平櫛田中

平櫛田中
「日曜美術館」で初めてその存在を知る。
廃仏毀釈も手伝い、木彫が廃れてしまった時期に近代日本の代表的木彫作家として活躍した。
「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる」
並々ならぬ使命感が窺える。
日本の伝統美術の価値を高く評価する岡倉天心からの影響で基本となる作風が決まる。
「不完全の美」
表現しない部分を残し見る側が想像力を働かせ全体像~世界観を把握する。
この代表作として「尋牛」が生まれる。

この作品は特に時空間の拡張を伴う。
自分と重ね弛まぬ修練を続け歩み続けるその姿~場所である。
尊敬する岡倉天心の像も幾つも傑作を残す。
そしてロダンからの影響。
暫くの間、裸婦モデルを使った彫像による制作に没頭する。
西洋の彫塑作家のように人体構造などの徹底した造形研究を木彫制作にも活かしてゆく。
対象の構造把握をしない~対象に対する洞察をせずに制作技量だけ高めてしまう当時の木彫の水準を脱する。
その成果が「転生」となる。

そして彼の代表作は何と言っても「鏡獅子」であろう。
国立劇場の正面ホールに置かれる「鏡獅子」は、圧倒的な大作である。
2mの高さで美しく彩色されたものである。
6代目尾上菊五郎をモデルに22年の歳月を経て完成させた途轍もない力作であるが、精緻な彩色が成されている。
この彫刻~立体像に彩色を施す意味とは何か。
仏像も、今現在全ての色が脱色し、所謂「わびさび」をしみじみ感じる様相を呈していても、かつては原色の極彩色で鮮やかに塗られていたものが多い。
彩色された像を見るとわたしは大変エキゾチックな印象を持ってしまう。
そして彫塑というより、人形を想わせる。
この辺がどうにも悩ましい。

だが、この「鏡獅子」に関しては、彩色は全く自然の不可避の造形要素であると感じられる。
モデルが尾上菊五郎という歌舞伎役者であるところも大きい。
ちなみに6代目尾上菊五郎の裸像もあるが、こちらもミケランジェロばりの筋骨が表現されており素晴らしい。
(6代目は数えきれないほどのモデルを務めてくれたそうだ。この協力あっての賜物であろう)。

破格の値段で5つ★ホテルと豪華な食事の愉しめる旅を! 東京オリンピックまでに自由を手にする無料動画