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GOMA28

Author:GOMA28
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小さな情景展 序

sabu0023europeanstyleofHachimanyama2021.jpg

S君は結婚するまで、江ノ電の「鎌倉高校前」から白樺並木の高台にある実家に住んでいた。
興味深いのは、彼はそこで暮らしている間、一度も下に広がる海岸に降りたことがないということだ。
一度くらい海岸で海を眺めて過ごそうとか思わなかったのだろうか、、、。
遠方から朝5時に波乗りにサーフボードを抱えて人の集まるような海岸である。
(それを密かに見渡す小窓が彼の部屋にはあるのだが)。
無かったらしい。行ってみる気など。

確かにあからさまな海~海辺は描いていないのだ。
だが海が嫌いという訳ではない。
実際に海辺でスケッチしようなどという無粋な真似をしたくないのだ。なんというダンディズム!
、、、いやこれはわたしの冗談で言ったことであり、実際のところどういう理由であるかは、未だに彼には聞いていない。

彼の作品として、海を連想させる~海の楽しさを演出するかのような完全に人工的なテーマパークが幾つも生成されてきた。
そこは海や海辺から抽出した諸要素が(変容を経て)充填されていた。
あたかも下界に降りずに海の楽園を描くとこうなるのだ、、、というかのように。
以前、彼に言ったことがあるが「鎌倉高校前のレーモン・ルーセル」とでも、改めて呼んでみたくなる(笑。


彼の絵はどうしてもナイーブ派画家の範疇で観られてしまう余地はあろう。
確かに素朴さや懐かしさ~幼少年期の思い出は彼の絵にも多く見出されるところである。一見した印象には近いものを感じるはずだ。
しかし牧歌的で長閑な表象に映っても、尋常ではない平面性~歪曲した凝縮性に気づきときとして息苦しさも呼ぶ。
別にナイーブ派がどうのということではなく、何らかの一派として捉えてしまうことで微分的な差異を見落とすこととなり絵の魅力を味わい損ねる場合も多い。似て非なるものとはよく言う。

彼の描画の基本は点描であり、速乾性のリキテックス(アクリル絵の具)による隙間を潰し畳み掛けるような制作から始まった。その執拗な細密さと装飾性は自然の環界の感触、身体性からも程遠い。太陽光も特殊な照明器具を感じさせることが多かった。その時期の制作を自虐的なものだったと述懐していたことがある。その制作が彼の前期とも前史とも呼びたい20年間続く。
しかしゆったり時間を充分にとって新たなペースで制作したいという欲求と、主に緑(黄色の青への混色)の多様性の探求が容易に乾かない「油絵の具」の使用を要請した。
ここに展示された絵は1979「夏の午後」を除き油彩による作品である(但し、2012「夏休み」は明らかにリキテックス紀の内容であり、そのころの作品を油絵の具で再生したもののようだ)。

何より彼独特のデフォルメによるパターン化した形体と筆致。遠近法からの逸脱、そこから生じる空間の歪みと固有時の併存である、、、それは後半にゆくに従い多様化し広がりは見せてきているが彼以外の何ものでもない。
ある種喪失感はあるが、トラウマによる寂しさや物悲しさの痕跡の洗い流され構築された模型世界の様相を呈するのだ。
それは遠近法による整序を解かれた未知の光である郷愁~憧れに染めあげられた絵画とも謂うべきか、、、。
拡張された「郷愁」に彩られた絵と呼びたいものとなる。
その凍結した時間と物質的次元を持たない空間が、かなり俯瞰的で自在な構図と動きを生んでゆく。


実際、彼はこれらの絵をジオラマとして、粘土やベニヤ(ペンキで着色)やプラスチックのオーナメントや豆電球、モーターなどをもって細密に幾つも作っている。(子どもの玩具にもしていたそうだ)。
ほぼ何の躊躇もなく3Dにも置き換わってしまう世界。もしかしたら平面絵画はその設計図というか見取り図であったものか、、、。
単に素材は異なってもシームレスに続く創作行為に過ぎなかったのかも知れない。
それにしてもジオラマ制作も、集中と根気を要する作業であったはず。
愉しくて夢中になってやっているのではあろうが、やらずにもいられないのだ。きっとそういうものなのだ。

愉しい苦行かも知れない、、、。


兎も角、この行為は、現代美術の枠に対する批判~自己解体の知的作業でありかつ普遍性を目指した「藝術行為」の対極にあるものだ。そういった意味で、極私的~私小説的な絵画であり自己充足的な行為と謂える。
しかしその個人的で本当にあったか分からぬような秘密~記憶を垣間見るような一種の気恥ずかしさや恍惚さの方にわたしたちは共振する所が大きい。
その「郷愁」を感じる為、きっとまた暫くして彼のお宅に絵を観に行ってしまうはず。


ここには、S君の止むにやまれぬ「仕事」の最初期から最近までの作品が彼のチョイスにより並んでいる。
わたしとしては、何であの作品が無いのか、と思うモノも幾つかあるが、それはそのうちわたしのブログで紹介してみたい(笑。




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COMMENT

読みごたえあるねぇ。

S君の絵、言葉で綴ると面白さがさらに広がりますね。描きつづけて約40年、何が変わって何が変わらなかったんだろう。おぼろげな記憶ですが、彼はある時期からリキテックスを油彩に変えたと思います。アカデミズムへの接近というわけではないけど、色彩への探究とメチエを意識したのかもしれませんね。それと結婚して子供さんができてから山高帽の人物は形を変えていったようです(個人的には初期の山高帽のおじさん大好きだったのですが)。彼なりのフェティシズムが変容していったのかなと思います。
それと家のそばの海岸には確かに彼は行きませんでしたね。下世話に言えばリア充?な世界が苦手なんですよね(笑)。でも夜中の江ノ島巡りは行ったなぁ。
続編も期待してます。

余談。まだ幼い娘さんが「お父さん、裸の女の人好きだから~」と大声で話ながら屋根裏部屋(アトリエ)への梯子を上がっていたのは笑えました。

ありがとうございます。

ありがとうございます。私の気まぐれな制作に言葉をつける。私にとってはは全く苦手で嫌いな作業を進んでやってくれた事に驚きと感謝,畏敬の念を持ちます。絵の鑑賞の良きガイドとなることでしょう。私が一番説明し難い意図や心情の部分を適切に言葉にして頂きとても助かります。海の記事も面白い効果的なエピソードだと思います。見る人に「秘密~記憶を垣間見るような一種の気恥ずかしさや恍惚さ」を味わって頂けたらと思います。「序」をありがたく使用させていただきます。絵のコメントは短めでお願いいたします。暑い中お疲れ様です。

Re: 読みごたえあるねぇ。

早速、ありがとうございます。

>彼はある時期からリキテックスを油彩に変えたと思います。
そうです。ある時突然油絵を描いていました(笑。
それまでリキテックスのS、という感じで専売特許みたいな顔してたのに。
アクリルなら早く描けますが、油絵は乾かないですし、いつまでもネチネチ描き続けられます。重厚にもなります。
(もっと長い制作時間を要するようになったのか、たまたま油にしたらもっとじっくり制作できるようになったとか)。
その辺の具体的な制作姿勢の変化に関してはっきり聴いたことはなかったですね。
絵そのものは基本的には、変わりませんが(笑。
ただ、油絵になってから緑の多様性が増しています。そこは良い方に作用したのでは。
山高帽のおじさんの出現と消失のドラマについては考えてもみませんでした(笑。
家庭を持って解消出来たものがあるのなら良いことだと思います。

確かに山高帽のおじさんは大学時代にはよく見ていましたね。
ポール・デルヴォーのオットー・リーデンブロック博士にも似ていたように思われますが、S君の場合家庭によって早々消え去る運命だったのですね。(そうしたことって知らぬうちに起きているのでしょうね)。
これは面白いご指摘です。
リア充嫌い、なるほど。そこも分かります。リア充ってある意味、鬱陶しいですし(笑。

しかし何より一番笑えたのが、余談の件です。
これは面白かった。情景がありありと目に浮かび、お腹が捩れました。
少し前の噺ですが娘さんの彼氏と酒を呑んで酔っ払ったとか言ってましたね。
案外、彼女が結婚したら、山高帽が復活したりして。
ミスター山高帽リターンズとか(爆。
何の話だ。

今度は一口コメントをアップします。
また面白い御話期待してます。
では、今後も宜しく。


Re: ありがとうございます。

こちらこそ、ありがとうございます。
こちらとしても良い刺激となりますもので。
このような機会をいただき感謝してます。

実はこの文章二倍くらいに膨らんでいて、あちこち3行単位で消去したりでここまでつめました。
ちょっとその関係で、飛躍に感じられる部分が出てしまったかなとも思えるのですが、思考の流れをそのまま書くのが目的ではないので。
(だいたいS君芸術を手短に伝えること自体大変なことです)。
2時間かかりました。ちなみに普段のブログ文章は、30分から長くても1時間はかけません。

コメントは、これまでに書いたものを元に、一口大にしたいと思います(笑。
一口大のプチケーキになればよいですが(笑。

では、またアップしますので。

よく書いてくれました。

[緑(黄色の青への混色)の多様性の探求]はズバリ私の制作のテーマです。家族には光が黄色すぎるといわれることがあるがこれがテーマ、命なんだから仕方ない。いつも意識していることなので、gomaちゃんよく書いてくれました。「遠近法からの逸脱、そこから生じる空間の歪み」は意識してませんでした。多くのものを画面に取り込もうとすると、必然的に視点がバラバラになり結果として遠近法は崩壊する。つまりこのようにしか描けないのです。絵を描くときまず頭にうかぶのは、舞台のうえに人物,ものがフィギアとして登場するジオラマのような世界です。それを斜め45度からの視点で絵にしていきます。だから必然的に遠近法による現実の風景のコピーにはならないのだろう。

Re: よく書いてくれました。

>黄色すぎるといわれることがあるがこれがテーマ、命なんだから仕方ない。
そうです。「、、佐橋氏も黄色の画家である。」と「2018 緑園都市」のところでも書きましたが、ゴッホ同様、黄色がどれだけ肝心なものか。
このまま黄色を極めて貰いたいものです。
>、、、必然的に視点がバラバラになり結果として遠近法は崩壊する。
ここがあのようなバランスの絵を生むのでしょう。
ワザと遠近法を解体しました的な現代絵画ではなく、プレ・ルネサンス期的な場~|固有時の共存する画布が何とも言えなく興味をそそるのでしょう。
このまま、自然体でどこまでも行ってほしいものです。

ちょっと確認

ホントに些細なことですが、“S君は大学を卒業するまで、江ノ電の「鎌倉高校前」から白樺並木の高台にある実家に住んでいた。”について、確か“結婚するまで”だったと思います。結婚して実家を出て平塚駅前のマンションに住んでたと思います。絵とは関係ないことですまん。

Re: ちょっと確認

ホント、そうだわ。ありがとう。
今の家、奥さんのお父さんが建ててくれたと言っていた。
思い出した。
「鴨がネギ背負ってやって来たようなもんじゃん」とか言って笑ったもんだわ。
そうだそうだ。大学出て直ぐでは、もうひとつ他の家に住んでいなければいけない。
そんな謎の家紀はなかったはず。
わたしにとってもその時期は就職後で何だか忙しく会っていない空白期なんだね。
直しておきます。また何かあったら宜しくです。

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