ショート・ターム

SHORT TERM 12
2013年
アメリカ
デスティン・ダニエル・クレットン監督
ブリー・ラーソン、、、グレイス(ケアマネージャー)
ジョン・ギャラガー・Jr、、、メイソン(同僚、グレイスの恋人)
ケイトリン・ディーヴァー、、、ジェイデン(新たな入所者)
キース・スタンフィールド、、、マーカス(18歳になって外に出る少年)
ラミ・マレック、、、ネイト(新人スタッフ)
ラミ・マレックこれはフレディ・マーキュリーではないか。久しぶり。「ボヘミアン・ラプソディ」で主役を張る5年前か、、、。
「SHORT TERM 12」は、親の虐待から子供を保護する施設の名だ。
コミュニケーション障害による様々な軋轢や薬、自傷行為、脱走、喧嘩など常に持ち上がる。
個々に抱える問題は実に根深い。フラッシュバックもあり、発作的に突発的に彼らは突っ走ってゆく。
大変せわしなく、気の抜けない職場である。
そこで過ごす、未成年者と職員との関係が細やかに描かれてゆく。
外からやって来る子供や18で出てゆかなければならない子供(しかし何処へ誰の元に還れと言うのか)。
それらの子供の抱える非常に重く意識化~言語化しきれない深い憤りや不安や恐怖が様々な形で野放図に噴出する。
その度に、対応を迫られる職員であるが、自殺(未遂)などは流石に、こたえる。

そこに勤める職員自身も問題を胸の奥にしまい込んだまま来た場合もあろう。
隠蔽して先送りして生きて来たのかも知れない。
しかし、時に関わっている子の抱え持つ苦悩~歴史の総体に自らの内奥を逆照射されることで、ふいに自分の抱え持った未解決の巨大な障害~癒されぬ未だ生々しい傷に直面させられてしまう。
わたしは、よく分かる。自分もそれを抱え持つからだ。
この世に「親」ほど厄介なものはない。
わたしにとって最も不要な(禍々しい)存在は親である。この流れは完全に断ち切らなければならない。

現場スタッフと事務・管理側との入所者に対する認識の乖離の問題も捉えられている。
実際、こういう関係における親子の問題を客観的に捉えることはとても難しい。
しかし親元を逃れてやって来た子供たちだ。親に還すことは大変危険な事であり慎重に当たらなくてはならない。
家とは他者からはとても見え難く入り難い場なのだ。だから強制力を持った優れた専門家が必要となる。
被害者は年端もゆかぬ子供であるため猶更だ。
子供は恐怖と自分の立場を対象化出来ない~言語化出来ないことから有効なサインも発せられない。
彼の身体性~総体から問題を読み取る眼力は、余程の直覚力と洞察力に加え経験知を必要とする。

実は、最初期の~幼年期の、彼こそが問題となるはずなのだ。
この事態はそれこそ超越的存在でも介在しなければどうにも明かされない、謂わば運命としか言えない領域にある。
誰にとっても、無意識の深くを対流しながら潜行し固有の磁場を発して行く。
そこに隕石のようにいや、プレート移動のような強力な衝撃を与えられると内奥の対流が滞留し一気にスーパー・プルームが発生し突き上げる。
押し留める方向性では、勿論どうにもならない。
解決はおろか解消も不可能。
この世にあるリソースでどうにかなるような甘いものではない。

ただ走り去るだけ、、、

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