劇場版総集編メイドインアビス 旅立ちの夜明け・放浪する黄昏

MADE IN ABYSS
2019
「劇場版総集編メイドインアビス」の前編・後編である。
(昨日、この二編を続けて観た。感想は絶句して書けなかった)。
小島正幸 監督
つくしあきひと 原作
倉田英之、小柳啓伍 脚本
Kevin Penkin 音楽
富田美憂、、、リコ(「赤笛」、探窟家見習い)
伊瀬茉莉也、、、レグ(少年型ロボット、記憶を失っている)
井澤詩織、、、ナナチ(成れ果て)
大原さやか、、、オーゼン(「白笛」の探窟家、二層目の「監視基地」に暮らす)
豊崎愛生、、、マルルク(「蒼笛」の小柄な少年、オーゼンの弟子)
坂本真綾、、、ライザ(リコの母、「白笛」の伝説的探窟家)
森川智之、、、ボンドルド(「白笛」、イドフロントで研究を進める)
更なる続編『メイドインアビス 深き魂の黎明』は、まだ出て間もなく、AmazonPrimeになっていないので、その時期になったら観るつもり。まだまだ続く壮大な物語なのだ。
地底~縦穴という着想が良い。深海以外に、ロマンが残っている場所と謂えば、もう地下しかないだろう。しかしファンタジーというには苛烈すぎる(ダークファンタジーと謂っても甘い)。
つまり宮崎駿的世界からは程遠い。
残酷でリアリスティックな圧倒的な世界観に惹き込まれる。
ジュール・ベルヌをはじめから超えていた。
こちらは、火山の火口からではなく、アビスという穴から入って行く。
1900年前に南ベオルスカの孤島で発見された直径約1000メートル、深さ不明の縦穴である。
下に降りたら最後、戻るには「上昇負荷」に苦しむことになる。上昇負荷とはアビスの呪いであるらしい。
お宝~遺物を探し当てたとしても持って上がることは極めて困難となるのだ。
アビスは特異な生態系を持ち、それらは宙を舞い極めて凶暴で破壊力のあるものが多く人にとっては大変危険な場所である。
(クリーチャーたちの造形は適確であると思う)。
知性を持つ者もいたようで、今の人には作れない(人工物である)「遺物」があちこちで見つかる。
穴の中の空間は横に大変広大に広がり、そこには特有の力場が生じている。
地上とは時間の流れも変わる。
猶、この広大な縦穴を探検する者を「探窟家」と呼ぶ。
「探窟家」はその経験と技量~能力により、階級がある。
深界一層の深度450mまで降りる「赤笛」という見習いに始まり、深界二層まで可能な「蒼笛」、深界四層まで可能な師範代の「月笛」、深界五層まで可能な達人の「黒笛」、深度制限のない英雄の「白笛」までに分かれる。
彼らは帰還する為、上に戻ろうとするが、その際に「アビスの呪い」とも呼ばれる恐ろしく身体に作用する「上昇負荷」がかかる。これには「祝福」という効果も見られ新たな感覚の獲得や肉体の強化も図られる場合もあるという。
主人公リコは大穴の街オースの西地区にあるベルチェロ孤児院で生活をしている。
探窟家の築いた拠点が巨大化し、街となったという。
彼女の母は偉大な白笛の探窟家であるが、行方知れずである為、孤児として、ここで過ごしている。
まずは孤児たちの遺物を探す競争で始まる。それで小遣い稼ぎもしている様子。
そしてある日、リコの母の白笛と彼女からとみられる手紙も見つかる。
そこにはアビスで待っていると、、、。
この笛と手紙と以前からの強い好奇心~冒険心からリコは、アビスの底まで行く決心を固める。
友達からは止められるが、命を助けられた少年型ロボットのレグと共に、孤児院を抜け出し、アビスの下を目指す。
ここでは、その動機を憧れと言っていた。
縦穴の構造と深度は下のように段階に分けられている。
深界一層 : アビスの淵
1350mまでの深度。上昇負荷は軽い目まいと吐き気。
深界二層 : 誘いの森
1350mから2600mの深度。上昇負荷は重い吐き気と頭痛、末端の痺れ。
深界三層 : 大断層
2600mから7000mの深度。上記に加え、上昇負荷は平衡感覚に異常をきたし、幻覚や幻聴を見る。
深界四層 : 巨人の盃
7000mから12000mの深度。上昇負荷は全身に走る激痛と、穴という穴からの流血。「ナナチハウス」はこの深界にある。
深界五層 : なきがらの海
12000mから13000mの深度。上昇負荷は全感覚の喪失と、それに伴う意識混濁、自傷行為。白笛はここまで可能。イドフロント(前線基地)がある。
深界六層 : 還らずの都
13000mから15500mの深度。上昇負荷は人間性の喪失もしくは死。六層からの上昇負荷によって異形と化した者は「成れ果て」と呼ばれる。ナナチと彼のパートナーのミーティーがこの深界でボンドルドによって実験材料に使われる。
深界七層 : 最果ての渦
15500m以深の深度。上昇負荷は確実な死。
深界極点 : 奈落の底
20000m以深の深度。
設定は荒唐無稽だが、性的な部分やグロテスクなシーンも漏らさず描かれており大変リアリスティックである。
下に降りるだけではなく同時にキャラの掘り下げも充分になされてゆく。
上昇負荷という疑似科学的な呪いも絶妙だ。
異界感を出すのに効果充分である。が、日常の異界感を逆照射するところでもある。
「度し難い」という言葉がレグの癖である。オーゼンも使っていた。
癖の強い登場人物たちと凶暴なクリーチャーに加え上昇負荷などの過酷な環境~呪いである。
激しい闘いや大きな怪我の思い切った処置や究極の選択などを強いられる峻烈な冒険となってゆく。
まだ解かれぬ謎もあり、、。
憧れだけで、自分の腕を間接で外すのではなく途中で折るなどして、冒険をしとおせるか、、、。
リコの場合尊敬する母に遭うという目的もあろうが。
正体不明のロボット?レグだが、どうやらアビスの底からやって来た(遺物)らしい。
リコもアビスのなかで生まれて間もなく、遺物である「呪い除けの籠」(上昇負荷から守る籠)に入れられライザに頼まれたオーゼンが地上まで運んでくれたという。それでも目に呪いは受けてしまったが。
何とリコはオーゼンがライザから取り上げたときには、すでに死んでいたが呪い除けの籠に入れたら動き出したという。とすればこの籠の利用価値はかなり大きくはないか?この過酷極まりない世界において。
色々と分からぬことも多いが、リコとレグは厳しい経験を通し、アビスの中で出逢ったナナチやオーゼンたちからも多くを学ぶことで、知恵と逞しさは増してゆく。
最も大きなレグにとっての経験は、死によってしか解放されない存在を目の当たりにし、親友となったそのパートナーから、彼女の尊厳死を頼まれ実行したことだ。
知性も言葉も失い、自殺も殺すこともかなわず、不死の身体となってしまった呪われたミーティーを、レグはナナチに頼まれ、火葬砲で滅却して魂を解放する。
こんな極限的経験は、地上で子供が出来る事とは通常思えないが、、、。
地下世界と呪い、このフィルター~パラダイムをかけると自ずと見えて来ることでもあろうか。
時間も流れを変え~固有時を変えて。
実際、地上の日常界においても、アビスは至る所に存在すると謂える。
わたしにとっても、見えないものことを見えるようにする重要さを痛感する昨今なのだ。
理不尽な障害を乗り越えて成長する子供たちの通過儀礼にもとれるが、、、。
だとすれば凄いイニシエーションだ。

今回は具体的なこと~シーンはほとんど書いていない。


AmazonPrimeで観るのがお得か。
次女のおススメで観てみたが、アニメの説得力はやはり凄いものがある。
二次元インパクトだ。