恐竜が教えてくれたこと

My Extraordinary Summer with Tess
2020年
オランダ、ドイツ
ステフェン・ワウテルロウト 監督
ラウラ・ファンダイク 脚本
アンナ・ウォルツ 原作
フランシスカ・ヘンケ 音楽
主題歌『恐竜が教えてくれたこと』(歌:ソンニ・ファンウッテレン&ヨセフィーン・アレンセン)
ソンニ・ファンウッテレン、、、サム(11歳の少年)
ヨセフィーン・アレンセン、、、テス(島の12歳の少女)
ハンス・ダーヘレット、、、ヒレ(海辺に住む孤独な老人)
ユリアン・ラス、、、ヨーレ(サムの兄)
ティーボ・ヘリッツマ、、、サムの父
スーザン・ボーハールト、、、サムの母
ヨハネス・キーナスト、、、ヒューホ(テスの実の父)
ジェニファー・ホフマン、、、テスの母
リッシ・ファンフレウテン、、、グリル屋の娘
テレンス・シュルールス、、、エリーセ(ヒューホの彼女)
オランダ北部のテルスヘリング島が舞台。
サム一家は、7日間のバケーションを愉しむ為に島に来たのだが、彼は皆が死に独り残された時のことを考え、独りで過ごす訓練を自主的に始める。家族との思い出を作りに来た場所なのだが。
しかも、島で初日に出逢った不思議な少女に夢中になり、彼女との時間を優先する(これは分かるが)。
それでお父さんをやきもきさせる。これも分かる(笑。
綺麗な海とビーチ、そこでのバーベキューという定番。それで家族の絆を深めようという父。
島は長閑で休むには丁度良い。日本にはこうした習慣がないが、長期休暇は真似しても良いのでは。
音楽が優し気にフィットしていてゆったりと流れる。

その少女テスは、サムを誘い一方的に何かを手伝わせたかと思うと、彼を独り置き去りにして消えたりする。
とても自分勝手な事をするが、サムは余計に彼女が気になってしまう。
(気を引くために意識的にやるのなら、かなりの悪女だが)。
テスには秘密があった。

テスは、父は死んだと母に聞かされていたが、母がしまっていたハガキを元に父に関する情報をフェイスブックで調べ、母の管理するコテージに籤で当たったと偽り彼らを招待していた。(だから出逢いの挙動が不審なのだ)。
自分は12年前、母とヒューホが恋人同士で旅行に行っていた時の子だと彼女は確信していた。
父の不在にずっと囚われて生きて来た娘であった。
片やサムは自分が家族の中で一番年下だから、最後に一人ぼっちになるというイメージに囚われ、一人で生きる訓練をしている。
自分が結婚して新しい家族~子供や孫が出来ることとか考えないのか、、、。
ともかく、孤独と生死について考え始めたふたりの良いタイミングの出逢いであると謂えるか。

サム一家にせよヒューホのカップルにせよ、休暇で島に来ている。
帰る日はどんどん近づく。焦りと困惑。
何にしても、あなたわたしのパパでしょ、と全くその意識のない籤か何かに当たって舞い上がり恋人と島にバカンスに訪れた男性に、本人から切り出すのは難しい、というかナイーブな事柄過ぎる。
その話をサムの協力でする場を何度か設け、最後のチャンスに思い切って言おうとしたところで、近くの席で赤ん坊が泣きわめきこちらの噺も途切れる。
その時ヒューホは、子供がいなくて良かった、と思わず洩らしてしまう。
それを聞いた途端、テスは席を立ち、走り去ってゆく。
後を追うサム。残されたヒューホたちには何が起きたのか分からない。

そして路地で泣いているテスを見つけたサムは、自分が代わりに聞いてみようかと提案する。
だが、そんなことしたら殺すと強くそのおせっかいを遮られる。
ここからがこの物語の急展開~ジャンプとなるところ。
サムが最後の恐竜は淋しくなかったかとか思いながら海の浅瀬に入って行ったら、何とあるところで足が抜けなくなった。
干潮から満潮に移る時にこのように嵌ると死を覚悟することになるか。(しかし足が抜けなくなる水底というのは、わたしも知らなかった)。ここに海辺に独り暮らすアウトサイダーのヒレがその様子に気づき、彼を救出してくれる。
まさに九死に一生を得たといったところ。
この見た目の怖い老人、サムの質問にも自分の想い出噺も丁寧にしてくれる。
そして死んだ妻の噺をして、今のうちに想い出をたくさん作っておくんだ、手遅れになる前に、とサムに諭す。
これが胸にストンと落ちた彼は、そうだテスには父との想い出がないんだ、と思い当たる。
そして自分も独りの訓練ではなく、皆との想い出を沢山作ろうと戻って行く。
荷物をまとめ帰って行くヒューホとエリーセの車を先回りして止めたサムは、テスの秘密の身の上を彼らに語って聞かせた。
ここでしらばっくれないのがヒューホである。更にエリーセもテスのところに行きましょう、と。二人が人格者で良かった。
と謂うより、この物語に出て来る人は、皆良い人ばかり。
(実は、テスの思い違いの場合もわたしは考えていたのだが)。

サムは休暇中ほとんど家族をほったらかしで、過ごしており、流石に最後には、お父さんも怒るが、ぼくにはお父さんがいてくれて良かった~と胸に飛び込んでくれ、お父さんも何だか分からぬが良かった良かったと、、、機嫌を直す。
家族のバケーションは結果的にちゃんと役目を果たしたことになる。
サムのもとにテスがやって来て、ヒューホがパパになってくれるの、と満面の笑み。
(殺しに来たのではなかった)。
最後は、テスが皆を誘ってパーティーの大団円。何と孤独の老賢者ヒレもサムに誘われ快く参加している。
サムの掘った砂浜の穴に躓き骨折した兄も、グリル屋の娘と恋仲になり、サムもテスととても良い雰囲気に、、、。
この辺は余りに出来過ぎだが、、、一番淋しい思いをしたのは、エリーセだと思うが、その部分は敢えて描かれていない。

作曲家 フランシスカ・ヘンケ
演出が音楽も含め効果的であった。
もう一回観てみたい気にさせる映画である。
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