私はヒーローそれともヴィラン?よみがえれ勝連城

2018年
杉山嘉一 監督・脚本
福田沙紀、、、比嘉華那(セレクトショップ社長)
金子昇、、、萩村栄介
大城優紀、、、飯塚美鈴(華那の親友)
伊敷幸一、、、平良龍一(華那の元カレ。今は美鈴の彼氏)
城間やよい、、、比嘉知子(華那の母親)
嘉手納良智、、、上原康彦
上原千果、、、井下幸子(華那によって心を開いた子)
この題、何とかならぬか、、、。
沖縄が舞台。勝連城跡からの見事なロケーションには魅せられる。
行ってみたいものだ。
「阿麻和利(あまわり)」という按司に纏わる伝説?(彼は悲劇の英雄なのか、卑怯者なのか)を絡め、「人は物事を見たいように見る」その認識の相対性についてヒロインたちが実感して行くドラマ。
ドキュメンタリータッチの思いの他、良い映画であった。
(子役の動かし方で取って付けたようなわざとらしい部分があるが、概ねリアリティある流れであった)。

沖縄県の世界遺産である勝連城跡に、ボランティアで小学生に色塗りをしてもらった絵で勝連城を復元し、ライトアップして祝うプロジェクトを毎年行っているという。
東京拠点にネット通販セレクトショップを展開している比嘉華那が8年ぶりに親友の飯塚美鈴に会いに帰郷し、美鈴の関わっている勝連城復元プロジェクトを行きがかり上、手伝うことになる。
そこには8年前に分かれた萩村栄介もメンバーとして参加していた。
しかも今は飯塚美鈴と付き合っていた。

華那は地域のボランティアの人々との触れ合いの中で、モノの見方、捉え方の違いからくるコミュニケーションの軋轢を経験し、それが東京の自分の会社で経験した社員との間の確執に重なって来る。
確かに華那は、栄介の謂うように、自分が良いと思い立ったことを強引に押し通してしまう。
その案自体が良いとか悪いではなく、構成メンバーとのコンセンサスを度外視して実行に移してしまうことが如何に独善的で専制的であることに気づいて来なかったのだ。
その案をロードマップ上では今夜実行することが最善であったとしても、構成員の健康状態を鑑みれば一晩休み翌朝に行う方が良い場合もある。誰もがそちらに傾いていても彼女は妥協しないのだ。そして皆が帰った後で、自分独りでその作業をやってしまう。翌朝現れたリーダーがそれを知る。彼は彼女の頑張りを労い礼は述べるが、問題点を認識する。美鈴もその朝早く来てその実情を知り、顔を強張らせる。それまでずっと華那に合わせにこやかな表情を保って来た彼女であったが。
(華那の見たくない部分をまた確認してしまった、彼女にとってフラッシュバックに近いものであったか)。

美鈴が華那に対して胸に深くに抱いていた思いが爆発する。
華那の純粋で真直ぐだが、他者に対する感覚がまるでないこと~他者に対する想像力の欠如が、相変わらず露呈していた。
此処に対し栄介は遭った頭初から不快感を露わにしていた。これが元で8年前に分かれたようだ。
(体育館で仲間から外れて制作を独りで頑なにしていた子に勝負を仕掛けて真剣に競い勝ったところなどは、自分に正面から関わってくれたことで彼女が周囲の人に対して心を初めて開く契機となった。これは華那の良い面であり人を惹き付ける点でもある。この後、ずっとこの子は華那のことを見守り続ける)。
しかしこれまではいつも華那に受け身で言いなりになっていた美鈴が本心を晒し、怒りを思い切りぶつけてきたことは大きい。
あなたは何でも自分の思い通りにしてしまい、わたしを見下していると。
「もうあなたになんかに逢いたくなかった」とまで言われる。
親友と思っていた人に此処まで言われては、予定を早めて帰るしかなかった。
東京には自分に反旗を翻した社員たちがいるのだ。そちらの解決も図らなければならない。

ボランティアの人々の心~受容性の広さや優しさが際立っていた。
下手をすると嘘くさいものに見える危うさがあるが、ここでは彼らがそうする根拠がある為、不自然さのない爽やかさがある。
他者の為に働くことで、自分が見出されたというのだ。
自分の起こした事業もお陰で成功したと。
自分の陥っている状況をボランティアのチーフに話した結果、彼らの取り計らいで華那は夜の勝連城のモニュメント前で美鈴と対峙することになる。
東京に発つ前の最後の晩だ。
彼女は、これまで自分が美鈴の他者性に関して全く想いを及ばすことの無かった事実を深く詫びる。
全て自分本位で彼女をいいように扱い操ってしまったのだ。
これは彼女自身の大きな問題点で、自分の会社の社員にも同等の接し方しか出来なかった結果が会社の行き詰まりを招いていた。
そして美鈴にとっても、自分のなかのアンビバレントな複雑な蟠りを晒したことで吹っ切れ、これからは主体的に華那と同等の立場で関わってゆく事が出来る、彼女にとっても飛躍の機会ともなった。
これはアリストテレスの述べる真の意味でのフィリアではないか。

この機を見て、心優しいボランティアたちが、一日早い勝連城ライト・アップをしてくれる。
華那と美鈴は仲直りをしたのではなく、完全に新たなフェーズに入ったと謂える。
翌日のイベント当日で実況ビデオで華那に呼びかける美鈴はとても活き活きして溌溂としている。
これまでの負い目を微塵も感じさせるところがない。
副社長からの電話では社長の謂うことの正当性は認めるがやはりその降ろし方が違うという社員の見解であるという。
それを受けて華那は東京に戻って行くが、美鈴との関係のように絆が更新され更に発展することがもう分かっているようだ。
ともかく沖縄の綺麗な部分がたっぷりと見られた。
そう言えば方言もあまり出ず、観易い映画だ。
キャストは、とても良かった。福田沙紀と大城優紀との両者の変化の流れが自然であった。

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