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GOMA28

Author:GOMA28
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私はゴースト

I Am a Ghost001


I Am a Ghost
2012年
アメリカ

H・P・メンドーサ監督・脚本・撮影・編集・音楽


アンナ・イシダ、、、エミリー(幽霊)
ジーニー・バロガ、、、シルヴィア(霊媒師)
リック・バーカート、、、青頃い大男(凶悪な人格)


これもインディーズ系か。AmazonPrimeでなければ見られないものの一つ(あることも知らずにいる類のものだろう)。
基本的に出て来るのは、エミリーと終盤に意表を突いて飛び出て来る男のみである。
霊媒師はエミリーには見えないため、声の出演であった。
そして舞台はちょっと古風なセンスの良い家の中のみである。
(究極の低予算映画か、、、しかし安っぽさはない。コンセプトの勝利であろう)。

死んだことに気づかないで地縛霊になっているエミリーを成仏させようとシルヴィアという霊媒師が現在の家主に雇われてやってくる。
霊であるエミリーを視座~主体に展開するが、彼女にはシルヴィアが見えない。
他の人間もどうやら視界にはないようだ。
シルヴィアとは声だけ聴こえて、対話をする。
(最初はエミリーの方が、シルヴィアを幽霊だと思ってびっくりする)。
淡々と日常を反復するエミリーであるが、死んで霊になっても成仏できずに生前の習慣を(自傷行為も含め)反復している。
目玉焼きを二つ焼いて、買い物に出かけたような気分になったり、掃除をしたり、、、ナイフを手に刺したり。
生前の経験の残滓に浸っている。全てが記憶の追体験に過ぎない。そんな時間に内閉されているのだ。
特に害のある幽霊にも見えないが、家人としては突然、箒やドアや調理器具が動いたりしたら気味悪いのは当然。
シルヴィアは彼女にやっと自分が死んでいることを納得させる(母の唄っていた歌を聴かせたり「わたしは幽霊」と何度も唱えさせて)。

I Am a Ghost002

エミリーの思い出すところでは、まず自分が凶悪な大男に襲われ絨毯の上でめった刺しにされて殺されたというもの。
しかし、それでは不十分なのだ。いや不正確なのだった。
この因果を解かないと彼女はいつまでも、この状態のままだとシルヴィアは説く。
繰り返し出て来る箪笥から取り出してはニンマリしながら眺める古い写真と人形は何であるのか、、、。
これについては、何のヒントもない。

シルヴィアによれば、普通の幽霊は自分が死んだことに気づきさえすれば成仏するというが、エミリーの場合、それでは用がたりないのだ。
(恐らく、便宜的に訳では「成仏」を使っているが、例えキリスト教徒でないにしても、アメリカ人で「成仏」というには、仏教徒に回心したとかでなければ、おかしい。役者は日本系にも見え何とも言えないが、、、微妙であるが些細なことではある)。
彼女は、母に言わせれば悪霊に憑りつかれていたのであり、自分の記憶が飛びその間、妹の首を絞めているようなことが続いたという。父は悪魔祓いを試みたが叶わず、母は天井裏の部屋で折檻もしたが事態に変化がない為、妹と共に家を去り、彼女は捨てられてしまったのだ。
「成仏ってどういうもの?」と聞かれシルヴィアは「光に包まれて昇天すること」と答える。

I Am a Ghost004

映像もひたすらシーンの反復が続く。
それがエミリーの意識?の進展に伴い不穏な気配の高まりとともに少しづつ変容して(角度が変わって)ゆく。
まるでミニマルミュージックみたいに。
この辺は厳密に計算されている。
そしてエミリーは、たまらず外に出ようとしてドアを開けた瞬間、悍ましい無を目の当たりにし叫び声をあげドアを閉める。
家のなかでは、これまでのルーチンを続ける自分の様々な残滓が浮かんでは次々に消えてゆく、、、。
(シルビアによれば因果が解け、生前の記憶を客観視出来る事態となったという)。
エミリーはこのままだと自分が殺されるシーンも目の当たりにしなければならないことに狼狽える。
しかし彼女は自殺したのだとシルヴィアから告げられる。
霊媒師の調べた結果、エミリーは解離性同一性障害であり、多重人格症なのだった。
シルビアによれば、エミリーの成仏の為には「二つの魂を成仏させる」必要があるのだという。
そのエミリーの記憶にない影の人格、謂わば彼女を不幸に陥れたその人格を見つけ出さなければならない。

I Am a Ghost003

終盤の怒涛の展開には驚く。
反復がひたすら続き過飽和状態になったところに、一気に相転換が起きたかのよう。
シルビアとの交信が途絶えたかに思った瞬間。
屋根裏部屋から青白い大男が突然降りてきて、凄まじい形相でエミリーに襲い掛かる。これ怖い(爆。

それが、エミリーにただならぬ恨みを抱いていることは確か。
エミリーは別人格で知らなかったが、この人格が監禁され母からの折檻をずっと受けて来たのだ。
家中を逃げ惑い、何度もシルビアに助けを乞うエミリー。
その怪物は、エミリーを亡き者にして自分がその体を乗っ取ろうと目論んでいたのだ。
不穏な静けさの中で禍々しい記憶の残響が続く、、、。
そして例の絨毯の上でその凶暴な男に何度も体を刺されることとなった。
そこから離脱してその様子をまざまざと窺うエミリー(の魂)。
だが、その様はエミリー自身が自分を刺し殺す場面へと変容してゆく。

I Am a Ghost005

それを傍らで見ていた男の表情から凶悪さが消え、慄きに変わってゆく。
シルビアの声で「死者よ立ち去れ。光へと導かれよ」と何度も繰り返される。
だが、何処にも光はなく、ただの暗闇より遥かに恐ろしい虚無が覆い迫りくるだけ。
自分を刺し続ける姿を凝視しながらエミリーはただ「わたしは幽霊」と唱え続ける。



多重人格で、片方(の魂)の因果を解くだけでは昇天できないなどという隙間を突いたホラー?である。
しかもその際に、光など全くなく悍ましい虚無の闇が包み込んでくるのだ。
これ程、幽霊自身が怖がる映画を観たことがない。
欧米にとっては極めてラディカルで斬新なショックではないか。

独りで全部やってしまった監督である。とても興味を持った。アイデアもあり、次作も期待したい。
(ホドロフスキーのDUNEみたいにハリウッドもしり込みするような法外な製作費を使わなくても意識を拡張させるような映画は可能だと思った)。












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