怪奇蒐集者 黄泉がたり 村上ロックより抜粋

2020年
横山一洋 監督
村上ロック,、、、語り
蜃気楼龍玉、、、案内人
この人の名前は以前、聞いたことがあり、この人の噺だけ聞いてこのシリーズは(笑、終わりにすることにした。
流石に喋りは圧倒的に上手い。
そして、これは「怪談」を完全に超えている。
SF小説のネタになり得る何とも凄い、すっ飛んだ噺である。
「知られざる人々」
50代の男性による、1980年代「バンドブーム」の頃の噺。
当時バンド活動をしていた情報提供者と幼馴染との噺から始まるが、、、。
幼馴染は事故死し、バンドをいったん解散するが、暫くして再び始めようとした時から不思議な噺に展開する。
ヴォーカルを募集したら同い年(19歳)の女子から連絡が入ってきた。
しかしその子は、バンドそっちのけで、亡くなった幼馴染のことを話してくる。
あなたの幼馴染が今ここにいる。彼はあなたに伝えたいことがあるとわたしの意識に入って来たのです。
彼の気持ちを聴いてほしい、という。
当然呆気にとられたが、他でもない幼馴染のことであり騙されたと思って彼女に会い話を聞くことに、、、。
確かに幼馴染の好きな物も全部その通りで、頭部を強く打って亡くなったことも知っており信憑性は高いとしか言いようのない。
彼らは彼女を介して気持ちを伝えあった。
そして、どうしてそんなことが分かるのか、聴いたところからがこの噺の肝となる。それまでは前振りに過ぎない。
彼女は、群馬県の山間部の隔離された集落から来たという。
(時の権力者から政治的に隔離されたということだ)。
普通の人間にない能力を持つ者の集落で、遠い先祖からそれ~超能力を受け継いできたのだった。
彼女の能力は、人の目の前に球体があるのが見える。
その球体に割れろと念じれば、その人は膝から崩れ落ちて死ぬ。
まだ幼い頃、面白半分で8人を殺したそうだ。
村長に余りに強い超能力であることを危惧され一週間幽閉されその能力は失ったが、死者が見えたりその意思を受信することはまだ出来ると言う。
唖然とするほかない、、、わたしもだ。
日常の生活における一般論として、彼女の言うには、、、
後ろのモノ同士が惹かれ合えば気が合い、反発し合えば気が合わない、というものらしい。
(後ろのモノとは何か、それについての言及はないが、見当はつく、、、)。
磁石のS極とN極の関係に等しく、普通の人の後ろのモノは陰か陽であり、陰と陽は引き合い、同極同士は反発する原理だ。
しかし誰からも好かれる人の後ろには、死神が付いており、、、
死神は陰も陽もどちらも殺すことが出来るという。
(人は誰もが、後ろのモノに支配されているというのか、、、)。
提供者は、彼女の語り口の余りの説得力に、圧倒されるばかりであったそうだ。
余談として村上氏が語るには、調べると隔離された集落は46都道府県には存在するが、群馬県にだけないと言う。
つまり、未だに隠し続けなければならない集落が群馬県には、あるということだと括る。
「今いる世界」
40代半ばの男性が情報提供者。
提供者大学生時代の噺である。
彼が親友ヨネの借りている一軒家にその他の友人たちと集まり、呑んだり騒いだりを毎夜のように繰り返していた。
ある日、怖いビデオを借りてきてふたりで見た後で、理屈っぽい彼があの世の噺と言うが、今いるこの世界こそがあの世でないと証明できるか、などといういつもながらの議論を向けてきたという。
その時に気づいたが、昼にビデオを見始めたのにいつの間にか夜になっている。しかし部屋は妙に明るい。
誰も電気は付けていない。と謂うよりその部屋には照明器具自体がなかった。
すると地震が起こり、大きな揺れと共に部屋の隅にあった食器棚と書棚が何とヨネ君に向けて両脇から移動してくるのだ。
提供者の驚きは、彼の膝の前の空間そのものがヨネ君を挟み込む形で閉じてゆくことでピークを迎える。
ヨネ君はゴムのように細長く伸びたと思うと「どうなってるの」と言い残し、とうとう食器棚と書棚に挟まれる形で無くなってしまった。
提供者はベッドに座っている自分に気づく。
あれは夢だったのかと一瞬思うが、寝ていた分けではない。
しかもレンタルビデオも置いてあるではないか。
パニックになり友人たちに片っ端から連絡して、次の日に皆でヨネ君宅に出かけたが、これまで何百回も行った場所に行きつけないのだ。
何とその家のあった場所自体が閉じてしまっていた。
ヨネ宅を挟んで建っていた住宅が完全に隣り合って建っているではないか、、、。
大変だということで大学に連絡するが、その学生は最初から在籍していなかった。
だが、ヨネ君のことを知る学生は他にも何人もいたのだ。その存在自体は確認されている。
しかし彼に会うことは二度と出来なかった。
20数年後、例の仲間と集まった際に、一人がヨネ君から手紙を貰ったと言って皆に見せた。
そこには赤いペンで線が何本も入っているだけのものであったが、そこにいる誰もが意味を正確に受け取った。
「皆元気か?自分はこちらで元気にやってるよ」というものであったという。
ヨネ君のことを友人と語り合っているうちに、彼の物真似は出来るかという噺になりそんなことは、容易いとその提供者がやろうと思って愕然とする。彼は端からわれわれの言葉を喋ってはいなかったのだ。人には発声できない真似のしようのない特別な言語を発していたのだ。
しかし友人の誰もが彼の言葉をしっかり理解し自然なコミュニケーションがとれていたのだ。
彼は別の次元の存在であったのか、、、そしてわれわれは一体何者なのか、、、この世(あの世)とは何なのか、、、で結ばれる。
これには唸った。
こんな凄い噺は滅多に聴けない。
宇宙や深海や地底を探検するばかりでなく、普通に地上で探求することもあることを実感する。
これも今や物理学の範疇となってはいるが。
ここで話されたものは、吹けば飛んで消え去るような怪談とは、質量が全く違った。
AmazonPrimeで、、、「怪奇蒐集者 黄泉がたり 国沢一誠&村上ロック」より抜粋。
村上ロックを聴く季節
怪奇蒐集者 ROCKIII 村上ロック
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