フェノミナ インテグラルハード完全版

Phenomena
1987年
イタリア
ダリオ・アルジェント監督・脚本
フランコ・フェリーニ脚本
ゴブリン、その他ゲスト音楽
ジェニファー・コネリー、、、ジェニファー・コルビノ(映画俳優を父に持つ少女、アメリカ人)
ダリア・ニコロディ、、、フラウ・ブルックナー(ジェニファーの付き添いの教師)
ダリラ・ディ・ラザーロ、、、校長
パトリック・ボーショー、、、ルドルフ・ガイガー(殺人課の警部)
ドナルド・プレザンス、、、ジョン・マクレガー(昆虫学者)
フィオーレ・アルジェント、、、ベラ・グランド(デンマークからの旅行客)
フェデリカ・マストロヤンニ、、、ソフィ(ジェニファーのルームメイト、フランス人)
タンガ、、、インガ(マクレガー教授の助手のチンパンジー)
1995年に発表された”Phenomena”に4分加えた完全版らしい。
何故かホラー繋がりから、又もやダリオ・アルジェント監督の作品を見ることとなる、、、。
(もう充分)。
微妙だが、昨日の映画よりずっと見易い。
主役が違うところが大きい。ジェニファー・コネリーの存在感でかなり救われる。

ダリオ・アルジェント監督の娘さんも冒頭で、この映画最初の犠牲者をたっぷりと演じている。
女優として無難に役をこなして掴みはOKというところで、首を切り落とされて、お疲れ様。
しかし欧米の人は、鍵がかかっていなければ普通に他人の家にズカズカ入ってしまうモノなのか。いつも映画を見るたびに思うことだが。
そのせいで、中にいた殺人鬼に追い回され鎖で首を絞められ何とか逃れたと思ったら鋭いハサミで刺され最後には首を切り落とされる羽目に。ガラスの破片が顔に突き刺さって落ちてゆく。かなりスプラッターな意気込みを感じる。
腐った頭蓋骨に無数のウジが這っているところなど、なかなかのものだ。
この街では少女が何人も行方不明となる事件が続いており、未だ死体の見つからない誘拐殺人事件を警察が探っているところである。(いや、先の娘さんの頭蓋骨だけは、見つかっていた)。

有名映画俳優を父に持つジェニファーは、リヒャルト・ワーグナー女学院に転入して来た。
ジェニファー・コルビノを演じるジェニファー・コネリーが蟲と異様に仲の良い少女という設定で好演している。
蟲との共演~交流は、サルより難しいと思うが、接触も自然で上手くやっていた。
偶然か蟲の導きか、彼女は昆虫学者のマクレガー博士と仲良くなる。
彼は彼女に昆虫と特別の関係が結べる能力を確認する。
彼女は暫くなかった夢遊病をこの地で発病してしまう。マクレガー博士の謂うにはフェーン現象が影響しているとのこと。
風が吹くと虫が増え花が萌え人が狂う、、、ここはスイスの魔境なのだそうだ。
蟲~特に蠅と意思疎通が出来るみたいで、ピンチを救われるシーンはあるも、それほど昆虫の能力を利用した探索や警戒が出来ていたとは思えない。博士曰く、サルファゴスを魔法の杖として使ってみなさい、、、。博士の蟲の蘊蓄は面白かった。
死体にだけ付くというサルファゴスの成虫を籠に入れて、バスに乗り犯人捜しに行くところなど面白かったが。
もっとサルファゴスの活躍や連係プレイなど観てみたかった。
難しいとは思うが、充分期待させた割には、犯人宅の割り出しに役立ったくらいか。

ジェニファー・コネリーは、これが最初の主演映画のようで、14歳ながら過酷な演技を強いられ健闘しているが、まだまだぎこちない。
だが、その頑張りを演出がかなり白けさせている。音楽もそうだが、彼女が崖を転げ落ちようと、窓から下の木に落下しようと、汚い沼に入ろうと、ウジが無数に湧いているプールに落ちようと、顔も身体も衣服も汚れていないのだ。
この不自然さには、何なんだという反感すら覚える。
とりあえずの説明的な汚れを頬に一筆入れて、腕に傷跡を数本くらい入れておいても良かろうに、、、。
彼女が悪夢に魘され、そのまま夢遊病で歩き出しているのか、夢の中に留まり続けているのかもあやふやにする演出である。
相変わらず、BGMも演出全般が大袈裟でおどろおどろしいく白ける。何でこんなに煩くするのか。センスを疑う。
しかし今回の作品では、虫の接写や動きの変化や風の気配などをストーリーの流れに組み込んでおり、その点で観るべきものがある。
サルの演技も上手い。表情すら感じる程に。

理解者であるルームメイトと博士も惨殺され、ジェニファーは追い詰められる。
逃げようとするが、父の代理人からの送金がなく身動きできない。
だが不思議に誰が犯人なのかとか、彼女の身の危険を心配したりするような気持が湧いてこない。
いくら周りの人間が殺されようが、次はどう来るのかとかいう期待感はない。彼女が特異点であることは明白であるし、犯人の存在感がどうにも薄く物語に緊迫感が無いこともある。ヒッチコックみたいに物語半ばでヒロインと思っていたキーパーソンがあっさり殺されるような緊張が決定的に無いのだ。
伏線や大きな流れに後で絡んでくる傍流の存在が無く、いきなりタイミングよく現れるべきものが出て来ることが多く何ともチープなご都合主義として目立つ。特に何でその場所を特定出来たのかがはっきり分からない。行き当たりばったりで偶然上手く繋がっているような。

彼女は、校長(軍隊の将校みたいな女性)から悪魔扱いされ邪魔者として精神病院に送られかけるが、ベルゼブブ (Beelzebub) は確かに蠅の王である。
きっとそこを意識して、彼女の窮地を救う昆虫を蠅としたのか。
最初は蛍が出て来て彼女の案内をした時はホッとしたが、その後は、肉食昆虫のサルファゴスに次いで蠅にウジばかりである。
汚れはないが、しょっちゅう虫が身体に纏わりついていて、大変であったと思う。
今ならVFXでかわすところであろうが。
結局、ブルックナーの年端も行かぬ息子の犯行であったのだが、その息子を守るために母親も邪魔となる者を殺害していた。
(ブルックナー自身が暴露しなくても分からせる流れを作ってもよいか)。
今回も非力な小さな子供や女が犯人であった。意外性を突きたいのだろうが、中学生の女子なら例え顔が怖くても上手くかわせるレベルではないか。
息子が鏡が嫌いで家じゅうの鏡に覆いを付けていたが、確かにプレデターの元型のようであった。
その為、通常の関係が持てず、可愛らしい女子を殺害しては、自分の近くにしまっておいたというのか。
死体はウジだらけで、きっと凄まじい悪臭立ち込める不衛生な環境であったはずだが、画面の世界は完全脱臭・滅菌されている。
その為、綺麗な画像が現出されていてこちらも入り込みやすいかというと、中にはどうにも入れない世界である。
リアルかどうかではなく、荒唐無稽な世界でも何でも良いが、そのコンテクストの中でのしっくりした法則性は欲しい。

ジェニファーを助けに来た代理人の首を一撃で切り落とす犯人の親である女教師ブルックナーが、何故あの馬乗り体勢で彼女の首には、ダメージを与えられなかったのか?
その後、サルに助けられたジェニファーの首にはかすり傷ひとつ付いていない。
サルもよくあのタイミングで武器のカミソリを持参して来たものだ。
その辺もテレパシーで繋がっていたのか、、、。
サルとは繋がりは無かったはず。
蠅ならその時でも来てもおかしくないが、、、。


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