天使の肌

PEAU D'ANGE
ONCE UPON AN ANGEL
2002年
フランス
ヴァンサン・ペレーズ監督・脚本
モルガーヌ・モレ 、、、アンジェル(家政婦の少女)
ギョーム・ドパルデュー グ、、、レゴワール(帰郷した青年)
一口に言って、崇高な映画でした。
モルガン・モレの涼やかで凛とした、自然な演技は素晴らしい。
そしてこのような切ない物語には適役であったと思います。
モレ演じるまだ少女のような若い女性は、貧しい実家から口減らしのような形で、離れた町へ住み込みのメイドに出されます。
真面目だが不器用で素直な彼女は、その町で母親の葬儀に戻った青年と偶然出遭います。
青年は癒えない蟠りを抱えており、愛情を素直に受け入れることができません。
豪雨の夜、運命的に二人は結ばれます。
一夜限りでの別れになりますが、彼女はその後も一途に彼のことを思い続けます。
彼女もその家を飛び出し洗濯の仕事などをしつつ、紆余曲折しながらも彼が製薬会社に勤めていることを知り、
身近な場所に身を寄せようとします。
そんな中で、彼女は殺人事件の共犯者扱いされて投獄されることとなります。
そこで彼に助けを求め、やっと面会が叶いますが、彼はすでに会社での地位を築き社長の娘と結婚を果たしていました。
彼女はそれをやさしく許し、将来を気にする彼に、「いまを生きること」を諭すのです。
刑務所で知り合った教会の尼僧たちと花を植えるしごとを一心に続け、やがて冤罪から解け彼女は釈放されます。
神を嫌う彼女ですが、自由の身になった後も自ら教会に残り、花を育てる奉仕を続けます。
自分が植えた花は見事に満開になりますが。彼女はまだ若くして不慮の事故で帰らぬ人となります。
豪雨、雷、爆音のポップミュージック等も鳴りますが、
過剰に煽るような刺激的演出は一切なく、物語は淡々と静謐のうちに展開してゆきます。
荒涼感と寂寞感はあっても一種宗教的な希望の光が穏やかに射しており全体のトーンが統一されています。
それに絡む音楽も効果的で破れ目が見られません。
主人公の女性は、文字通り「野の花」のような目立たぬ清楚な女性でした。
しかし慎み深く高貴で忘れがたい魅力をもった女性であったことがつくづく思い知らされます。
結局彼も彼女のことを忘れることはできませんでした。
「強い林檎の香りは記憶の底に残る。」
彼女のなにも求めない無償の愛に触れ
愛を受け入れることの出来ない彼の心が癒されていたのでしょう。
いもじくも彼が彼女に遭ったときに放った「君は尼僧のようだね」という言葉のごとく彼女は聖母のような女性だった。
彼は母からの愛を素直に受け入れることができ、母の墓に花を手向ける。
そしてエンドロール、、、。
彼の名前を小声で呼び、亡くなるときの彼女の笑顔があまりに切ない。