欲望の怪物

2019年
松本卓也 監督・脚本・編集
加藤万里奈(口笛奏者)、、、臼井(納豆工場授業員)
根矢涼香、、、早乙女(納豆工場授業員)
森恵美、、、倉本(納豆工場授業員)
粘土職人よっちゃん、、、本人(恐らく自閉症スペクトラム)
ヒロインの加藤万里奈女史は、口笛の国際大会で優勝したことのある女子大生で、何とデヴィ夫人の別宅とかで同居中とか。
しかもペットのモモンガまで同居させてもらってるとのこと。
余程気に入られているようだ。きっと贅沢三昧の女子大生に違いない。

そんな実生活とは異なり、ここでは納豆工場で働く地味で寡黙な女性を演じる。
その上、周りが欲の塊みたいな人々の中でひとり欲のない役柄である。
黙々と働き、静かに弁当を食べ、ほとんど受け身で聞き役なので、然程演技経験がなくとも、それらしく見える役か。
かなり淡白な人に見えるが、いつも職場で形成したトリオで一緒に行動している。
(いつも一緒に行動を共にすることは、それなりに心地よい共同体なのであろう)。
そんな日々に臼井はふとしたことで奇妙な人形のアクセサリーを目にする。
その類のちょっと不気味な人形を街ゆく人々や自分の妹の持ち物のなかにも発見するようになる。
街に粘土職人よっちゃんの作った何でも持ち主の欲を実現するという人形が出回り始めたのだ。
(寓話風のメルヘンなのか、と思ったがまあその線で良いと思う)。
友達である早乙女と倉本は猛烈にそれを欲しがる。
どうしても実現したいことがあるのだ。
臼井はその人形を手に入れる為に手を尽くす2人に付き合う。

実は臼井には中学時代に好きな男子がおり、同窓会に期待して臨んだがすでに彼は妻子持ちであった。
それでもう特に欲と謂えるものも無く、深夜職場で彼女だけの納豆の儀式をしていた。
(普段、納豆がドバっと出て来る口に手を翳していると一粒、ふた粒零れ落ちて来るのだった)。
自分のなかにある欲を確かめるかのような儀式だ。
だが、特に欲と呼べるようなものは、見出せなかった。
その人形を持ち主から大量に買い付け、転売することで儲けている3人組の男もいたが、それも欲の実現か。
懸命にその人形を欲しがる二人はなかなか手に入れられない。
臼井はその争奪戦のおこぼれが自分の前に転がって来て何と言うことも無くひとつゲットしてしまう。
二人もその後、訳の分からぬ偉そうな豪邸に住む女子小学生から謂われた通りに芸をして人形を恵んでもらうことに。
(臼井もそこにいて口笛を吹けと命令されるが音が出なかった。人形も必要なかったので二人に譲る形で丁度良かった)。

これで二人はそれぞれ願いが叶い、臼井は職を失い路頭に迷うかつて好きだった男性に持っていた人形を渡そうとする。
だが彼はそれを貰ったら自分がダメになると言い、彼女に返す。
その人形のお陰かどうか、独り夜道を帰る彼女は、口笛が吹けるようになっていた。
(この為に彼女をヒロインにしたのか?)
粘土職人よっちゃんは劇中でもいつものように?粘土をこねていた。

何と言うか独特の空気感の漂う物語であった。
このヒロインの人で、もう一本全然違う雰囲気の映画を観てみたい。
これは水戸で撮影したようである。
(ヒロインの出身地らしい)。
AmazonPrimeにて
どうやら障害者自立支援の映画製作プロジェクトなのだそうだ。
単によっちゃんを起用したにとどまる作品に思えるが。
- 関連記事