レッドプラネット

Red Planet
2000年
アメリカ
アントニー・ホフマン 監督
チャック・ファーラー、ジョナサン・レムキン 脚本
チャック・ファーラー原作
ヴァル・キルマー、、、ロビー・ギャラガー(エンジニアで整備士)
キャリー=アン・モス、、、ケイト・ボーマン船長
トム・サイズモア、、、クイン・バーチナル(生物工学者)
テレンス・スタンプ、、、バド・シャンティラス(主任科学将校)
サイモン・ベイカー、、、チップ・ペテンギル(火星地球化の専門家。元予備要員)
ベンジャミン・ブラット、、、テッド・サンテン( 副操縦士)
AMEE、、、探査AIロボット
これはSFエンターテイメント映画として、しっかり楽しませてくれる。
「ミッション・トゥー・マース」みたいな駄作でなくて良かった(笑。
火星の雰囲気は出ており、なかなか面白かった。

火星に二酸化炭素の氷を頼みに藻を繁殖させ酸素を発生させテラフォーミングの足掛かりにしようと目論んだら、或るところで.酸素発生率が下がりその原因が地球上では掴めない、ということで有人探査船が火星に飛ばされた。
2050年という近未来ではないか。環境汚染と人口爆発である。ホーキング博士のお勧めでもあり積極的に他の惑星への移住~テラフォーミングの計画は進められていたようだ(他人事ではなくほとんど現在と地続きの世界である)。
困難を乗り越え取り敢えず彼らが火星に降り立った地球人最初の人となる。母船も火災発生でほぼ全壊かと思われたが独り残った船長が優秀なため救われる。SF映画優秀船長賞の投票をしたら彼女のタイトルはかたい。
火星ではハブがすでにロボットによって作られており、何とか乗組員は向かうが、そこも壊滅状態。藻も何処にも見られない。
火星特有の嵐が原因かと思うが、ハブの強度は充分耐える構造を持つものであった。藻にしてもおかしい。
更に宇宙服の酸素がなくなり苦し紛れにヘルメットを外すと何と、地球の高い標高程度の酸素があるのだ。何でもやってみるものだな(良い子はまねしないでね)。着陸時にそれくらい調べなさいよ、と謂いたい。
何故藻が無いのか。ハブはどうして破壊されているのか。何故か薄いが呼吸できる酸素はある。
それらの謎を解かなくてはならない(少なくともその問題は地球に持ち帰らなくてはならない)。だが、彼らの道案内に連れて来たAIロボットAMEEが故障により探査モードから戦闘モードに切り替わってしまい乗組員たちに襲い掛かって来る、、、。
そんな過酷な状況からどうやって任務を果たし帰還するか、というドキドキ満載の作品なのだ。

AMEEみたいな狂暴なポンコツはいただけないが。優秀なHAL 9000も実に厄介であった。何でAIをそういう設定にしたいのか、、、人間の未成熟、無力さに対する恐れと不安の反転であろうか。
太陽フレアの影響をしっかり描いているのも良い。地磁気の外に出ると純粋な宇宙になる。
ISSや月が舞台ではない。このような事故は想定しておかなければならない。
ついでに2つの月、フォボスやダイモスも見たかった。
火星環境の過酷さ特に気温の差も何気に描けていた。
AMEEが偵察用のドローンを飛ばしまくっていたのも良い。火星の薄い大気でも飛ばせるのだ(実証済みでありNASAも飛ばす計画である)。
更にマーズパスファインダーやマーズ・エクスプロレーション・ローバーも使用したエアバックで着地していた(笑。
人の乗った探査機でよくやったものだと感心する。そうとうな重量であったはずだが。少なくともマーズ・サイエンス・ラボラトリー~キュリオシティよりも重いはず。キュリオシティはその重量からコストを低く抑えられるエアバック着地を断念している。
案の定この衝撃で一番の人格者のシャンティラスが内臓を痛め亡くなってしまう。無謀過ぎた。


彼を除くと基本自己中な、いい加減な連中ばかりである。
この面々で探査チームというのもまず最初から何を考えてるのか、というものだが、、、
籤で引いたような人選だと、当然ペテンギルのような輩も入り込みメンバー自ら滅ぶ方向に向いてしまう。
ギャラガーが何とか頑張り、バーチナルがヒロイックな精神に目覚めたところで、船長とギャラガーの2人が助かることとなるが。
火星での過酷さはかなり来るものがあり、ギャラガーがこんなとこ嫌いだとか糞火星めとか言っているのには共感できた。
ここをテラフォーミングなんて、やるだけ無駄に思うが。途方もない時間が必要となるし。
初期に生まれ眠っている固有の生物種を目覚めさせてもどうかと思う。
あの藻を食べ酸素を生成していた連中こそ有用な側面はあっても見た目が狂暴なゴキブリである。わたしは嫌だ。
ハブを完全に食い荒らしたのもその連中である。共生まで持って行くにはハードル高そう。人喰いゴキブリだぞ。
当初は嫌みな生物工学者にみえたバーチナルだが、自分の身を犠牲にして研究サンプルをギャラガーに手渡し華々しく散って行ったのは、最後に大いに株を上げたものだが、こんな犠牲が続くことが懸念される。

AMEEとエンジニアであるギャラガーの知識と小細工の効いたスリリングでハードな闘いと、船長の絶望的な緊急時における神業的な危機回避術も合わせて見どころであろう。倒したAMEEからバッテリーを抜き取り(序盤でこのバッテリーを祖父が揶揄していた伏線を回収し)打ち捨てられた古いロシアの探査艇に装着して脱出というのも分かっていて充分ハラハラさせる。もう出来過ぎのコテコテシーンではあっても。
そういう部分は、面白かったので良しとしたいが、最後は、如何にもというヒロインとヒーローが助かり結ばれ仲良くご帰還なのだ。
かなり早い時分に、このパタンかもと踏んでいたのだが。
これがアメリカSF映画の限界かとも思った。このペア帰還。
(製作側からこうしてね、という圧力もあるのだろうか)。
観て損はない映画である。
AmazonPrimeにて

2000年の製作と言うことから見て、よく出来たSFだと思う。