海底から来た女

1959
蔵原惟繕 監督
石原慎太郎 原作
石原慎太郎、蔵原弓弧 脚本
筑波久子、、、少女(シャチの化身)
川地民夫、、、敏夫(夏のバケーションのお坊ちゃま)
内田良平、、、堤(作家)
武藤章生、、、ガンちゃん(兄弟の友人)
草薙幸二郎、、、勝造
本間文子、、、婆や
水谷貞雄、、、克彦(敏夫の兄)
浜村純、、、藤作
BGMというか、効果音がこの時期よく使われていた”ひゅ~っ”という音で思わず笑ってしまった。
使い回されているのか(デフォルトフォーマットとして)、特定の効果音の人がそれを多用していたのか。
怪奇ものによく使われるが、これはSFにカテゴライズされていた映画である。
とはいえ全くサイエンス要素はなく、ファンタジー映画として観たい。
(いや、太陽族の青春映画なのか?)

石原慎太郎の原作・脚本というので、三島由紀夫が主演で出た「空っ風野郎」みたいに注目してしまった。
チャーミングでセクシーな女性が唐突に海から現れ、漁港の町に夏のバケーション?で来ていた坊ちゃまと恋仲になる物語。
(この女優は初めて見たが、奇麗なだけでなくイタリア女優みたいな野性味もあり存在感は凄い)。
しかし漁師の長が言うには、その魅惑的な娘は、昔漁港を荒らしまくり何とか仕留めたシャチの相方であると、、、。
ちょうど、二人がボートで出逢ったころ、この漁港で漁師が遭難した。
俄かに漁港に不穏な空気が充満する。
しかしいきなり荒唐無稽な話をされて戸惑うお坊ちゃま。

彼はその娘と度々ボートや部屋で密会し、お互いに惹かれあっていたのだ。
ただの迷信だ、あんないい娘が化け物の化身だなんて、と突っぱねるお坊ちゃまだが。
百歩譲って例えシャチだとしてもこの変身技術は大したものであり、皆で寄ってたかって殺すのは忍びないとわたしも思う。
彼女が漁師たちに復讐に現れたのだと、彼らは口をそろえて訴え、このままだと漁が出来ずとんだことになる、という彼らの言分もわかる。すでに犠牲者も出ていることだし。

しかし幻想的な出逢いといい、話術もお坊ちゃまを自分のペースにすぐに乗せ翻弄するあたり、その容姿ともどもただモノではない。完全に上手である。大したシャチだ。シャチであるためか人の姿であっても水中での泳ぎが素晴らしい。特撮ではなくホントに泳いでいる。
ボートを大事にするところは、やはり石原慎太郎だ。太陽族だ。
しかしこういうロマンティックな噺も作るのね。
堤という作家が面白い立ち位置である。
慎太郎とは随分タイプの違うナヨっとした作家であるが、敏夫に彼女を信じろ、君は選ばれた人間なんだ。君が観た彼女が正しい、と彼を励ますところは、共感した。わたしもそういう自分の現実を丸ごと認めてくれる励ましは一番嬉しいものだ。

部屋で逢う時など、魚臭くはないのだろうか、心配してしまったが。
一緒に魚を捕りに行こうと誘うのだから、お坊ちゃまを襲う気は最初からなく、やはりお互いに惹かれあっていたことは分かる。
もし漁師たちに殺されず、二人で逃げ延びていたら、どうなっていたのか、、、
結構、幸せに暮らしましたとさ、となりそう。
とてもいい感じのファンタジーであった。
最後は悲しい現実であったが、、、。

拾い物であった。観て損はない映画。
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