電気海月のインシデント

2019
萱野孝幸 監督・脚本
境啓汰、、、冬吾
愛佳、、、ライチ
久松悠気、、、白鬼
町田悠宇、、、菅嶋匠
福岡市に拠点をおく監督の作品だそうで舞台は福岡なのだが。
ほぼ福岡臭はない。そもそも、、、
ネット上~サイバー空間が現実を侵食する話なので、特に福岡は関係ないか。
ハッカー同士の白熱戦はとても興奮したし、演出、演技も申し分ないものであった。
音響もとてもマッチしていたし。
特に主演4人は静かな熱演である。

大変スリリングで面白い作品であった。
続編が観たい(もっとこの世界に浸りたいので)。
結局、ライチと冬吾はどうなったのか。
そこだけが、モヤモヤする。
噺の流れからすれば、二人とも亡くなってしまったのかしら、、、そう匂わせているし、、、。
主役のふたりがいなければ、続編も何もないか、、、。

闇の指導者(帝王)の組織+ブラックハッカー白鬼とライチ率いるホワイトハッカー軍団+警察との間の暴力対決になってしまったのは、ちょっと残念というか、、、。
わたしとしては、サイバー空間上の対決のみで終結して欲しかった。
現実空間でやり合うとなれば、拳銃を持ってる闇のヤクザがどうしたって強い。
銃で脅されればどうにもならないし、撃たれればそれまでよ、である。
やはり最後は肉弾戦なのか。そういえばよく食べているシーンが挟まれていた。
ともかく、冬吾が証拠として提示できる白鬼のマザーコンピュータからプログラムデータをコピーして勝利するのだが、、。

こういう状況はいつあってもおかしくはない。
フィッシングやマルウェアなど日常茶飯事だし。
巧妙なのも幾つも見て来た(そのうち記憶に残る傑作を記事にあげてみたい)。
ここでは、マルウェアやセキュリティソフトからウイルスに感染させ、その端末情報をマルマル見えるようにしてしまうピンクタブレットが闇に出回る。それを30万で買った人は、感染している端末から情報を引き出し、好き勝手に利用していた。
詐欺業者や名簿業者にそのシステムを売らないところが、このハッカーの特性か。
そのピンクタブレットを買った人間がどう使うか、そこに興味を持っているところが面白い。
人間の意識を探るという意味で。彼自身際どいシステムを作ることに喜びを感じるようだが、、、
邪悪な男(管嶋)とその上位組織に操られる結果に彼も戸惑うこととなる。
こういうパタンは充分起こりうるものだ。これからは更に人間の意識が問われることになる。

ライチは理想の女性上司に思える。
クールで知的で決断力と行動力が凄い、大変素敵な女性ではないか。
彼女にスカウトされた相棒の冬吾は、コンピュータスキルと知識は凄いが家の借り方を知らずネットカフェに住んでいるという偏った人で、なかなかこちらも魅力的。
主演のふたりはとても気持ちのよい距離感をもったコンビであった。
そしてクライマックスの敵のアジトでの攻防戦では、冬吾が凄い意地を見せる。
正義とか何とかいうレベルではなく、自分の作業を完結したいプログラマーの意志であろう。
これで勝敗を決めた。

ともかく、このレベルの邦画が出て来ると、わたしの最近の邦画に対する偏見もなくなって来ると思う。
ただし、余りに怪しい闇の巨大組織とか陰謀とかが中心に絡むとどうしてもチャチな感じが否めない。
「今の日本に一石を投じる」などと、、、。その組織の下っ端にせよ、あんなふうに簡単に人殺しをしてしまっては、、、余りに劇画タッチであり、淡々と演じる主演のふたりとどうも嚙み合わないところは感じる。
次作があれば、これが絡まぬスリリングなサイバーバトルだったらいいなあと思う。
サイバーバトルは幾らでも起こる。
AmazonPrimeにて
