チェルノブイリ・ハート

Chernobyl Heart
2003年
アメリカ
マリアン・デレオ監督・リポーター
「未知の心臓疾患や放射線障害」のことを指すものだそうである。
独特の風合いのドキュメンタリー映画であった。
このような大規模な原子炉による災害などの場合、それをテーマに掲げると言っても作者の立場によってデータの扱いは大きく異なり(特にリスクの評価などに大きく表れ)、全く別の事件~事柄のように描かれてしまう場合もある。
ただ、事実として今も原発から半径30キロ以内の地域が居住不可であり、350キロの範囲内に高濃度汚染地帯である100を超えるホットスポットが点在し、農業などは一切できない状況が続いている。
また事故の規模を伝える際などに引き合いに出される死者の数だが、放射線被曝と甲状腺癌や白血病、先天性の障害との因果関係は直接的に証明する手段はなく、科学的な根拠とするところが難しい。この辺がまた作者の思惑によるデータの扱い方の違いに反映するものか。
まず、ナジム・̞̞ヒクメットという詩人の「いきること」についての詩が流される。
これはよい詩だと思う。気に入った。
詩の後、おっと引き寄せられたのは、ヘンリク・ミコワイ・グレツキの「交響曲第三番の第二楽章レント・エ・ラルゴ」が流れたことだ。
わたしの大好きな曲なので、一気に画面に注視したのだが、何やら軽い。
使われている古びた映像は独自のリアルな説得力を放つが、そこに添えられる字幕のデータは大丈夫なのかちょっとどうなのか、である。どういう形で引っ張って来たデータなのか。何れにせよ映像は言葉~記号と融合してより強いメッセージを持つのだが。
グレツキの音楽そのものもペラペラな感じに、貼り付けられていたような、、、。
線量計を持ってベラルーシで量ったりもするが、防護服と厳重なマスクをして万全な体勢で臨むと言っていたが、話すときはマスクなしで、周りのスタッフは普通の服装だったりと統一していないが、ここは実際どういう場所なのか。というちぐはぐな場面に戸惑う。
しかし地元の人々は思いの外、楽観的なご老人が多かった気がした。放射性物質や放射能、放射線(量)についての知識はきっと他の地域の人より誰もが普通に持っているようであったが。

しかし産婦人科で健常児の生まれる率はどれくらいという質問に15%から20%と医者が答えていたが、それはどういうデータなのか?
放射線との関係は皆あるという。免疫力の低下。障害がみられなくとも病気に罹りやすい。確かにそうだろうが、煽られている雰囲気が強い。
最初と最後に日本のみなさまへというメッセージも添えられ、福島のことも語られているのだ。
何やら腑に落ちない気分になる。どういう立場で語っているのか。
ベラルーシでのことばかりであったが、ウクライナはどうなのか。チェルノブイリはウクライナである。
勿論、隣のベラルーシも汚染されたであろうし、その向こうのロシアだって。日本でも汚染は観測はされたものだが。
ウクライナはどうなのか。取材をベラルーシに限定していたのか、、、。
また殊の外、被害者が生まれ故郷に拘ることが印象的だった。
生れた土地を離れたくない、、、確かにロシア文学などに触れると、彼らの土地に対する態度~心情を強く感じることはある。
(わたしが帰属意識がなさ過ぎるのかも知れぬが)。
これが被害の深刻さに影響しているか。子供が残っていたら確かにまずい。
福島との違いは、チェルノブイリ事故の地域住民に対する当局の発表が遅れたため被爆地に2日以上住民が普通に暮らしていた差は酷く大きいはずである。(他にも違いは多々あるが、少なくとも)。異常に気付いたスウェーデンからの訴えで白状した形である。何とも。
ミハイル・ゴルバチョフが、グラスノスチ(情報公開)の徹底を指導したことで、隠蔽体質(当初は事故そのものを隠していた)は徐々に変わっていったが、正確な実態はどうなのか?勿論、福島だってその実情がわれわれに知らされている訳ではない。御用学者の話はともかく。
リポーターの女性が監督のようなのだが、お昼のバラエティ的な匂いもする。
自己顕示欲の強い独善的なタイプのよくいるリポーター(アメリカには特に多くいそうな野心家)。
噂話に目のない主婦の琴線をくすぐるような口調と言い、仕草や演出はなかなか。
だが生理的に受け付けない人もいるはず。
看護師に対する横柄な態度や娘の心臓手術に成功したアメリカの医者に対する母親への恩着せがましさ、アメリカでは水頭症は生れてすぐに水を抜くがここでは予算の関係でしないのと内緒話みたいな小声で呟いて見せたり、、、等々。
この映画の興行収入は大きかったのか?確かアカデミー賞の短編部門の賞を取ったとか。

ただ実際、子供の実態には衝撃を受けた。
甲状腺がんや重い心臓疾患、先天性の奇形、その他重度の障害を持って生まれてくる子供が増加していることは確かのようだ。
その病院の様相は想像を絶したもの。
取材映像そのものは、見ておく必要を感じた。
この映像を自分の文脈に落とし込むことは困難であれ、知っておくことはどこかの局面で重要な判断に繋がると思われる。
2011年の福島原発事故を受けて、最後に日本へのメッセージを付け加えたのなら、どちらも同じとかいう雑な(というより誤った意識を植え付けるような)噺ではなく、両者の違いをまず明確に示したうえで、今後有効であろう手立てや心構え等貰えるとありがたいものだったと思う。
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今回、お腹をやられてまだ怠い(笑。
もう少しで本調子に戻るかと。
どうか御贔屓に。
先週は、次女のクラスもインフルで学級閉鎖であった。
その特集は流石にやる気にはならなかったが、新型ウイルスの流行で巷でもあちこち動きが出ている。
アメリカのインフルの猛威はそれを遥かに凌ぐ凄さのようだが、そちらは国としては大丈夫なのか?
忖度で黙っている訳ではないでしょうな。
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