ウェア 破滅

Wer
2013
アメリカ
ウィリアム・ブレント・ベル 監督
ウィリアム・ブレント・ベル マシュー・ピーターマン 脚本
ロバート・ホール 特殊メイク・VFXデザイン
A・J・クック、、、ケイト・ムーア(人権派女性弁護士)
ブライアン・スコット・オコナー、、、タラン・グィネック(狼男)
セバスチャン・ロッシェ、、、ピストー(警部)
サイモン・クォーターマン、、、ギャビン(細胞遺伝子学教授、ケイトの元カレ)
ビク・サハイ、、、エリック(科学捜査官)
ホラー映画なのだろうが、これ程よく出来たものを見たのは初めて。
驚いた。
「ヒト」
定義し難い生命というモノはある。人のようだが到底その範疇には収まらないヒト。
ここでもタラン・グィネックは、最後に一度だけ「狼男」と呼ばれるだけで、名状し難い悪魔のように扱われる。
不可解で恐ろしい存在であり、そのようなものを扱った作品としては出色の出来栄えだ。
月が出ると変形し狂暴化して暴走する。
普通に考えれば「ウェアウルフ」か。

この映画の面白さは、撮影面では様々なカメラの目(手持ち、監視、ヘルメット装着、ニュースカメラ等々)で臨場感を出して生々しい迫力を見せている点。
闇や叢の使い方も良い。
そして惨殺シーンが即物的で激しくこれまた生々しい。死体にしても体の半分を食いちぎられて損傷しているところがディテールに渡り示される。
ストーリーも一筋縄ではいかない、意欲的なものであった。
フランス舞台だがアメリカ映画だ。
フランス旅行中のアメリカ人親子が惨殺された事件でその検証から猛獣によるものと見られたが、ピストー警部の下、殺人事件に切り替えられる。犯人はタランという大男である。この男の土地を核廃棄物処理に使いたい街と警察側の利権の絡む陰謀が浮かび上がる。タランの母もそれを強く危惧しており、家周囲には監視モニターが据え付けられていた。
タランの父は昨年自動車事故死しているが、検死で多量の睡眠薬を飲まされていたことが判明する。
更にタランがポルフィリン症という次第に動けなくなる珍しい病に犯されており、そのための検査も行い、弁護士ケイトは冤罪と共に警察~核廃棄会社の不正癒着と陰謀も視野に入れる(父の睡眠薬も考えれば殺人も)。
馬の惨殺体が見つかり、その犯人が熊であった。ここで猶更タランの冤罪の線が濃くなる。

しかし病の検査が病院で行われるなか、光刺激による網膜検査でタランが過剰な反応を見せる。
狂暴化し暴れ狂う。
ここで彼の正体が知れ渡ることに、、、。
4人の医療関係者をいとも簡単に惨殺し彼は物凄い速度で逃亡する。
急展開である。
テンポがよく無駄がない。視点の切り替えも多彩。
同時にケイトを守り、タランから受けた噛み傷からの感染が気になるギャビンの体調不良とケイトに対する感情が絡み進行する。
光との関係の危険性に気づいたのは、エリックであった。
そして月である。
その通り、タランは月の出に従い身体を変形させ人を遥かに超えた怪力と身体能力を見せつけた。
ビル街にあっても森の洞窟にあってもその容赦ない攻撃性は留まるところを知らない。

まさに悪魔だ。
弁護士ケイトももはや弁護どころの話ではない。
しかし彼女は、タランの父の死には事件性をはっきり認識しており、彼らの土地と警察及び核処理関連の不正を暴く意思はしっかりもっていた。
体調の優れないギャビンを残し、何故か大変危険なタランの捜索にピストーから同行を頼まれるケイトとエリック。
川辺で捜索中に彼らはタランに出逢い、エリックは無残に殺害される。
そしてケイトに襲い掛かるが、彼の残された理性が自分を懸命に庇ってくれていた彼女を認識し殺すことは出来ない。

そこへケイトを守りタランに腕を噛まれ感染し自らも狼男となったギャビンが現れ、彼を彼女から振り払い投げ飛ばす。
こちらも恐ろしい力が漲っている。
そして激しいタランとギャビンの一騎打ちが始まるのだ。
正直、なよっとした学者のギャビンがここまで強くなるものかと驚く。
(何故、髪の毛に至るまで体毛を剃り落としているのかは、分からない)。
すでにギャビンはタランと同格の強さなのだ。
この闘いがまたタフで凄い。
こういう展開で来たか、、、である(笑。
そしてタランを倒し、ギャビンが無言でケイトに自分の頭を銃で撃ち抜くように懇願している時に、上空のヘリから銃弾が放たれケイトの腹部を撃ち抜く。
これを見て逆上したギャビンが周囲を取り囲んだ特殊部隊を次々に倒してゆく。
そして一人を夜空に向けて放り投げ、上空のピストーの乗るヘリにぶつける。
ヘリはバランスを失い墜落してピストーも死亡することに。
結局、警察~ピストーの、タランの土地と彼の父を巡る不正も発覚した。

何度も銃撃を受けながらも蘇り、ギャビンとの死闘で息絶えたと思われたタランは、知らぬ間に蘇生し身を隠しながら人々を襲い続けるのであった。
ケイトは重傷で入院しているとのこと。一命は取り留めたのだ。あの銃弾は到底、流れ弾とは思えない。上空からの狙撃でありピストーによる口封じではなかったか。
暫く後~映画の最後で、元の姿に戻ったギャビンは(どうやって戻ったのか)、タランを「狼男だ」と称する。
撮影も演出効果も申し分なかった。
AmazonPrimeにて
わたしもタランに触発されるところはあった。
破壊力である。
10倍の攻撃力をもって報復してゆくには絶対に必要なものだ。
そろそろわたしもやらなければならない!
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