マーシュランド

La isla mínima
2014年
スペイン
アルベルト・ロドリゲス監督・脚本
フリオ・デ・ラ・ロサ音楽
アレックス・カタラン撮影
ラウール・アレバロ、、、ペドロ・スアレス刑事
ハビエル・グティエレス、、、フアン・ロブレス刑事
アントニオ・デ・ラ・トーレ、、、ロドリゴ(被害者の父親)
ネレア・バロス、、、ロシオ(被害者の母親)
ヘスス・カストロ、、、キニ(女たらし)
メルセデス・レオン、、、カーサ・ソト(猟師宿の女主人)
アデルファ・カルボ、、、フェルナンダ
マノロ・ソロ、、、ジャーナリスト
サルバドール・レイナ、、、ヘスス
ヘスス・カロサ、、、ミゲル
フアン・カルロス・ビリェヌエバ、、、アンドラーデ判事
アルベルト・ゴンサレス、、、アルフォンソ・コラレス(実業家、町の有力者)
マヌエル・サラス、、、セバスティアン・ロビラ(猟師宿の従業員)
セシリア・ビリャヌエバ、、、マリア
アナ・トメノ、、、マリーナ
映像の空気感が圧倒する。特にあの湿原。水辺の夕日。
まるで絵画を見るような気持ちで観てしまう。
恍惚として魅入ってしまうほど、幻想的なまでに美しい。
そして殺人事件の犯人を追い続ける刑事たちの向かうところ不穏な空気でピリピリしている。
BGMも良くマッチしている。
二人の刑事も渋くてピッタリ。

スペインの現実が染み入るように描かれる。
息苦しい程に濃密でリアルだ。何もかも。
死体も。
映画でこれ程即物的な(惨殺)死体を観たことは無い。
そして、突然俯瞰映像に切り替わる。
鳥の視座よりずっと高くて驚く。
この俯瞰って一体、、、人間の営み全てを呑み込む自然の風景の分厚さを確認するかのような。
「町を出たいの」「耐えられない」
この町の娘たちにとってどういう状況なのか、、、女子高生でもそうなのだ。
殺された二人も麻薬売買に巻き込まれ暴行され拷問にかけられ殺された。
失踪事件は珍しいことではないという。
町を兎も角出たがっている。そして必死に職を探している。
貧困、薬の密売に絡むトラブル~賄賂、汚職、憲兵隊との関係、、、民主主義への変動期のなかで持ち上がるしこり。
1980年のスペイン・アンダルシア州のそれは美しい風景のなかでの人間模様。

フランコ独裁体制は終焉しているが、あちこちに爪痕は残っている。
署長が何度も今は民主主義なんだぞと刑事たちに言うが、現場の捜査ではそうもいかない。
二人のやり手の刑事もバシバシ容疑者にもなっていない相手をぶん殴る。
そして二人とも捜査への取り組み方、方針が違う。
署長にしても民主主義とは言えない上との関係~仕来りで動く。
そして淡々としているが、かなりハードな捜査を経て二人の刑事は犯人を追い詰める。
猟師宿で少女の拷問などの犯行が積まれていたようだ。
夜間のちょっとしたカーチェイスも大変趣深い。
わたしの好きなシトロエンが走りまくり何故だか嬉しいものだ(笑。
スペインの田舎にシトロエンがかなり入って来ていることが分かった。
最後は湿地に追い込む。
これが凄い湿地なのだ。
ここで初めて銃撃戦になり警官側も皆怪我をする。

フアンが傷を負いながらも事件の主犯~コラレスをナイフで倒し、攫われた少女も無事に救出する。
他の犯人、プレイボーイのキニと猟師宿の従業員セバスティアンも逮捕された。
手柄はペドロのものになったらしい(新聞記事からすると)。
だがジャーナリストの情報によるとフアンは以前、秘密警察で活躍した過去があり「カラス」と恐れられ100人以上を一人で拷問していたという。ペドロの彼を複雑な想いで見る鋭い目が印象的であった。そしてエンドロールへ。
ここに出てくる人物も誰もが厚みを持った人間に描かれている。
と謂うより、各自が深い闇を抱えて生きており、その苦しさが町に充満しているかのよう。
(それに少女たちは耐えきれなかったのかと思ってしまう)。
風景ともども重厚で重苦しい映画であった。
この時期のスペインの濃厚な雰囲気に浸れた作品である。
しかし一回の視聴では咀嚼し切れない世界が広がっていた。
そう、何が残ったかと思うと、あの俯瞰した自然の光景。

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