切り裂き魔ゴーレム

The Limehouse Golem
2016年
イギリス
フアン・カルロス・メディナ監督
ジェーン・ゴールドマン脚本
ピーター・アクロイド『切り裂き魔ゴーレム』原作
ビル・ナイ、、、ジョン・キルデア(刑事)
オリヴィア・クック、、、エリザベス(リジー)・クリー(舞台女優)
ダグラス・ブース、、、 ダグラス・ブース(舞台俳優、劇団長、リジーの師匠)
ダニエル・メイズ、、、ジョージ・フラッド(キルデア刑事の補佐警官)
サム・リード、、、ジョン・クリー(リジーの夫、売れない劇作家)
マリア・バルベルデ、、、アヴェリン・オルテガ(クリーの愛人、元女優のメイド)
エディ・マーサン 、、、アンクル( 劇場支配人)
「芸術の一分野として見た殺人」(トマス・ド・クインシー)などという著書があったとは知らなかった。
(「阿片常用者の告白」が有名であるが、、、)。
この著書のページの上に自分の殺害日記をつける犯人とはどんな奴だ?
しかも物凄い癖のある筆跡ではないか、、、。
筆跡鑑定したら直ぐ判るような代物。
図書館で閲覧しながら本に直接、書き込みするってどういうことだ?
かなりの自己顕示欲ではないか。
『ライムハウスのゴーレム』と恐れられる連続殺人犯である。

リジーが作家の夫を毒殺したとして逮捕された日に一家5人全員殺害事件も起きていた。
この両方の事件が繋がってゆく。
ゴーレムの方は、死体が切り刻まれるもので殺害方法はことなるものだが。
「傍観者であれ、加害者と同等の血を流させることになる」などと血文字で壁に書きつけるなど、劇場型である。
自己を何らかの形で強烈に表出しないと居られない体質。
大変な不幸と不遇に見舞われ深い傷を負っている者こそ、その必然性を持つ。
出来れば、ロックミュージシャンになることを勧めたいが、、、最適の職業なのだが、、、。
この時代は、1880年頃だとすると、、、。
確かに大衆演劇など一番合っている表出の場かも知れない。
リジーにとっても原体験に直結する場であろうし。
しかし、そこで充足出来なかった。彼女の要求する条件が整わなかった。
コメディエンヌとして人気は博したが、舞台女優として自分の全てを表現したかったのだ。
受ける~称賛だけでは物足りない。自分の外傷経験を対消滅させる超巨大エネルギーが必要なのだ。
浄化と昇華が閉ざされれば、違う場所に激しい殺意に変換されて噴出する。
それも芸術的趣向を加えた。
そう、これも自己表出である以上。

幼少時の愛着障害と思春期における抑圧と搾取。
完全に押しつぶされた自己尊厳。
だが生のエネルギー自体は消滅はしない。保存される。
識域下に圧縮され貯えられた凄まじいエネルギーは強烈な殺意に絞り込まれ制御不能に放流する。
これを止められる人間などいない。
勿論、神にも止められはしない。
そして永久に回帰する。
エネルギーは不滅なのだ。

- 関連記事
-
- プラン9・フロム・アウタースペース
- 地球最後の男
- 切り裂き魔ゴーレム
- クリスタル殺人事件
- 定められし運命