ポラロイド

Polaroid
2017年
アメリカ
ラース・クレヴバーグ監督・原作
ブレア・バトラー脚本
キャスリン・プレスコット、、、バード(女子高生)
タイラー・ヤング、、、コナー(同じ高校の男子、彼氏)
サマンサ・ローガン、、、ケイシー(女子高生、親友)
ミッチ・ピレッジ、、、ペンブローク保安官
グレイス・ザブリスキー、、、老女(ポラロイド殺人鬼の妻)
ノルウェー出身の監督のデビュー作だそうで、主演女優もイギリス人であるためか、質感がアメリカ映画ぽくなかった。
邦画のホラーに近い感触なのだ。間があり(ポラロイドの現像時間自体もワクワクの間であるし)薄暗くてコンパクトにまとまっている。
情感も漂い気配で魅せる。マッチョな雰囲気はなく、あからさまなスプラッターがない。
クリーチャーもスタティックにはせず動きと雰囲気重視、狂暴で残酷ではあるが、脂ぎってはいない(笑。
ただ、でかい音でびっくりさせはする。これあまり感心しないが。
主人公のメカオタクの女子高生、SX-70Sという初期ポラロイドカメラを友達からプレゼントされ、喜んでいたのも束の間。
そのカメラで撮った被写体が次々に死んでゆくのだ。その友達も惨殺される。
どうやら被写体の背景に写り込んだ妙な人影が怪しいことに気づく。
この娘、写真にやたら詳しく、アンセル・アダムスやウォーカー・エヴァンスもこの型のポラロイドを使っていたそうな。
巨匠は、ワザと自分の熟練の技術を封印するような機材を使うことはある。
これだともう、シャッターチャンスとフレーミングだけの勝負だ。
その目で、後で彼らの写真集を見直してみたい(ネガと違ってどれくらいもつのだろうか)。

調べてゆくうちにどうやら写り込んだ人影が殺人に関与していることを彼らは掴む。
何とこの影、写真の中をユラユラと移動するのだ。
そして後から撮った写真にも移動し(写真から写真へと)前の写真からは消え去っている。
つまり前の写真でマークしていた人物は殺してしまったということ。用が無くなれば次の写真にいる人物をターゲットにする。
ありそうで、これまでなかったような。写真上とこの現実を行き来するクリーチャーなのだ。
日本のだと映った被写体が歪んでいるのだが、、、どちらかというとその方が分かり易い。
また気味が悪いし、その写真を焼くと映っている者も燃えてしまう。呪術的(笑。
であれば、破かれると真っ二つになってしまうのだ。
クシャクシャにされれば、3D側もグシャグシャになるというもの。
これが警官とクリーチャーで証明される。
なかなか見せ方が良かった。警官は実に気の毒。

主人公はトラウマを背負っている。幼い頃、自分の我儘で父が事故死したと。
その時の傷跡が首に残っていていつもマフラーを巻いている。この傷がそのままトラウマを存続させているとも言えよう。特に美容~ファッションに影響する部分なので猶更である。
まあ特に罪悪感を抱くほどのものではない子供ならではの父への要求に過ぎなかったものだが、車が追突してきたことに関しては運が悪かったとしか言えまい。
今回また自分が絡むオカルト殺人が起き、過剰に責任を感じてしまう。
やはり同じバイトの男子から貰ったポラロイドである。責任取れと言われても困る。
しかし殺人ポラロイドというのも実に迷惑としか言えない。

パパは新聞記者で自分も将来、後を継ごうと思っている。
「パパなら真実を追求する」と言って彼女は果敢に立ち向かう。
暗室生まれのお化けであるから、明るいところと熱の高いところには近づけないことに気づく。
確かにそうであった。スチームで近づけない。明るい時には出て来ない。
新聞記者の娘と言う感じで、資料を調べまくると、昔の猟奇殺人の記事に当たる。
丁度、ポラロイドに彫られたイニシャルの殺人鬼が彼女の学校で写真を教えており、その生徒4人が襲われ3人が惨殺されたと。
逃げおおせた一人の生徒が、今彼らに関わっている警官であった。
その警官も勿論、狙われる身であるが、、、。

ここに登場する殺人ポラロイドであるが、欧米流にいえば完全に悪魔であろう。
殺人犯の妻の老女が夫に負けず相当なサイコパスであったことも分かる。
つまりこのポラロイドを生んだのは、サイコ夫婦であったのだ。
結局、犯人の娘が事件後に自殺したということから、老女~妻の言ったことは大嘘であり、4人が娘を虐めて死なせ父が怒り復讐したというのではなく、その男の異常な虐待を受け続けていた娘を助けようとした同級生たちを殺し自分も警察に射殺されたがその時にポラロイドカメラを握ったまま死に、そこに念でも移ったのか?それにしても老女の物語にコロッと騙されるところは、まだまだ父に及ばず甘っちょろい。
ともかくミスリードを誘ったかに見えた直ぐ後に正される忙しい展開であった。

色々と対策を練ろうとするが、決まって感情的になり問題解決を待たずに責任のありかをしきりに問いただす者が出てくる。
これで噺が進まなくなる。
結局、主人公が捨て身の体当たりで、自分を撮ってクリーチャーを呼び出したところで、クリーチャー自身を素早く撮り、そのプリントをもみクシャにして火をつけ燃やす。その時に自分の指も写っていた為、指は失ってしまう。
だが辛くも勝利した。
線の細い主人公が必死に頑張るので、思わず応援してしまう。
これがなかなかそういう気になれないヒロインの場合も少なくないのだが(笑。

このプリントと現実界の対応システムを抽出できれば、大変な大金持ちに成れそう(笑。
そのクリーチャー自身による呪いであれば、恐らく写真そのものを破ろうが、それ~主体自体に対する効果は無いのでは。
しかしここでは、現像された写真に対する現実界への対応関係に例外はなかった。
ということは、クリーチャーをも内包するひとつのその法則世界がはっきりとあるということだ。
であればそのシステム、まずは軍事目的に使われるはず。
敵国の指導者を撮って(撮るのなんて容易いし)、それを破ればそれまでよ、となる。大変な効率である。
軍事費(予算)も大幅削減し他に金が回せる。
もっともそういうシステムだと相手に分かれば、顔出ししなくなるな。全て影武者。
ともかく、そこそこ面白いホラーであった。
AmazonPrimeにて
