S君 小さな情景展 Pre003

最終日。
これから後の絵となるとわたしの知らなかった、初めて観る絵ばかりとなる。
S君の”presence”が認識できる作品群となるか。
前回、特集した「S君の仕事」から、もうずいぶん時が経ったことを実感する。
また以前とパソコン環境が不可抗力により変わってしまったため、スキャンの精度がだいぶ落ちている。
その影響が出てしまった部分があり残念。
そこは改善しておきたい(こうした機会はそうはないが)。
2018
「コンサバトリー」

わたしもコンサバトリー欲しい。中で多肉を(メダカも)育てたい。
最近、メダカを貰ってから、メダカにも凝り始めたところ。
(ここのところ人との良い交流もブログ上だけでなく増えて来た)。
ともかく、このような空間はそのうち何とかしたいものだ。
ここで思いっきりボーッと寛ぎたい(笑。
☆ Pre001で紹介した「湘南幻想青大将」(2007)や「湘南幻想ワニ園午後」(2010)の流れをくむわたしの好きなタイプの絵である。
ピアノがやけに小振りで中央テーブルが大きくてゴツイ、ちょっとポール・デルヴォー空間でもあるが、長閑な時間の流れが窺える。
日差しと柔らかい菫色の影が気持ちを鎮静させる。
こういう絵は描いていても心地よくなるもの。
ここでもポイントは、黄色だ。黄昏の色でもあるが、トワイライト・ゾーンの色である。
2018
「緑園都市」

珍しい質感だ。
一見ざらついたテクスチュアに見えて、筆致による効果であることが分かる。
黄色の魔術だ。
ちょっとゴッホみたいではないか。
あのような超絶的な盛り上げこそないが、ゴッホの「夜のカフェテラス」を咄嗟に思い浮かべてしまった。
意外だが、S君とゴッホの感性的な近さを感じるところ、、、。
自分の快感原則に忠実に生き、絶対にそれを曲げない「頑固さ」はゴッホとどっこいどっこいか。
それにしてもこのタッチとあからさまな黄色の偏愛。
更に傘を見て分かったのだが(遅い)、雨降りである(笑。
成程、このざらつきと最初感じたのは、雨降りの夜景の雰囲気~濡れた煌めきであったのだ。
雨粒を具体的に描かず地面(アスファルト)の状態を光で絶妙に表している。
(これに気づくのが遅かったのは、スキャンが上手くいかなかったことにもよる。実物を鑑賞してほしい)。
お約束の電車も緑と黄緑の4両編成で黄色いライトを放ちながら走って来る。
今回はスピードも感じる(笑。
2019
「SunSetTown」

「緑園都市」と同じ質感である。
黄色~トワイライト・ゾーンの刹那。
しかし何と言っても、この構図。
滝みたいに道路が上から下へ落ちている。
高架橋を水平に列車(蒸気機関車)が走ってゆく。その対比から見てもこの上から下の道路の角度には驚くしかない。
車が滑り落ちるように走って来るが、ここを登る車は気の毒だ。
この地形では画面上方を登ってゆくゴンドラが丁度よい。
しかしどうしてこんな構図・配置を思いついたのだろう。
普通の街に見えて、まるで遊園地みたいではないか。
2020
「TeaTimeInEnglishGardern]

繊細で緻密な黄色から緑~深緑へのグラデーションが。
この安定した構図の広がりのなかで、何とも心地よく息づく。
緑はある意味、最も難しい色であり、基本的に青と黄色の微妙な混色によって様々なニュアンスとして生成される。
敢えてどっしりとした高架線を中央に置き、その下方にほぼ左右対称に扇型に広がる池(沼?)を配する。
最初、南禅寺水路閣みたいな水道橋かと思ったが、S君はここにも可愛らしい蒸気機関車を玩具の様に走らせてしまった(笑。
ここはお約束だから仕方ない。
いや、走っていなければ心配になるというもの。彼の絵に記するサインに等しいのだから。
ここのテーブルで是非とも紅茶を飲んでみたいものだ。
遠くの緑の山から一番手前のテーブルまで、見事な調和と統一感でまとめられているが、ただ一点ウェイターがその場所~地形から見て極端に大きい。この人はいらなかった、と思う。
わたしの大好きな公園にこれと酷似した構図の場所があり、とても魅かれる。
(これが一番好きな絵になったかも)。
2020
「農林総合研究センター」

珍しく汽車が走っていない。きっと「農林総合研究センター」という現存する特定の場所を選んでしまった以上、近くに鉄道が無いことで描けなかったか、、、別にそんなことお構いなしに「幻想」と名付けて「突然やって来た汽車」と言うのも乙なものだが。
ここでは踏みとどまった(笑。もしかしたらこのフレームの外で出番を待っているのかも知れない。
緑はまさに名人芸、いや名匠という感じで、これだけで魅せてしまうが、上からはキングサリみたいな藤に似た植物が垂れている。まさに緑三昧。
そして更なるポイントは白であろう。
白っぽい猫から白い花、そして白い日傘の白ドレスの女性の後ろ姿。
しかしこの白は目立ちはするが強い主張や方向性は感じられない。
特に何かを期待させる彼方に誘うような強引さはなく、寧ろ二股に分かれたところで女性は佇んでいるように窺える。
誰かの迎えを待っているようにも思える白。
とてもひっそりとしたドラマを感じるところ。
2021
「TeaTime]

これも素敵な、緑の”TeaTime”だ。
恐らく毎日これに近い日々を送っているのだろう。
羨ましい限りである。
この外に張り出した(設置された)ガーデンテーブルみたいな開放的な場所は大変オシャレである。
フレームの上に鳥が乗っているところが廃墟感を演出していて酔える(爆。
コンサバトリーとは繋がりはなく別のコーナーであろうが、こっちでお茶したり、向こうで花に水やりしたりも良いものだ。
ここから見やる緑の多様性も充分堪能できる。
特に遠方の緑。
ブロ友のST Rockerさんがお寄せくださったコメントにある「遠くにあるものの情報密度は決して近くのものよりも疎であるようには感じられないのです。」という卓見。全く同感!
遠くの緑が実に濃い。
よくTVのお絵描き審査の番組などで、全てのモノは線遠近法で縛り消失点に吸い込まれるように描き、遠くは空気遠近法を使い空に滲み暈けるように描くんですよ、とか解説しているが、遠近法で全てを整序すればよいというものではない(遠近法は一つの制度に過ぎない)。これは絵画世界なのだから、一つの画面に沢山の固有時~場が活き活きと存在して響き合っていたらより楽しいではないか。
時折用を思いついて電話をすると奥さんが「主人は散歩に出かけております」と言う。
お茶をして、散策を楽しみ、後は絵を描く、か、、、。
、、、勝手にしなさい。
2021
「八幡山の洋館」

ここには、まだ行ったことが無い。
今回の絵画展の会場でもある。
とても素敵な空間が満喫できる場所だそうだ。
O君の曲もピアノ生演奏で聴くことが出来る大変贅沢な時間が過ごせそうである。
「わたくしここが気に入り描いちゃいました!」と言っていたが、ピンクの建物なのか、、、
目立つなあ。
青、赤、黄の調和も見られ、、、かなり可愛らしい建物だ。
ともかく内部空間が大変”comfortable”なことが夢想できる。
きっと、素敵な絵画展となるはず。
自分の作品もしっかり描かないと、、、。
ちょっと頑張ろう。
わたしは、歪めて描くことは出来ないので、平面抽象の生産をしている。
その他にも進めている計画もあるし(笑。
そろそろわたしも動き始めたい。
- 関連記事
-
- 小さな情景展 一口大コメ
- 小さな情景展 序
- S君 小さな情景展 Pre003
- S君 小さな情景展 Pre002
- S君 小さな情景展 Pre001