家の武術指南役)
ステラン・スカルスガルド、、、ウラディミール・ハルコンネン男爵(ハルコンネン家の当主)
デイヴ・バウティスタ、、、グロッス・ラッバーン(ハルコンネン男爵の甥)
スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、、、スフィル・ハワト(アトレイデス家のメンタート)
ゼンデイヤ、、、チャニ(ポールの夢の中に出てくるフレーメンの謎の女)
チャン・チェン、、、ウェリントン・ユエ博士(アトレイデス家のスク・ドクター)
シャロン・ダンカン=ブルースター、、、リエト・カインズ博士(チャニの母であり生態学者)
シャーロット・ランプリング、、、ガイウス・ヘレン・モヒアム(ベネ・ゲセリットの教母)
ジェイソン・モモア、、、ダンカン・アイダホ(アトレイデス家の剣士)
ハビエル・バルデム、、、スティルガー(フレーメンの部族長)
ついに”DUNE”の完全版を観ることが叶う。
10191年の噺だったのね。
(原作未読なもので)。
現実空間を0から創造する作業だな、これは。

本編は155分を使って描かれた前半である。というよりイントロを見終えたという感じ。
(やっと予知夢に何度も現れていたチャニと現実の砂漠で出逢ったところで終わりである)。
アトレイデス(いや救世主か)が砂漠の民フレーメンと共に皇帝軍とハルコンネン家を敵に回しての宇宙戦争を始める後半がともかく見もの。
あいつらが最初からアトレイデス家を潰そうとしていたのは明らか。その悪意と害意に対し徹底的に闘い完膚なきまでに撃滅するのみ(どうなるのかわたしは知らないのだけれど(笑、カタルシスをせっついている訳ではない)。
実に壮麗で重厚なワクワクする世界観~物語の前半である。
(パート2が早く観たい)。

アレハンドロ・ホドロフスキーが10時間越えの映画を綿密に細部まで構想・企画した最初のDUNEが余りのボリュームから実際の製作まで漕ぎ着けなかった(巨額の製作費が何よりネックとなった)。
『ホドロフスキーのDUNE』として没になるまでの顛末を描くドキュメンタリー映画も製作されている。
リドリー・スコット監督も担ぎ出されたが、辞退してしまった話も聞いたものだ。
結局、原作が「大作」であることで、製作側と噛み合わない。
そしてデイヴィッド・リンチが1984年に何とか『デューン/砂の惑星』の形で映画を完成させ公開するが、監督自身が全くその出来を認めていなかった。本当は4時間を超えるものであったが、2時間以内に製作側にズタズタに削られてしまったのだ。その後、確かTVシリーズでドラマ化がされているはず。

結局、本格的な完成版DUNEとしては、本作が初めてのものであろう。
まあ、この映画化はドゥニ・ヴィルヌーヴ以外に考えられない。
「ブレードランナー2049」の圧倒的に魅惑的な絵を観ればこの監督が適任であることは分かる。
その映像の緻密さディテールの追求が、物語の歴史や文化的背景の質量をいや増しに増している。
勿論、メカや虫のリアリティも半端ではない。吸水スーツもしかり。
物質的想像力の賜物だ。

しかしこの魅惑的な砂粒は何だ。何という砂だ。風に煌めくメランジとは何なのか。
(このメランジが争いの発端ではあるが、これ自体がめくるめく謎である)。
巨大な何でも丸呑みしてしまう虫といい、この砂漠の残酷で幻想的な美しさに知らず引き込まれてしまっている。
そしてポールと母の受難と覚醒の物語がその砂漠にしっかりと織り込まれる。
戦士たちの威厳に充ちた闘いと死。
巨大な兵器と宇宙船団による圧倒的な攻撃。
大火に包まれ壊滅的打撃を被るアトレイデス陣営。
音楽がヴァンゲリスとは異なり独特の乾いた虚無感を増幅させるように唸る。

ひとつ気づいたことは(デイヴィッド・リンチのときは、気づかなかった)、AIがまたはその発展形も見られないこと。
(SFものによく登場するロボット、アンドロイドの相棒みたいなものはいない)。
その代わりか人が能力を開発し高める方向に進んだようである。メランジが重要な役目を果たしているようでもあった。
或る意味、人がより力強く身体性を取り戻している世界に思える。
異郷~DUNEの実在感をこれほど感じられる映像はない点においても、この作品は新たなSFの金字塔と呼ばれるはず。
スタッフ・キャスト言うことなし。
凄まじい悪夢が堪能できた。
とても心地よい。
大好きな「アラビアのロレンス」にも重なる絵を感じた。
(そう、その実在感において)。

そして、闘いにとってもっとも障害となるのは「恐れ」である。
それを克服した者が勝つ。
パート2を待つ。
Wowowにて

155分が30分くらいの短編映画より短く感じた。
やはり違う。
わたしもメランジを吸い込んだのかも。
そんな体験だ。
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