何故か自転車を急に買い換える

昨日のことだが、既視感にも似た経験を味わう事となった。
自転車に乗り、医者の予約取りをしにいく途中であった。
家に帰り、そのまま着替えもせず急いで出掛けた。娘の風邪の診察であるが、その病院は何故か予約制がない。私の帰宅がすでに、病院の夕方の診療始めに食い込んでいた。早めに行って診察券を出しておく必要がある。子供は待てる時間に限りがある。そこの待合室はいつも阿鼻叫喚なのだ。
もう一年乗ったが全く愛着の湧かない自転車をそこそこ飛ばし、郵便局前に差し掛かったとき、わたしの子供の頃の悪夢は突然、蘇った。
すぐ全方右側を走っていた初老の男が何の確認・前触れもなく、いきなり、左に直角に左折したのだ。わたしはこれで子供時代三回かなりの怪我をした。今でもその連中については殺意を覚える。(いづれも50~60の男)
それ以来、随分なかったことだが、何十年振りに、全く同じ目に遭ったのだ。
まず至近距離での左折は回避不可能である。もしその気配を漂わせていたら(速度を緩める。後ろを窺うなど)、こちらは前持って右側に車輌を移している。しかしそれが全くなかった。
急ブレーキを掛けつつ、左にハンドルを切り、郵便局の何故か激しいトゲトゲのあるコンクリの塀に体と車体を押し付けてどうにか倒れずに停車した。ちなみに奴はこちらにもたれ、何の衝撃も食らってない。
わたしは左手小指、左膝打撲と創傷、及びスラックスの膝部分が裂け、腕時計のガラスに一本傷がさっと、入っていた。
わたしはすかさずその男を睨みつけた。
咄嗟に、立ち去れないように道を遮って自転車を横向きに止めた。
すると思いも掛けない、と言うか思った通りの言葉がその者から発せられのだ。
「大丈夫ですか?」黙って睨んでいると、「平気ですか?」と続ける。
これだけは言ってはならない、まさにその言葉がぬけぬけと放たれた。
ニヤニヤしている。
何なんだ?これは?
「大丈夫なわけないだろ!」
「急な進路変更は大変危険だ。」
これだけは声を大にして言った。
普通に声で。
「最低限の注意義務を怠ってる。」
ニヤニヤして、思考停している。
「どうする?」とスラックスを見せつつ言うと、「あーズボン破れてますね。」
「やぶれてると言うことは、どう言うことなの?」
ニヤニヤ。
「医者にこれから行くから。」
「医者に行くんですか?」
ニヤニヤ が貼り付いたままでいる。
「もういい。行かなければならない。」
実際こんな所で時間を潰していられない。
第一顔を見たくない。
膝と小指がかなり痛い。
走りながら思ったが、まさか「近頃の若いのは、、、」なんて御託をならべて日頃酒飲んでるわけじゃないだろうな?お前にそんな資格は一切ない。
65前後に見える。
その年までどんな風に生きて来たのか?
一言ちゃんと謝れば、それで済むことなのに、それが言えず、死んでも言うべきではない、「大丈夫ですか」、を言いニヤニヤ笑って思考停止して突っ立っているだけ。
こちらは、スーツ代と治療費の請求をしてもよい。名前、住所、電話番号を聞いておいて。しかしそんな暇が第一ない。暇があれば着替えくらいはしていた。それに関わり自体持ちたくはない。
そもそも自分から何もするつもりもない。あの物体は。
どうするつもりも何もない。
何もない。
畜生以下の存在だ。
情けない。
この時、兼ねてからのわたしの自転車に対する踏ん切りも付けられた。
医者の後にそのまま自転車屋に行き、その自転車を処分し、ずっとマシな自転車に買い換えた。
実際安物だったため、ブレーキが心もとない。よい機会になった。
今回のデジャヴは自転車買い替えの契機であったか?
それにしても、自転車は惜しくないが、スーツは痛い。結構気に入っていた上に、自転車より遙かに高額だった。
が、スペアには困らないし、どうでもよい。
実質上のよいお買い物の日となった。
自分から何らかの効力ある言葉がああ言う場合でも出ない、と言うのはどう言うことか?どういう場面で他者に対しまともな言葉が発せられるのか?おまえは後何年生きるのか?現時点でこんな体たらくで「大丈夫なのか?」これで日頃偉そうな事を言ってるのならもう、どうしてくれよう!と思うが、もうどうでもよい。
わたしは、その老人が廃屋のなかに、こちこちに固まり白んでゆく幻想を見た。
とりあえず愛着の湧きそうな、良い自転車が手に入った。よかった(笑

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