パラサイト 半地下の家族 -2

Parasite
2020
韓国
ポン・ジュノ監督・脚本
ハン・ジンウォン脚本
ソン・ガンホ、、、キム・ギテク (半地下に棲むキム一家の父)
チェ・ウシク、、、キム・ギウ(ギテクの長男、4年間大学受験をしている)
パク・ソダム、、、キム・ギジョン(ギテクの長女、美大を受験希望)
チャン・ヘジン、、、チュンスク(ギテクの妻、元ハンマー投げメダリスト)
イ・ソンギュン 、、、パク・ドンイク(高台の豪邸に住むIT企業の社長)
チョ・ヨジョン、、、ヨンギョ(ドンイクの美人妻)
チョン・ジソ、、、パク・ダヘ(ドンイクの長女、受験生)
チョン・ヒョンジュン、、、パク・ダソン(ドンイクの長男、ADHD的)
イ・ジョンウン、、、ムングァン(パク宅の家政婦)
パク・ミョンフン、、、グンセ(ムングァンの夫)
パク・ソジュン、、、ミニョク(ギウの友人、大学生でアメリカに留学)
スタジオセットですべての空間を作っているだけあり、光と影の微細なコントロール、配色・構図も見事に演出されている。
ディテールに至るまで無駄がない。ロケだとここまで作りこめないだろう。
計算の行き届いた映画だと感心して見ていると、意表を突く展開に唖然とする。
ダソンの誕生祝いで、パク一家はキャンプ旅行に出かける。
この隙に、豪邸の居間にパラサイト一家が勢揃いして高い酒などを出して散らかし放題で、思い思いに宴会を始める。
普段、言葉使いや所作など気を使い暮らしている反動で、思いっきりだらしない。
妻チュンスクのゴキブリ発言でギテクがマジ切れしてみたり、ギウはダヘと結婚したらこの家を継ぐことになるとか、夢のような浮かれた噺に興じる何でもありのエントロピー増大する一方の流れが野放図に続く。
(確か物語の最初で、ギテクがテーブルの上にいた虫を指で弾くが、あれはゴキブリだったか、、、)。
この家族というかギテクの人となりを見てきて思うに、刹那的で無計画とか謂うよりもっと根深い破壊(破滅)衝動みたいなものも感じる(ピザの箱作もだらしない程度なら、しっかり出来たり出来なかったりするものだが、全て不良というのも異様だ)。
突然度肝を抜くホラー展開を迎える。
雨の中を前の(策略で首にした)家政婦が訪ねてきたのだ。
地下室に忘れ物をしたと言う。
透明のグラスが綺麗に並べられた棚の間に漆黒の空間があり、そこから地下に通じる通路・階段が伸びていた。
(赤と黒のコントラストが美しくも空恐ろしい)。
現富豪一家の知るところではない、それ以前からこの邸宅を熟知している家政婦ムングァンのみぞ知る地下世界の入り口であった。
降りてゆくとそこには、何とムングァンの夫グンセが隠れ住んでいるのだった。
女は彼にずっとパク一家の目を盗んでは食事を与えていたのだ。すでに4年間も続いているという。
(この家政婦が大食いだと謂われてきた理由がここで分かる)。
そして深夜ケーキを食べに行ったダソンが目撃したトラウマを負うほどの怖い幽霊体験とはこの男を偶然目撃したことによる。
この男もまた、「台湾カステラ」で失敗し大きな借金を背負ったらしい。
(フランチャイズで一気に流行り直ぐに廃れたという)。
ギテクにとっては、共感できる部分ではあるか。
借金取りから逃れてここにいるしかない。しかし本を沢山揃えて読んでいるらしく、何らかの「計画」をもっていることは推察できる。

ここは、半地下どころの話ではなく、窓ひとつない、深い地下である。
この突然顕わになる垂直構造。
これまでは、高台のパク一家の大豪邸から自分たちの住む半地下までの上下関係~階級しか知らなかった。
さらに伸びる格差である。努力や能力・才能とは、また別の要因によってがんじがらめとなる格差。
コンドームの串刺しがあったが、ここにあっては子供も作れない。
キム家には、子供がいるだけ恵まれていると謂えるか。
一番上層にいる家では、愛着障害がみられ、性の状況も大都市特有の変化を余儀なくされている(これは全世界的な傾向である)。恐らく妻の状況からも疎遠で淡白な関係になっているはず。それを大きく助長するのが先進国特有のIT環境であるが、奇しくも夫はIT会社の社長である。
一番下では、IT環境による人との身体性の疎外ではなく、関係したくても出来ない状況に社会的に追い込まれている。性に関しては、キム一家がそれなりに自由で従来の人間的な関係性が生きている(残っている)ように思われる。
ムングァンはこれを内密にし、金を払うから食事を夫に与えて欲しいと懇願するが、チュンスクはそれをはねつける。
やはり自分たちの生活が脅かされる恐れは感じるはず。既得権?の守りに入る。
そのやり取りをしている際に、陰で聞いていた他の3人が転がり出てきてしまう。コミカルだが笑っている場合ではない。
ムングァンは、ギウとギジョンのことはまだ辞める前のことで、よく知っている。
この詐欺家族の関係をばらすと形勢逆転となる。
彼らをビデオに録りアップする、奥様に送信する、などと脅す。
そこから、まさに血生臭く展開してゆく。
お互いにやり合っている時にヨンギョ夫人からの電話で大雨のためキャンプを切り上げ至急家に戻るから食事を頼むとのことである。地底人との攻防の最中、散らかし放題の部屋を片付け、食事の準備に取り掛からねばならない。
大雨が降れば、このくらいの想定がつかないようでは、やはり成功は無理な気がする。
一瞬のスキを突いたチュンスクの蹴りを食らったムングァンは、階段を転げ落ち脳震盪を起こすが、これがもとで命を落とす。
グンゼは血だらけになりながらも、頭で照明のスイッチを押してモールス信号を打つが誰にも気づかれない。
取り敢えず2人を地下に封じ込めたところで、大急ぎで急場を凌ぎ、ご主人一家が戻る時には何食わぬ顔をして食事を出すが、相変わらず奥様は何も気づかない。
娘も同様。主人は生ごみ臭さを気にする。妻にギテクが雑巾の匂いがすることも告げる。
もっとも敏感なダソンは何と雨の降る庭にインディアンのテントを出して懐中電灯をもって籠ってしまった。
きっと、部屋の匂いに耐えられなかったのだろう。

パク夫妻は、庭のテントの動向を見守りながらもソファの上で夫の意向で事を始める。
その下にパラサイト一家の母親以外の3人が隠れていた。何とも言えない象徴的な構図である。その最中にダヘからギウにメールが届く。ダヘはギウにゾッコンなのだ。彼女の日記も盗み見て知っている。
上の彼らが寝静まったところで、3人は無事に抜け出し、やっとのこと家に帰るが大雨の浸水で家中の物が水浸しで避難を余儀なくされる。
ギテクは妻のメダルを手に取り、ギウはミニョクに貰ったステイタスの象徴であろうか、お守りの「石」~「山水景石」を重いにも関わらず持ち出す。
ギジョンはクールにタバコをふかしていた。彼女だけは、独力でここを抜け出せる力を感じさせる。
3人とも避難所である体育館で一夜を過ごす。
ここでギテクは、わたしの計画は、計画の無いことだと謂う。計画するから予定外のことが起きて翻弄されるみたいなことを述べる。
ギウは、無謀な計画を立てたことを父に詫びる。子供2人だけなら結構上手くいって金も貯められたのではと思うが、、、。

翌朝早々、ヨンギョから庭で盛大に誕生パーティーを開くという連絡が入り、パラサイト一家は皆、召集されることになった。
3人は恐らく、前夜はどぶ水に漬かってシャワーも浴びる暇もなかったはず。
運転手は奥様の買い物に駆り出され、ついに彼女も臭いと車の窓ガラスを開ける。家政婦は庭のテーブルセットのセッティングと勿論、ケーキと料理の準備である。
家庭教師は単なるゲストの一人であろうが、アートセラピストは、各テーブルにケーキなどを運ぶウエイトレスみたいな役を頼まれていたようだ。更にアトラクションとして息子のインディアンものに運転手は主人と共にインディアンとしてメイクをされ駆り出された。
このパーティーは息子のケーキと結びついたトラウマ治療の意味も含んでおり、インディアンは大事な役だと聞かされる。
ギウは何故か「山水景石」を持って地下の夫婦が気になり降りてゆく(何故「石」を持って降りたのか?殺害か?)
母も気になり食事を差し入れようとはしたがタイミング悪く奥様に呼び出されてしまう。
地下室に入ったギウは、待ち伏せしていたグンゼに紐で首を絞められる。
何とか難を逃れるが、結局グンゼに持って行った「石」で頭を殴られ大量の出血と共に気を失う。
グンゼは外を睨みつけ、包丁を手に持ち、ケーキを運んでいたギジョンを狙って刺す。
一つ階級の上のもっとも将来性を感じさせる存在を消す。階級闘争だ。
その様を観たダソンはまさに幽霊の正体を目の当たりにして気絶する。更にトラウマを強化する飛んだバースデーパーティーになった。
ドンイクは直ぐに息子を病院に連れてゆくと言い、カギを催促しその場を立ち去ろうとする。
血まみれのギジョンに駆け寄るチュンスク。ギテクはドンイクにカギを投げるがチュンスクとグンゼの揉み合う中に落ちてしまう。
チュンスクは肉刺しでグンゼを何とか刺し殺す。ドンイクはカギを手にするがその際に倒れたグンゼの匂いに思わず表情を歪めた。
その一瞬の姿にギテク は鋭く反応し、衝動的にドンイクを刺す。
結局、グンセとムングァンの地下夫妻が死に、ギジョンとドンイク社長が死ぬ。
ギウは、一命をとりとめるが脳には障害が残ったようだ。
母のチュンスクは正当防衛が認められ、ギウは公文書偽造と住居侵入で罪は受けるが、執行猶予であった。
ギジョンはロッカー式納骨堂に納骨された。これも半地下風の墓に見える。
父ギテクは、豪邸の地下に逃げ込み、地下層の人へと自ら落ちて行った。
消息不明とされる彼はグンセのように、今は外国人が買い取ったその豪邸の照明でモールス信号を打つ。
それを夜高台に上り豪邸を見ていたギウが気づき、父の居所を知ることになる。
彼は将来、金を稼ぎその豪邸を買い取り父を助け出そうという計画を立てた。
恐らく、有名大学から一流企業という正規ルートではない、金を稼ぐ計画であろう。
非常に重厚な物語を実に上質な娯楽作品に仕上げている。
この面白さで、本来映画嫌いなわたしも一気に観ることが出来た。
しかも韓国語で。
セリフの意味をしっかり聞き取れなかった部分はあったはずだが、取り敢えずは見終えたと思う。
二度目は吹替で観たい(笑。
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