マイノリティ・リポート


MINORITY REPORT
2002年
アメリカ
スティーヴン・スピルバーグ監督
フィリップ・K・ディック原作
ジョン・コーエン、スコット・フランク脚本
トム・クルーズ 、、、ジョン・アンダートン
コリン・ファレル 、、、ダニー・ウィットワー
サマンサ・モートン 、、、アガサ
マックス・フォン・シドー 、、、ラマー・バージェス局長
ロイス・スミス 、、、アイリス・ハイネマン博士
ピーター・ストーメア 、、、エディ・ソロモン医師
ティム・ブレイク・ネルソン 、、、ギデオン
スティーヴ・ハリス 、、、ジャッド
キャスリン・モリス 、、、ララ・クラーク
マイク・バインダー 、、、リオ・クロウ
ダニエル・ロンドン 、、、ウォリー
ドミニク・スコット・ケイ 、、、ショーン(9才)
ニール・マクドノー 、、、フレッチャー
ジェシカ・キャプショー 、、、エヴァンナ
パトリック・キルパトリック 、、、ノット
ジェシカ・ハーパー 、、、アン・ライブリー
アシュレイ・クロウ 、、、サラ・マークス
アリー・グロス 、、、ハワード・マークス
予防的治安維持機能を遂行する「犯罪予防局」がプリコグという預言者3人を管理して殺人発生を未然に防ぐという、そもそもプリコグとは一体何なんだ?人間であるプリコグをシステム‐機械の中核に据えて利用するという犯罪予防システムとはいかがなものか、という違和感がまずはじめにこちらの脳裏に蟠ってしまう。人間なら寿命もあるだろうし、システムとしての永続性はどうなんだ、という点も含め。その水槽のある場所を神殿?とか呼ばせてその「生贄」の存在を正当化している。そのかいあって犯罪発生率は90パーセント減少し、システムが稼働してから殺人事件は0となる。犯罪が発生する前に警察が踏み込み殺人予定犯人が逮捕されるからだ。
今現在はワシントンDCにおいて実施されている。
殺人予告が3人の予知夢から知らされるが、ときおり食い違う予知夢が一人から発生することがあり、それが「マイノリティーリポート」として秘密裏に破棄される。これが外部に知られるとシステムの信頼性が崩れ、とても全国規模での民衆の支持は得られない。当然だ。
さらにそれだけでない主人公にも絡んでくる重大な問題(犯罪)をこのシステムはその起源において秘めていた。
予知夢にエコーというその映像をプリコグが反復してしまう特性を持つことが物語の鍵になっていく。
そして何より「予知」とは?
人にとって予知とは何か?
ストーリーの中で出色なのは、主人公はシステムの改ざん秘密を探るため、当局から追われる身となり自分の目玉を他人のものと入れ替え、至るところに張り巡らされた網膜スキャナーをかい潜り潜入して行くところ。まさにスリルとサスペンスてんこ盛りの場面であるが、この過程で次々現れるテクノロジーや奇妙な改造された植物などの登場に、興味というよりたまらなく好奇心を強く刺激された。
何をとっても2001年宇宙の旅の精緻なテクノロジー演出をブラッシュアップし強烈にアクティブにしたものだ。ブレードランナーに比べても、謎解きサスペンスも加わり、遥かにスリリングで息もつかせぬ速度感がある。網膜を求め温度センサーで探りまわるスキャナー蜘蛛や潜入時に自分の目玉を袋から落としてしまい、転がる目玉を追いかけなんとか一つだけ拾うところなど何とも言えない真に迫る直接性もある。(ここは思わず身を乗り出しヒヤヒヤしてしまった)
犯罪の予知発生時に透明管を転がってくる玉も、ロトのようなクジを想わせ面白い。その色によっても犯罪の種類が異なる。厳格なテクノロジーの中に秀逸な遊びの要素を感じるところも少なくない。
深紅のLexus Minority Report Sports Carにも魅了された。市販されたら買い手は5万だ。(値段ではない!)
大変な発明が実は麻薬「ニューロイン」の中毒患者から生まれた遺伝子疾患を持つ子供の治療過程から意図せず生まれたことや、主人公が「はめられた」場面でも、関係ない人物を射殺することを自分の意思では思い止まったにも関わらず結果的に予言通りに相手が銃で死んでしまうところなど実に感慨深いものであった。
通常われわれにとっての予知ー占いの類は、過去の解釈ー物語化である。(実際にそれとして経験された後の解釈によってはじめて評価が決まるため。それ以前に予知であったかどうかは構造上確認しようがない)
ここでの予知は犯罪に限られているが(選択されている?)それが絶対であればそれは現在の予定である。
しかしその事態を知った(超越的立場にいる)者にとっては、意思によって変更できるということがここでは要諦になる。つまり予知発生後にその加害者が超越者の立場であればその犯罪は未然に防げる(犯罪を犯さずに済む)というものであるが、予知通り被害者は出てしまう場合がある。
すべて「絶対的予知」に振り回されるという話の展開であったが、最後にその円環構造から解き放たれる。
それが意思による選択であった。
物語・道具立てともに重厚で稠密かつ優れたアイデア(実用的な)に富んでいる。
フィリップ・K・ディック原作、スティーブン・スピルバーグ監督作品はやはり最強であった。
紛れもない類を見ない傑作SF映画である。
これについての解説は映画の中ではなかったが、まず犯罪の予知というとき、どのレベルでのものなのか。原発テロとか国際組織的大規模犯罪などについてはどうなのか?予知が出る時間によっては間に合わない場合はないのか?それも計算しての予知か?国外に飛び他国の中枢にも深く潜入しなければならないものもある。あくまでも個人レベルの犯罪に関してか?予知に関しては対象外(選択)も存在するのか?
超越者の存在は最初に予知できないのか?
メビウスの輪のような問題になるが。
いろいろ思うところが出てくる映画です。(これらは書く気はありませんでしたが)
*ちょっとわたしがしっかり見ていなかったせいか、あのエコーのトリックを見破った検査官が黒幕(まさに犯人)に打ち明けたときに射殺されるところの予知夢はどうなっていましたっけ?まだプリコグは外に出されていませんよね。あの状況で削除する余裕もないはずですが。

Lexus Minority Report Sports Car
余談ですが、プジョーのコンセプトカーMetromorphはまるでこの映画で使われていた車を思わせます♡

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