ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー

DEUX DE LA VAGUE
2010
フランス
エマニュエル・ローラン 監督
わたしは映画そのものに対して疎い為、このドキュメンタリーフィルムは、如何にも通の観るものだという感じがして、ちょっと躊躇した(笑。尺がそれ程長くないので観ることにしたが、余りに早口の喋りが多く、途中一回しっかり寝てしまった(残。
ぎっしりふたりの仲の良かった時期からトリュフォーの「アメリカの夜」で完全に決裂するまでの間の情報が詰め込まれたドキュメンタリーであった。
何よりふたりの素顔や肉声が聴けるだけで得した気分になる。わたしはトリュフォーについては疎い為、これを機に彼の作品も是非意識的に観てみたい。
このドキュメンタリーは、時期が限られており(トリュフォーの生きている間)、その後のゴダールのインタビューも欲しかったが、若い頃の活動に絞られているのが少し残念。ゴダールはまだ元気だ。その後の考えも(特に映画における政治への関り、その姿勢の変化等)聞きたいものだったが、、、。
ただ、色々と面白い、興味深いカット~シーンが短いが沢山紛れていてそれらお宝を何度か観直したいものである(笑。
(アニエス・ヴァルダの作品についてもちょっと出て来てニンマリしてしまった)。
噺の文脈に乗ったふたりの数々の作品の断片からそのビビットな魅力を再確認してしまう。
特にヒッチコックやフリッツ・ラングにゴダールがインタビューしているところがあり、大変興味深いところであった。
(あのゴダールが遠慮気味に話しているところが可笑しい)。

一瞬の花火であった「ヌーヴェルヴァーグ」が何故、そんなに短命であったのか、何となく実感した。
何よりもセールスの問題は大きかったみたいだ。ふたりは、少し先を行きすぎていたか。
確かにそれまでの映画とは一線を画するものであることは間違いない。
保守的な映画ファンは勿論多い。プロットから撮り方、偶然性~アドリブの取り込み等、、、その革新性について行けない人のインタビューも面白かった(笑。
ただし、共にふたりの処女作は話題を集めヒットもし、トリュフォーの作品は文化相のアンドレ・マルローにも強力に推されフランス代表作にもなる。
このムーブメントは短命であったにせよ、ゴダールとトリュフォーが共に協力しながら(トリュフォーが撮影しゴダールが編集する、などして)作り上げたスタイルは、しっかり継承されていると思う(邦画にもそれを真似したものが少なくない。失敗も多いが)。
「グッバイ・ゴダール!」をちょっと思い出しながら見た。
わたしは、思想的にはトリュフォーに共感する。
彼がマチスを引き合いに出して語るところなど、特に。
「マチスにとって戦争など取るに足らぬものだった。大切なのは何千枚の絵だった。」「芸術のための芸術ではなく、芸術とは美のためであり、他者のためであり、人を楽しませるものだ。」全くその通りだと思う。
ゴダールの政治メッセージに映画を利用するよりずっとしっくりくる。
そもそも映画を撮るという行為そのものが政治性を常に帯びるではないか。ロックだって同様である。別に内容に政治を盛り込むまでもない。
ただゴダール作品はそうは言っても面白い。政治メッセージを大きくはみ出して。

シネマテーク・フランセーズの館主アンリ・ラングロワがアンドレ・マルローに更迭され、ラングロワ復職の大きな抗議運動をふたりを中心に行ったということだが、ヌーヴェルヴァーグを最初に認めて推し出したのはマルローである。そのお陰でふたりが良いタイミングでデビュー出来たところは大きい。確かラングロワは経営に失敗して更迭されたのでは。政治・思想的な問題とは違うはずであるが。
このフィルムは、ふたりプラス、ジャン=ピエール・レオが第三の男という感じで終始絡んで来た。
彼にとってゴダールとトリュフォーは「ふたりの父」という存在であった。
彼は『大人は判ってくれない』でいきなり俳優(子役)・主演を射止め、それからずっとトリュフォー映画に出続けた。
わたしはそのジャン=ピエール・レオの晩年の「ライオンは今夜死ぬ」に出逢ったが、文字通り彼は「死」を演じていた。
随分、時は経ったものである。

何にしても、まだわたしは『大人は判ってくれない』を観ていない。
これはちょっと焦る。何とか早めに見ておきたい。
トリュフォーのものは「華氏451」くらいか、まともに観ているのは、、、シャルロット・ゲンズブール主演の「小さな泥棒」の原作も書いているが、、、。
わたしはゴダール以外、ほとんどヌーヴェルヴァーグに触れていないのかも。ヌーヴェルヴァーグ的な作家~監督の映画は結構見たが(ネオ・ヌーヴェルヴァーグとも評されるレオン・カラックスとかその血を引く同じ系譜の監督の作品には触れて来たが)。
まずは、近いうちにトリュフォーを、、、。
AmazonPrimeにて

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