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GOMA28

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ミステリアス・ピカソ - 天才の秘密

LE MYSTERE PICASSO002

LE MYSTERE PICASSO
1957年
フランス

アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督

パブロ・ピカソ
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、、、監督
クロード・ルノワール、、、撮影


この映画の為にピカソが絵~ドローイング、水彩、油彩の実験性の高い作品を描いている。
何れもこのフィルム上にしかない絵だ。
それらの絵の制作過程が見届けられる。
(とは言え、5時間の制作時間を編集により10分にまとめている。ここはちょっとアニメーション作品を見るような感覚もあるが変化の壺は押さえられている。更に絵の生成そのものを正面から捉える工夫の為、裏側から撮影している。ということは、左右逆転した絵を見ていることにはなる。つまりピカソの生な視座・思考とは言えない。特に左右逆転すると意味が異なるような絵はここでは適さないが、そういう題材はなかったと思う)。
ピカソの思考と感性は保留付きだが、筆致の繊細で大胆な運動を追えるのだ。
これは言うまでもないが、画期的なことである。
フェルメールもベラスケスも(二人ともダリが自分の他に天才と認定した画家であるが)完成作を拝むしかない。
このピカソという天才の制作過程が具に見られる奇蹟的体験と謂えよう。


サラっと見事なデッサンで一気呵成に描かれ完成というものもあるが、寧ろそれは少なく。
試行錯誤し訂正され、飛躍もし躊躇し塗り重ねられ、当初のデッサンがほぼ姿を消し誰をも裏切る形体で完成を見ることの方が多い。
時には、描き込むごとに本人曰く、酷くなり、更に悪くなり、最後には新たに描こうという場合もある。
次に描かれたものを見ると、前回の失敗を踏まえると確かに成程と思うが、予想を超える形態に新鮮な驚きは隠せない。
恐らく我々だけでなくピカソ当人にとっても、そうではないか?
この場はとても張り詰めたしかしユーモアも見られる特異な創造の現場としてフィルムに焼き付けられてゆく、、、。
(そのドキュメンタリーをこうして我々の誰もが見ることが出来る。有難いことだ)。

LE MYSTERE PICASSO003

絵を描くことの秘密の快楽がここに示されている。
巨匠との一種の共有感を得た気分。
ピカソは楽しんでいるし、こちらもワクワク、ドキドキしながら先の読めぬミステリーに遭遇しているのだ。
そして何より自分でも描きたいと思えてくる。
創作意欲が湧いてくる。
ここが素晴らしい。

圧倒的な大作を見せつけられ、ただ感心するだけというスタンスではなく、創造の秘訣に触れたような感動と共にこちらも能動的に揺れ動く力がこのフィルムに秘められている。
この映画を撮った(撮るという発想を持った)製作関係者及び監督には感謝したい。
勿論、主役ピカソにも。
彼が首を縦に振らなければ、始まらないことだ。
しかしほんの時折垣間見えるカメラマンや監督とのちょっとした(しかし重要な)打合せ場面で、ピカソ自身もノリノリでかなり意欲的にこれを貴重な創造の場にしようとする意思が窺える。

LE MYSTERE PICASSO001

自ら発明・確立したスタイルを次々に解体しつつ目まぐるしい作風の変化を見せてきた画家であるが、ここに描かれる絵は「キュビズム」色が濃い。「キュビズム」が基調にあるが、1957年の晩年であるから当然か。
実質的に「キュビズム」が彼の最後の成果であったと思う。
分析的なキュビズムへの深まりはあったが。
(シュルレアリズムへの傾倒も晩年大きかったが、余り彼ならではの独自性は見られない)。

尺取りも大変であったようだ。
後、どれくらい描けるかというピカソの問いに、後6メートル残っているというのも面白い。
フィルムの長さが6メートルと言われても、専門家にしか分からない(笑。
しかし巨匠はその尺に合わせてピッタリと仕上げてくる。
彼もまた、こういう映画を撮りたい~残しておきたかったのだ。
後の世の我々がこうして観られるように。

BGMもとてもそれぞれの作画の作業に合ったセンスの良いものだった。

これは本当に素晴らしい仕事である。

LE MYSTERE PICASSO004





これは、絶対Blu-rayにすべき。



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フランスでは、このフィルムは国宝となっているそうだ。
当然だと思う。

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COMMENT

ワクワク感想像できます

僕は絵のことはあまりよくわからないものの、GOMAさんのこの記事を読んで、そのワクワク感がどれほどのものであるか想像ができました。
制作過程をいかに凝らして見せるということにこだわり、そしてピカソ自らが協力したという2点にまず感銘を受けました。
着想の原形に固執せずどんどん変わることのほうが多かったというのは興味深いです。時には基本的な枠組みのようなものも組み直すのか、などの疑問も湧いてきました。
絵と音楽を同じように考えてよいかはわかりませんが、音楽の制作過程を見ることは時々あり、ワクワクします。しかし、一流の音楽家の制作過程をここまで一気通貫でしかも精緻に捉えたものはこの世に存在しない気がします。
それにしても50年代でこれほどの作品ができるのですね。人間というもの、古い時代であっても知恵や技術はあまり変わらないのでしょうね。

ありがとうございます。

実は、ST Rocker さんからコメントもらえるな、と踏んでいました(笑。

> 着想の原形に固執せずどんどん変わることのほうが多かったというのは興味深いです。時には基本的な枠組みのようなものも組み直すのか、などの疑問も湧いてきました。

当初頭に描いたであろう構想の練り直しは、はっきり感じられますね。
ブラッシュアップどころではない描きなおしがありました。
しかし描画の枠組み~表現方法は所謂、「キュビズム」の範疇にありました。
これすらも自在となれば、寧ろ素人絵描きとなるでしょう。
ピカソの自らの創造した描画方法(形式)が血肉となっていることは窺えます。

> 絵と音楽を同じように考えてよいかはわかりませんが、音楽の制作過程を見ることは時々あり、ワクワクします。しかし、一流の音楽家の制作過程をここまで一気通貫でしかも精緻に捉えたものはこの世に存在しない気がします。

そうですよね。グレングールドの演奏時の(これも創造過程に他ならないと思いますが)指使いが具に見られるビデオに触れた際には、圧倒されたものです。しかし、作曲家の制作過程を追ったものなどは、観たことありませんね。おそらく製作側の鬼のような編集作業も必須でしょうけど(笑。興味は沸きますね。

> それにしても50年代でこれほどの作品ができるのですね。人間というもの、古い時代であっても知恵や技術はあまり変わらないのでしょうね。

本当によくやってくれたと思います。これは人類の宝だと思います。
ただ、ひとつお伺いしたいところですが、左右逆転すると、こちらに伝わるメッセージは微妙に異なりますよね。
ピカソが右向きに描いたものを左向きに観た場合、そこに生じる意味性のズレは必然的に生じると思います。
映画でも登場人物が右に歩くのと左に向かって歩くのでは、流れの印象は変わってきます。
この辺どうなのでしょうね。世界の共有感のズレについてですが。

またお暇なときにでも宜しくお願いします。

左右反転について

GOMAさん、こちらの文章も先ほど文字化けしてしまいショックです。
我ながら結構よいことを書けたのですが、再現はなかなか難しく、一応試みます。
ピカソの絵を左右反転して描いたことは、僕もとても興味を感じました。
オリジナルと左右対称画は、はっきり言って似て非なるものだと思います。
人間の内臓が左右対称でないこと、左右の脳の機能が違うことからも、それが言えると思います。
ただ、何がどう違うのか、今の僕にははっきり言えるほどの専門性はありません。
いつも鏡で見ている自分の顔と写真に写った自分の顔は結構違います。
また、左利きのポール・マッカートニーの奏でるピアノやベースは、心臓や脳との関係で、右利きの人の奏でるそれらとは違う可能性大でしょう。
あるいはさらに、右と左とはそもそも何なのか、という眠れない疑問にもブチ当たります

Re: 左右反転について

> GOMAさん、こちらの文章も先ほど文字化けしてしまいショックです。
大変でしたね。勿体ない。
わたしも90%以上書いた記事がパソコンの不調ですっ飛んだことがあります。
もう同じものは書けません(笑。似た様なことが4回くらいありましたが、思い切って全く違う角度から考えて書き直しました。

> オリジナルと左右対称画は、はっきり言って似て非なるものだと思います。
わたしもそう考えます。

> 人間の内臓が左右対称でないこと、左右の脳の機能が違うことからも、それが言えると思います。
同感です。

> ただ、何がどう違うのか、今の僕にははっきり言えるほどの専門性はありません。
わたしもです。

> いつも鏡で見ている自分の顔と写真に写った自分の顔は結構違います。
これはかなり大事なことです。このことをもっと重く見るべきだと思います。

> また、左利きのポール・マッカートニーの奏でるピアノやベースは、心臓や脳との関係で、右利きの人の奏でるそれらとは違う可能性大でしょう。
なるほど、、、確かに。

> あるいはさらに、右と左とはそもそも何なのか、という眠れない疑問にもブチ当たります
学生時代に読んだ、マーティン ガードナーの「自然界における左と右」を想い起しました。
久しぶりに刺激を貰いました。
ここのところ雑事に追われて考える暇もない有様なのですが、そのうちじっくり考えてみたいものです。

ありがとうございます。
また宜しくお願いします。

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