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GOMA28

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一人息子

The Only Son003

The Only Son
1936年

小津安二郎 監督・原案
池田忠雄、荒田正男 脚本


飯田蝶子、、、野々宮つね(母)
日守新一、、、野々宮良助(一人息子)
坪内美子、、、杉子(良助の妻)
吉川満子、、、おたか(隣家の奥さん)
笠智衆、、、大久保先生(トンカツ屋主人)


どんどん時代を遡って観て来た小津映画。3本目。
昨日観た11年後の小津映画でもヒロインで大活躍の飯田蝶子さんの若いのに老成した演技の光る作品。

1936年の作品である。構図はこの頃から決まっており、枕詞の静物ショットも効果的に配されている。
チャップリン(サボタージュ)やヒッチコック(モダンタイムズ)が名作を発表している時代ではあるが、、、
流石に時代をヒシヒシと感じさせる。
最初出てきた笠智衆が飛んでもなく若い(彼と気づかなかったではないか)。
フィルムのノイズが気になり、小津監督の初のトーキー作品ということだが、セリフが聞き取りにくい。
立身出世主義の時代である。
東京と言えどもまだ怖い程ガランとした空間が開けている息子の住む土地。
別に職業に卑賤はなく、夜学の教師だろうとトンカツ屋を営もうと何でもよいはずだが、収入の点で大変厳しいものであったようだ。
大金を儲けていれば、取り敢えずは文句はないというところであろうが、、、。
確かに息子の良助宅も大久保先生のトンカツ屋にしても場末感が半端ではない。
とても金に困っており、田舎から訪ねてきた母に御馳走を振舞うにも同僚から借金しなければならない状況だ。
夜でも近所から機械の音が聞こえる。そのために家賃が少し安いという。そんな住居。

The Only Son004

息子としては、母を東京に呼びたくなかった。
女手一つで紡績工場で働き息子を東京の中学に進学させ将来に夢を託したのだが。
学費の工面で家財全てを売り払い工場の長屋住まいで長年懸命に働き、独り立ちした息子の暮らしぶりを見に上京したら、そこには想像と全く異なる光景があった。
しかも妻もいてその子供~赤ん坊もいた。
愕然とし絶句する母。
その様子に項垂れつづも明るく振舞い母に御馳走し行楽地を案内して回る息子。

息子としては彼なりの幸せは手に入れていると思うが、母の思いに対する負い目というか義理に対し引け目を感じている。
お前の幸せを願うという母の「幸せ」に達していないと痛感してしまう息子(夫婦)である。
当時のパラダイムからくる落ちこぼれ感でもあろう。

母は何とか現実を受け止めようとするが、経済的に困窮している様子は直ぐに察知した。
息子の恩師で夢を抱き、地方の教師を辞め上京していた大久保先生もかつての精悍な面影はなく、寂れたトンカツ屋を開いている。
(ここでの笠智衆はメイクもあるかしっかり落ちぶれた感じであった。芸風は不変である)。
これが東京というもんですよ、おかあさん、と言われても息子の立身出世のために身を粉にして働いてきたつねには納得できない。
(この設定、見ようによっては「夜学の教師」や「トンカツ屋」から抗議を受け兼ねない差別的なものでもある)。

The Only Son001  The Only Son002

やるだけのことはやったが、ここまでだったと過去形で語る息子に、まだ若いのだからこれから先の希望を持てと檄を入れる母。
傍でオイオイ泣く息子の妻。
口を半開きでひたすら眠り続ける赤ん坊、、、。

何かと助け合っている隣家の奥さんの子供が馬に蹴られ大怪我をした際、進んで介抱し医者に連れて行き、治療費の足しにと金を渡す息子の献身的振る舞いに接し、母は鼻が高いよと言って息子を褒める。
とても嬉しいと言いつつもどこか複雑な思いでいる母。
そしてお金をくるんだ手紙を置いて郷里の信州に帰ってゆく。

息子は、そこでもう一回勉強をし直して頑張ってみると嫁に誓うのであったが。
(ここで何故かわたしは、クレヨンしんちゃんを思い浮かべてしまった。意味は分からない。いや、もっと能天気に生きても良いのでは、と頭をよぎったせいか)。

特に社会的地位を得たり金儲けしなくても、愛情に満ちた生活が出来れば基本充分であると思うが、どうしてもそれでは不足感をもってしまう時代性(又は心性)というものはあるだろう。
「足るを知る」という老子の言葉もあるが、、、。
勿論、今はこれ程、一元的な富や名誉に拘る心性は少なくなったにせよ、個人主義から価値観も多様化したとはいえ、一人息子への幻想は様々な形態をもって強く圧しかかっていることだろう。一人息子でなくてもそうであるが(比較によって更に強い抑圧と疎外が生まれれる場合も多い)。
毒親の増殖から見てもそれは謂える。


冒頭の芥川龍之介の『人生の悲劇の第一幕は親子になったことにはじまっている』という引用が感慨深い。
淡々としているが、結構重い映画である。そう、実に重くて厄介、、、。










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