忘れるということ いや、なくすということ~喪失とは

わたしはたびたび記憶が飛ぶ。
それで大事なものを置き忘れたり、失くしたりする。
忘れた、失くした、と気づいたときの無念さ。文字通りの喪失感。
これから、もっと大きな忘れ物をしはしないかと心配にもなる。
ある種の不安と恐怖。
病気か?しかし病院は嫌いだがすでに、
頭のMRIは撮っている。何の問題も無かった。
だが、生活や仕事に支障をたびたびきたす。
個人情報だけは持ち歩かないようにしている。
自分の物もヒトの物も。
これは、SFの子供モノTV番組でも見られる、時間を止めてその間にトンデモナイことを仕掛けておいて、時間を流す。
止められていた間の認識はないため、突然の敵の攻撃に手も足も出ずにやられてしまう、という主人公の訳の分らぬ無念さに似ている。
「おのれーっ」と敵の怪人でもいるのなら言ってやりたいものだが、怪人が見当たらないと言うのであればこの行き場のない怒りは自分の胸の内に鎮火させるしかない。
雨の日に途中でカフェに行き、電車で帰った駅前の雨の景色に、はじめて店に傘を置き忘れたことを思い出した時の虚無感、奈落の底に突き落とされる無念。
忘れ物をしないヒトにこの気持ちは分かるまい!
直ぐに取りに行ってもない時はない。
いかにもBluetoothでもしてます、といった風を装い、電車の車掌さんのような点検をいちいちやってみようかとか本気で考える今日この頃。
以前、同僚から美味しいラーメン屋さんを勧められ、休日に雨の中、電車でわざわざ食べに行ったときのこと。
店は混んでいたが待つことはなく座ることができ、確かにおいしい店ではあった。
ただ、量が多めでそれに手こずっていた。わたしは余程のことがないと残すことが出来ない。
私が入ってから男性客が3組出てゆき、そろそろわたしも食べ終わる頃、女子校生3人組が店を出てゆこうとする。
それにわたしは何とも言えぬ胸騒ぎを覚えた。
何というか、先に書いた怪人の影を感じたのである。
ラーメンをラストスパートで食べ終わり、水も飲まずに会計を済まして外の傘立てを確認して、思わず「やられたー!」と無念にも予感が当たっていたことを知る。
わたしの傘と同じ模様の一回り小さい、ひどく傷んだ傘が置いてあり、まだ新しく綺麗なわたしの傘は、なかった。
わたしは、直ぐに店主に訴えると、主人はずいぶん前の置き忘れだけど、と親切に傘を貸してくれたが、その頃にはほとんど雨は上がっており、今更傘を借りたところで意味もないので、もし間違って傘を持っていったヒトが届けに来たら受け取っておいて欲しい、とだけ言って店を出た。お気に入りの傘で、女性がさしても抵抗のないものであった。
わたしも余程その傘に未練があったのか、翌週その店にまた食べにゆき、傘の件を確認してみたが、やはり届けはなかった。あのぼろ傘はずっと残っていただろうが、それを取りざたする気はなかった。傘は広げずに家に持って帰ってしまったろう。2日程前の雨にその傘を開いてみると、何故か一回り大きく新しくなっているではありませんか!わたしの日頃の行いが良いせいだわ♡
と、思ったかどうか知らないが、良くなっていたら普通届けに行ったりはすまい。
何を言いたいでもないが、どういうかたちであっても、モノが忽然と姿を消すことは、腑に落ちないことであり、わたしの時間を狂わせ、身体性に支障をきたす。
雨の日にはもっていた傘。それが微妙に違えば、何かが狂ってくる。良い方にシフトすればご機嫌にもなろうが、そうならないことのほうが多い。付き合いが長い、苦労して作ったものはその強度もさらに高く、比重が重い。
だが、親密さにおいてそれとは、比べ物にならない大きな身近なものが突然いなくなったらどうだろう?想像でなにかが掴めるものではない。だがその場合、著しく身体性が損なわれ、時間性が狂ってくるはずだ。
離れて戻ることの出来ないでいる双方にとって。
子供がいなくなるなど、その究極で、まさに想像を絶する。
あってはならないこと、としか言いようがない。
必ず見つかるように再開できることを祈るばかりだ。
森永 正男様SNSより (現状です 拡散宜しくお願いします)

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