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GOMA28

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テナント/恐怖を借りた男

The Tenant001

The Tenant
1976年
フランス

ロマン・ポランスキー監督・脚本
ジェラール・ブラッシュ脚本
ロラン・トポール『幻の下宿人』原作
スヴェン・ニクヴィスト撮影

ロマン・ポランスキー、、、トレルコフスキー(ポーランド系の独身男性)
イザベル・アジャーニ、、、ステラ(シモーヌの友人)
メルヴィン・ダグラス、、、ズィー(家主)
シェリー・ウィンタース、、、管理人
ジョー・ヴァン・フリート、、、ディオズ夫人(アパート住人、著名を求めてくる)
リラ・ケドロヴァ、、、ガデリアン夫人(アパート住人、ディオズ夫人に攻撃される)
エヴァ・イオネスコ、、、ガデリアン夫人の娘(脚に障害をもつ)

ベルイマン監督の映画の撮影をしているスヴェン・ニクヴィストがこの映画を担当。


シモーヌ・シェールという女性が窓から飛び降り自殺した部屋を借りたポーランド系のトレルコフスキーも隣人たちの目に追い詰められ、彼もまた同じ窓から飛び降り自殺してしまうまでの経緯を描く。

心底滅入る映画だ。
古くて不便な集合住宅ということから音の問題がまずあるだろうが、それ以前に他者~余所者に対する排除・抑圧的な冷たい態度・姿勢が厳然としてそこにはある。
些細な違和から始まり、積み重なってゆくのだが、、、
彼の一挙手一投足が悉く非難の対象となる(少なくとも彼にはそう捉えられる)。
音などには殊更、聞き耳を立てられビクビクしながら暮らすこととなり、生きた心地がしない。
かなり家賃の高めのアパートでありながら、自分の部屋で寛げないストレスは、やがて彼の精神を深く蝕んで行く。

まだ前半は、死の淵にいる全身を包帯に巻かれたシモーヌの見舞いの時に知り合った彼女の親友ステラが何かとこころの拠り所となり得た。
親和的な関係を結べる彼女がいることで、トレルコフスキーはギリギリのところで外界との精神のバランスは保てていた。
この辺はよく分かる。

しかし窓の真向かいに見えるトイレからはこちらをじっと睨む男の姿。
部屋には何と自殺女性の化粧品とドレスが見つかる。
そして何とも言えない不安と恐怖を煽ったのが、壁穴に差し込まれた抜けた歯であった。
シモーヌの前歯である(彼女には前歯が一本無かった)。
アパートの住人同士の険悪な関係も見えてきて権力闘争に加わるよう圧力をかけられる。
近くのカフェでも彼の注文を無視したメニューを押し付けて来る。
真面目でナイーブで繊細なトレルコフスキーにとって、不条理な悪意としか思えぬ状況がついに妄想を生む。

やがて彼の趣向も変化し、たばこの銘柄や飲み物も違うものになって来る。そしてシモーヌの化粧品とドレスで女装する。
彼女と同一化を図るかのように。
周囲の人間すべてが自分を追い詰めて、シモーヌのように自殺させようとしていると、、、。
ならばシモーヌとなって今一度目にもの見せてやろうと。
彼の唯一のこころの支えであったステラも、ひょんなことから彼にとって危害を加える他の人間たちの文脈に繋がってしまう。
異様に増幅した疎外感から来る妄想の論理である。これは内閉し完結するもので、客観的な検証の余地はない。
完全に孤立してしまったところで、彼の狂気は加速する。

見るもの全てが彼を追い込む。
彼もまた前歯が一本抜けていた(シモーヌと同じ歯だ)。
もう打開の手はない。逃げ場もない。外部がないのだ。
彼は飛び降りる。しかも女装をして。
アパートの住人たちはそれを目の当たりにして不気味がり、やはり倒錯者だったのね、と吐き捨てる者もいる。
深手を負うがまだ体を動かす力は残っており、最後の力で階段を上り再度飛び降りを敢行するのだった。
余りに痛々しくも滑稽な、周りの者に対する復讐と自らの外に出る~解放される唯一の手段に他ならない。


彼は瀕死の状態で包帯を巻かれた第二のシモーヌとなっていた。


もうやりきれない。これはロマン・ポランスキー自身の内的体験ではないか。
彼もまた数奇で過酷な生を生きてきた人である。
何気なくエヴァ・イオネスコが出ているところなど、如何にもポランスキーの映画らしい。

役者としてのポランスキーは充分魅力的であった。
特に声が良く、英語の発音も綺麗であった(他の役者も発音が綺麗で聞き取り易かった)。
イザベル・アジャーニは、何をやっても文句なし(もう少し出番が欲しかったが)。


気の滅入る、よく出来たサイコドラマであった。








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