庵野秀明+松本人志 対談

2021
品川ヒロシ 監督
庵野秀明
松本人志
対談である。
しかもAmazonPrimeVideo上で。こうしたことを行う媒体の形体の変化も感じる。
AmazonPrimeに番組を持っている松本氏とほとんどすべての作品がAmazonPrimeで観られる庵野氏である。
この番組で対談というのは共に映画に関わっている点からも、あり得るものだとは思う。
専門のフィールドの異なるカリスマ同士の対談で、、、面白い企画だと感じるが、、、
初対面でいきなり始めたようだ。
事前の打ち合わせなく。
そういった形式で始める対談もありだと思うが、今回の場合、事前に打ち合わせはあった方が深まったのではないか。
テーマは予めあった方が核心に向けてグイグイ進める。
今回は、何もない場所でいきなりばったり逢い、お互いに遠慮し合って褒め合っていて噺が進まない。
具体的にこういう点で驚愕したとかいう噺ならまだ分かるが、あなたは日本の宝だみたいに言われてニコニコし合っていても、、、。
だが、ポロポロと面白い噺は断片として幾つか拾えた。
庵野氏が子供の頃一番影響を受けたテレビ番組に「鉄人28号」をあげたのには嬉しくなった。
物凄く入り込んで見入っていた様子が窺えるがそれはとっても良く分かるところ。
それからふたりとも、大変熱心に仮面ライダーとウルトラマンを観ていたことに感心した(笑。
(因みにウルトラマンシリーズの特撮監督はわたしの叔父である)。
ふたりとも実に細かいところまで観ている。ウルトラマンのちょっとした所作まで捉えて自分でも真似していたとか、、、。
それからボコボコにやられてしまう回がたまらなく好きだとか(爆。
そこに何とも言えないエロティシズムを感じるという点で二人とも感性が合うというところに大満足していた。
「あいますね~そうですね~」、「似てますね~」それはそれでどっちでもよいけど。

わたしにとって、ちょっと意外に思ったのが、庵野氏は監督というよりもずっとプロデューサー寄りの人だなと思えたところ。
映画作りにおいて、「自分が描きたいもの」、「時代の要請として描くべきもの」、「ファン(コアなファン)の要求の取り入れ」、「出資者からの意向で描くもの」とあるとし、優先順位一番は、出資者の考えであると。ただの監督の立場であれば、何が何でも自分の描きたい世界を描くと言うだろう。庵野氏も宮崎駿を例に出して言っていたが。
「自分はプロデューサーも兼ねているから全体を考えなければならない。商業映画である以上、採算が取れなければならない。その為には広く他者の意見も取り込んで多くの人に届くものを作って行く。まずそこが肝心で、自分のやりたいことは、一番最後」と述べていた。確かに儲けが出なければ出資者が離れてしまい次回作も作れない。
ここを考えたうえで監督業を熟す感覚は、松本氏には余りなかったのでは。吉本においては権力もありご意見番的立場であるが、全体の為に裏に回ると謂うより、先頭に立ってやりたい放題やれる立場であろう(社員の一人であることからも)。
わたしはもっと庵野氏はクリエイターとして、自分の思想や感覚を強く押し出して作っていると思っていた。
最初の方の話題で、広く国外でも受け容れられている件に関して、自分から英語で書いて外国用には作らないことを主張していた。それは自分が日本語により思考して構築した世界が結果として好まれたもので、自分が世界に広めると謂うのではなく世界~外部が自分に寄ってくることだと、松本氏と意見を同じくしていた。
自らが真に描きたいものを作れば自ずと世界も近づいて来るという考えは、宮崎駿のそれにほぼ等しいと思われる。

まあともかく、お互いにプロデューサーを経験したことで、おとなになりましたね~と確認し合っていたが。
対談自体が、おとなの対談であった(笑。
特に出資者との関係は、庵野氏も監督の他にプロデューサーも兼ねるようになってもっとも大きなポイントであることが確認できた。
更に技術的な点で、松本氏が何度も勉強になったと強調していた「角度」である。
庵野氏は、ライティングなどより同じ素材の動きであっても「角度」の違うショットを沢山同時に撮っておいてそれを編集する事が肝心であると主張していた。これには松本氏も思うところがあったようでかなり食いついていた。
確かに様々な角度の絵を元にどのように編集するかで、大きく異なる世界が構築できることは分かる。
(これは色々なものことの制作に対して示唆的な方法論ともなろう)。
ぶつかるところや疑問点を突き付けるような場面はなかった。
それはそれでよいのだが、話題に詰まり、監督からこれについて、、、と小声で何度もテーマ振りがなされていたのには、ちょっと大物を呼んでおいて、文化祭のリハーサル状態みたいで、成り立っていない感がすごい。
途中から明らかに庵野氏はカメラの隣の監督と目を合わせている。
これはやはり事前にしっかりテーマの打ち合わせしておくべきであった。
勿体ないではないか。
最後に二人とも、また会いましょう面白かった、と言っており、もし次回があるのなら、今日の対談の監督を3人目として司会というか回し役として入れて行えば、もっと効率よく滞りなく話も深まると思う。
アニメと異なり、実写映画は制作に時間もそれほどかからないため、シン・仮面ライダー、シン・ウルトラマン以降それを受けた対談は噺もはずむと思うし、結構早いうちに実現してしまうのもよいはず。
今度のウルトラマン、カラータイマーが無いという!
うっそ~っと思った(爆。
どちらも観なければ。
AmazonPrimeにて
今日はサムネイルはやめてみた。
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