空飛ぶ生首
TORMENTED
1960
アメリカ
バート・I・ゴードン 監督・原案・製作
ジョージ・ワーシング・イエーツ脚本
リチャード・カールソン、、、トム・スチュアート(ジャズピアニスト)
スーザン・ゴードン、、、サンディ・ハバード(メグの9歳の妹)
リュージェン・サンダース、、、メグ・ハバード(金持ちのトムの婚約者)
ジュリー・レディング、、、ヴァイ(歌手~お化け)
ジョー・ターケル、、、ニック(脅迫者の船員)
リリアン・アダムス、、、エリス夫人(目が不自由)
ハリー・フリアー、、、フランク・ハバード(メグの父)
この監督の独特な興味深い作品「マッドボンバー」は既に観ている。
こちらは、幽霊ものである。
主人公のトムがこれでもかという具合に苦しめられる。
この映画、ピアニストであるトムの内省~独白で進むところが多い。
舞台は、或る島。
夜の灯台で、ヴァイという付き纏う二流歌手との別れ話の最中、彼女は不慮の事故で海に落ちてしまう。
翌朝、ヴァイの死骸を海藻とも間違えるなど、パニック時の心理描写も良い。
拾った彼女の時計を海に投げたら海鳥が鳴いて渡って行くなど演出も分かり易い。
しかし海辺を歩くメグとトムの2人の後を足跡だけが追ってゆくというのは、ちょっと安易。
ひょいと現れる手にしてもそう。コメディ漫画みたい。
だが足跡が多いぞというトムの指摘を直ぐに打ち寄せた波が綺麗に消し去るところなど細やかである。
そう、向こうの幽霊にはしっかり足があるのだ。
香水の匂いも必ずするので、来た時分かり易い。
まあ、よく出て来るおしゃまなメグの妹。
しかし幽霊の事ばかり気になるトムに邪険にされる。
セリフも多いし姉の婚約者であるメグより出番が多く目立っているくらい。
だがこれと謂った魅力は感じないところが何とも、、、。
微妙な子役なのだ。
幽霊の方も婚約者のウエディングドレスに海藻を巻き付けて嫌がらせである。
その前にトムから彼女に渡す結婚指輪も奪っている。こちらの方が質が悪いか。
心霊写真(トムの幻視か)にも写って来るし、余裕の嫌がらせだ。サンディにも自分の腕アクセサリーを付けさせたりして。
エリス夫人が、ヴァイがトムにしつこく嫌がらせを続けていることを知り、わざわざ灯台まで犬と共に忠告しに行く。
(トムがよく灯台に行くことは皆に知れている。これでは愛人に逢いに来てるみたいではないか)。
犬は怖がって灯台に入らないが彼女は独りで上って行き、堂々と幽霊と対峙する。
ここは、夫人が灯台から落とされないかとてもハラハラさせられるところ。
演出が上手い為、ダレずに魅せる。VFXにはいちいち注文は付けない。
それにしてもトムはビクビクし過ぎでどんどん深みに嵌ってゆくばかり、、、。
幻視や幻聴にも苦しむ(ヴァイが声を取り戻す)。良心の呵責か。ついに首だけしっかり出て来て言いたい放題。
しかし宙を飛ぶことは無かったが、、、棚の上に乗っかってペラペラ話す(こういう映画は他にも見ている)。
あれは事故だし、霊能者でも雇って悪霊退散とかしてもらえばよいものを。
(むこうにそういう人いたかどうか)。
終盤は、ヴァイに金を貸し島まで送った船頭のニックが出て来ていよいよトムはパニックである。
ヴァイの言いなりにニックを手に掛け、その場をサンディに見られ、、、信奉者を失う。
結局、ヴァイがもう一つの自我になってしまっている。袖にした女に乗っ取られたも同じ。
こうなるともう身の破滅。と謂うより共依存的。
式は予定通り挙げるが、突然教会に入って来て花を全て枯らす。そして神父の聖書を死者の埋葬のページに。
「ヴァイ、君の勝ちだ」と敗北を認める。もう最初からこの流れは決まっていた。自分に潜んでいた殺意が罪悪感を高めるばかりであった。それが敗因である。
最後は浜辺に、ヴァイと仲良く死体として引き上げられる。
彼女の指には結婚指輪が、、、。
しっかりまとめられた作品。
ジョー・ターケルは「ブレードランナー」では、タイレル社の社長を演じていた。
(この映画では随分若いが)。
歳を取ってから凄みを増すタイプ。
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