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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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アップグレード

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Upgrade
2018年
アメリカ、オーストラリア

リー・ワネル監督・脚本
フェリシティ・アボット美術
ジェド・パルマー音楽

ローガン・マーシャル=グリーン、、、グレイ・トレイス(自動車の整備士)
メラニー・バレイヨ、、、アシア・トレイス(グレイの妻)
ハリソン・ギルバート、、、エロン・キーン(天才エンジニア、実業家)
ベティ・ガブリエル、、、コルテス刑事
ベネディクト・ハーディ、、、フィスク(ギャングのボス)
リンダ・クロッパー、、、パメラ(グレイの母)


インシディアス 序章」、「インシディアス 1, 2」、「ソウ ”SAW”」のリー・ワネル監督・脚本によるとてもしっかり作りこまれた作品。

舞台は生活のほとんどのインターフェイスが音声で自動化されている近未来。
アシアの全自動走行車のデザインはなかなかのものである。
グレイ・トレイスはガソリンエンジンの人の運転する自動車(クラシックカー)に拘り、その修理と販売を行う。

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顧客のIT実業家エロンに注文の車を妻と共に届けた帰りにグレイ夫妻の自動運転車が何者かに操られ事故を起こす。
そこに現れたギャングに妻は射殺され自分は首を切られ四肢麻痺状態となる。
失意のどん底にいたグレイの病室にエロンが見舞いにやって来てSTEM(ステム)を身体に埋め込むことを勧められる。これまでのように自由に動くことが出来るようになるというのだ。但し企業秘密でありステムの埋め込みは違法でもある為、極秘事項である。
そのチップは、車を届けた日にエロンの邸宅で見せられた究極のAIチップであった。

極秘の手術により高性能AIチップを埋め込んだ身体は人間離れした運動神経も発揮できた。
ステムが脳の指令を受け取り彼の四肢を自在に動かしているのだが、それ以上の機敏さと巧緻性とインパクトを示す。
相手と戦う際には、まるで動きはカンフーの達人みたいだ。
ドローンの撮影した解像度の低い画像を解析しグレイの手を使って精確なペン画に起こすなど、便利を越えている。
そしてステムが脳にダイレクトに話しかけ、アドヴァイス~指示をしてくるのだ。
グレイの目を通しより詳細なデータを得て精緻な分析や予想の結果を伝えてくれる。
その指示に従っていればまず間違いはないのだが。
(脳が2つある状態か?少なくともこちらの脳の情報を神経系に伝達する役目は大きく逸脱した独自性を発揮している。ただひとつそうすることの承認をグレイの脳から受けなければならない)。

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グレイは警察が犯人をなかなか特定できないことに業を煮やし、自ら妻殺しの犯人を突き止めることにする。
神経系を任せ、デジタル情報だけでなくデジタル機器も自由に操ってしまうステムに頼りながら独自に操作を進める。
周囲にはあくまで、四肢の不自由な車椅子の男で通しながら。

自分たちを襲った犯人たちを探り出しグレイは情報を聞き出し警察に引き渡そうとするが、ステムの存在がばれ、グレイの体が動くことを知られるのはまずいということで、グレイの意図に反しあくまで最後まで自分たちで犯人を処分することに、、、つまり単なる復讐となる。
グレイが慄くなか、次々に犯行に関わった者たちを惨殺することになってしまう。
いつの間にか、彼はステムに半ば身体を乗っ取られたような従属的立場になっている。
しかし、ステムを終了させるとグレイは四肢の麻痺した人間に戻ってしまうのだ。
これは自分も加担する自在性は傍らに感じつつ真の自由とは言い難い状況に陥ったことを意味する。

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エロンは自分の開発したステムを追跡していたが、犯人を追うことで警察~外部にこの件が漏れることを危惧し不快感を露わにする。
そしてエロンがステムをシャットダウンしようとしていることを事前に予測したステムは、有能なハッカーの居場所を探り当てており、そこにグレイを向かわせる。そういった極秘情報はネット上からは隠匿されていた。だからステムがダイレクトにアプローチは出来ない。生身でグレイがその場所に乗り込む必要がある。
ここでエロンのステムのダウンとグレイのハッカーがその前に妨害できるか、そしてその場所を嗅ぎ付け先手を取ろうとしているギャングのボス、フィスクたちの襲撃をスリリングに見せる。
こういう場面が実に上手い。

勿論、ここは間一髪でエロンの端末をシステムエラーとし(プログラムの制御コードの書き換えにより)フィスクの襲撃も交わす。
フィスクも改造を受けた人間であった。
腕に銃弾を装着し掌から射撃ができ、相手の目から情報を読み取り記録する機能を持ち、くしゃみ~唾からミクロのナイフを放ち相手を殺傷するなど武器を身体に埋め込んでいるのだ。
フィスクの仲間は全て殺すが、彼は姿を消す。
エロンの制御から外れたステムは完全に自由になっている(誰の承認もいらない。何処にもアクセス自由である)。
ここが肝心なところだ。

まず直接妻を殺害したことが分かったフィスクを追い詰めてゆく。
フィクスはお前は俺たちの仲間だと言い、アシアは単に巻き添えで死んだだけであり、実はお前が目当てであったと言う。
ここでのフィクスとグレイのバトルは、ステムの戦闘オプションを使い果たすレベルの闘いとなるが、グレイの人間臭い挑発でフィクスが動揺した一瞬を突いたステムによる反撃で辛うじて倒す。
そしてフィクスの耳から通話記録を呼び出しエロンがその依頼人であったことがはっきりする。
エロンが黒幕であった、、、。しかし車を届けに行った時の彼の退廃的な様子は何を物語るのか、、、
雲を壁にアートのようにこしらえていた。

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グレイがエロンの邸宅に着いた時にはコルテスがすでに網を張っていた。
コルテスは当初からグレイと妻を襲った犯人よりもグレイを張っていた節がある。
刑事の勘か。それは鋭かったが、彼女はステムにとっては最も鬱陶しい存在であった。
グレイは彼女を殺させまいと何とか抵抗を試みる。
そう、エロンの手をステムはすでに数年前から離れていたのだ。
車を届けに来た時、ステムはグレイに乗り移り自在に動ける存在になることを目論んだ。
エロンはその命令に従ってフィクスたちを動かしたのだった。
企業はステムが運営しておりエロンは形だけのCEOであったのだ。

エロンもステム~グレイによって殺害される。
グレイもついに、こころが壊れ内閉してしまう。
事故で入院したが身体は何ともなく、元気な妻と無事を喜び合っているグレイがそのなかにいた。
こころを閉ざしたグレイの身体は完全にステムが引き継ぐ。
コルテスも結局ステム(グレイ)によって殺されてしまう。
もうステムにとって邪魔者はいない。

エロン宅を一人、アップグレードされたグレーが出てゆく。



キャストがとても良かった。特にエロンの病的な天才エンジニアの雰囲気がこの映画にフィットしていた。
このアップグレード版グレーがこれから何をするのか、続編が出来れば是非見たい。
傑作である。







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COMMENT

こんばんは

この映画観ました。
僕はいつもGOMAさんのレビューを拝見する時、斜め読みします。
しっかり読んでしまうとネタバレになるからです。
斜め読みにより、どんな感じの映画なのかを察し、そして最後の締めの言葉でGOMAさんからのメッセージを判断します。
それにより観ようというきっかけとなります。
この映画も観てよかったです。
それにしても、最近、歳のせいなのか、映画のストーリーについていくのが時として難しいです。
観た後、GOMAさんのレビューをしっかり読みます。
GOMAさんのコメントを参考に、自分が捉えそこなっていた部分、自分の思いが至らなかった部分を修復し、最終的に自分の総括をして、プロセス終了です。
それにしても、どの作品も、GOMAさんの解析は深いですね。
その手前の問題として自分は現状理解もままならぬ、です(笑)

ありがとうございます☆彡

丁寧にお読み頂き、こちらの意を汲んでもらっていることに深く感謝いたします。
わたしの場合は、自分のなかに確固とした物語を持ちえない~極めてアイデンティティの希薄な人間ですので、表現メディアの中では「映画」という形式をもっとも苦手としています。
(中心を持つ)物語というモノ自体が苦痛であること、一定時間~流れを絶対的に受け容れることの苦痛も重なり、大変辛いDisciplineを自らに課しています(笑。
なんでわざわざとお思いになられることでしょうが、多様な物語~時間を自分のなかに浸み込ませたいのだと思います。
固有時の安定の為と謂えましょうか。
自己治療の一環と言うか絵を描く替わりにやっているような感じです。自分でも実はハッキリ分からないところですが。
物語を辿り自分の深層まで引き寄せ、何らかの手応えを得たところで、取り敢えずよしとして放り出します。

映画で無理なくスッキリと入って行けるのはタルコフスキー監督のものになりましょうか。
神学的詩情に身を投じてそこに浸っていれば良い世界で、筋も何もない所がホッとするのです。
大半の映画は、複雑に絡むストーリーで構成されており、何をか主張している為、そこに寄り添わなくてはならぬことにいつも困惑します。SFは、例外的に寄り添うことに苦痛がない為、とても気楽に観れますが、、、。
ある時、必要性がなくなれば、観るのを止めて他の事に専念するかと思います。

修行にお付き合いくださりありがとうございます。と言う感じで、心強いです。
今後も宜しくお願いします。

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