パッチ・オブ・フォグ 偽りの友人

A Patch of Fog
2015年
イギリス
マイケル・レノックス監督
ジョン・ケーンズ、 マイケル・マッカートニー脚本
コンリース・ヒル、、、サンディ(有名作家)
スティーヴン・グレアム、、、ロバート(警備員)
ララ・パルヴァー、、、ルーシー(サンディの恋人、インタヴュアー)
霧の塊か、、、。
凄い重いものを見た感じ。
身体的に、生理的に重い。
何とも言えない無常の感覚。印象だけが長く残りそう。
最後にサンディ(の部屋)にロバートから届いていたクリスマスプレゼントは、例の原稿か。
それにしても、どんでん返しというか、サンディを著名な作家に押し上げた唯一の作品が父親の作であったとは驚きだ。
全く思ってもみなかった。道理で2作目を書かないわけだ。そりゃ書けまい。
彼の盗み癖は、半端なものではなかった。
本質的なものであった。

粘着気質の警備員にしつこく探られたら、
彼の地位も名誉も砂上の楼閣。
あっさり、何も無くなってしまったではないか、、、。
地位も名誉も知性もない人間にすべてを見透かされて、、、。
何故、こうなるのか。
ロバートが心底サンディのことが好きだったからだ。
純粋な愛である。
だからサンディに必要以上の仕返しなどしていない。
ロバートは、好意を抱く人間にどう接したらよいかが分からないのだ。

サンディは、最初からロバートのことが不快で我慢がならない。
しかし弱みを握られているため、嫌々付き合う。
(ペン一本の万引きで現在の作家の地位、TVの文芸討論番組、大学教授の地位を無くせるか)。
ロバートは、万引きを内緒にすることを約束して、サンディのいるところに構わず友達だと言って現れるようになる。
実際、もうロバートは友達のつもりなのだ。
だが、ロバートは肝心のディスクは大切に保管していると言い、絶対にサンディには渡さない。
サンディは策を練り反撃(ディスクを盗むなど)に出るが、それがお粗末。
常に、ロバートが上手である。
というより、サンディが間抜けなのだ。
万引き記録ディスクがオリジナルの一枚だけという保証はあるか。
盗みに入り、防犯カメラに注意は払わないのか。
ディスク内容がクラウド保管されているケースは考えないのか。
ここでは、防犯カメラであったが、サンディはすぐに証拠映像を撮られてしまう。
ルーシーとのただならぬ関係も押さえられてしまう。
彼女の娘のフィービーに、ロバートから渡された友達の証の潰れたコインを上げてしまったことも掴まれる。
終盤、その映像を逆手に取った学生を巻き込んだサンディの反撃で、一時ロバートが劣勢になるが。
サンディがロバートの部屋に忍び込みディスクを奪い、部屋を荒らして立ち去るそのビデオを見て物語を作れというものである。
これで、その映像は架空のものとなり、肝心のロバートの部屋はサンディからのお詫びの印として全ての家具と壁が新品となってしまっている。頭を使った訳だが、、、。
ロバートのサンディ愛がそれに勝った。
ロバートはサンディのTVの文芸番組で彼の作品の成り立ちの背景を語るところを感動のうちに涙して見ていた。
(幼い頃、霧のなかに迷って父に助けを求めるが、彼はついに探しに来てくれなかった)。
そしてサンディの家にセキュリティを軽々破って侵入し、25年前の彼の手書き原稿を見つけ出して、しみじみ読み耽っていた。
そこで最後に見つけたのが、父のサインであった。
彼も思ってもみなかった事実、サンディの父が息子に捧げて書いたものだということに愕然とする。
雲の遥か上の人と思っていたのが、自分と結局どれほど違う人間か、、、。
(サンディは、万引きなど問題にならぬ究極の盗みをよりによって蔑んでいるロバートに押さえられてしまったのだ)。
そこでロバートが考えた奇想天外な友達行動とは、、、
サンディの家に自分が住み込み、サンディが作品執筆に専念できるような環境を作ってあげるというもの。
そのために彼は長年勤めた警備の仕事を辞めてきたという。
そしてひたすら、自分の作品を書けばよいと。
究極の独善的な愛である。
まさに、君と同じ墓に入るのは勘弁してくれ、である。
サンディの絶望がよく分かるものだ。

そこで揉み合いになる。このレベルになるとサンディも知性の欠片もない。
しかし度が過ぎ、サンディはロバートを殺してしまう。
(元々、ロバートはサンディを傷つける気持ちがないから暴力もふるえない)。
夜の闇に死体を車で運び、遠方の湖で舟からロバートを投げ込む。
その際に何故か携帯が鳴り響き、ルーシーからのものだった。
慌てた拍子に船底にナイフを落としてしまう。
するとロバートを覆うビニル袋を縛った赤い紐がサンディの足に巻き付きロバートもろともサンディも漆黒の海に引き込まれてしまった。途中一度だけ力を振り絞り、ナイフを舟に取りすがり探ろうとするが、指が届かず力尽きて深い海底へと沈んで逝ってしまうのだ。
永遠の友達同士に死して成り得たか。
少なくともロバートにとっては、ハッピーエンドだろうか。
沈んで行くサンディのこころ残りな表情が本当に印象に残る。
サンディの内実のない名誉に支えられた生活の虚無感に浸りながらも、なお今現在の地位は保ちたいという人間的な欲望は分かる。そこから来るストレスが断続的な万引きで発散されていたのだろうか。
ロバートもサンディも共に孤独という点では、深く引き合うものがあったのでは。
主演の二人は文句なしの熱演であった。お疲れ様を言いたい(爆。
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