ジェーン・ドウの解剖

The Autopsy of Jane Doe
2016年
アメリカ
アンドレ・ウーヴレダル監督
イアン・ゴールドバーグ、リチャード・ナイン脚本
エミール・ハーシュ 、、、オースティン・ティルデン(検死官)
ブライアン・コックス 、、、トミー・ティルデン(検死官、オースティンの父)
オフィリア・ラヴィボンド 、、、エマ(オースチンの彼女)
マイケル・マケルハットン 、、、バーク保安官
オルウェン・ケリー 、、、ジェーン・ドウ(死体)
死体の体内から出て来た埋葬布には、1693年のニューイングランドの件が記されていることが分かる。
マサチューセッツ州セイラム村での魔女裁判だ。
この女性は無実の罪で(ほぼ全員がそうだが)殺され、その復讐のために本当の魔女となった女性らしい。
自身は何もせず裸で解剖台に横たわっているだけで、これだけの恐怖と惨劇を巻き起こす。
シュールだ。これは新しい手法ではないか?
どうやら、彼女のからだの皮の内側に書かれた呪文が彼女を死なせない作用をもつようだ。
これには二人も目を疑う。
だから摘出した臓器は直ぐに腐っていた。
つまり外側の皮一枚~見かけだけでずっと生きて来た~腐敗から逃れてきたと謂える。
彼女は永遠に死なず(腐敗せず)、関わった人間を祟り続けるのだ。
わたしは、これほどフィジカルに怖い映画を観たことがない。
血液検査で血を採取するときでさえ、まともに注射器を見れないのに、ずっと生々しい解剖の様子が続くのだ。
これは厳しい。大変しんどい。お陰で途中20回はポーズしてコーヒーやジュースを飲みに行った(苦。
こういう映画を観るたびに太る(ストレス太り)。

惨殺事件のあった現場の地下に外傷の全く見られない綺麗な女性の死体が見つかる。
他の血みどろの遺体との関連性が全く掴めず、別件の可能性も充分考えられるものであった。
担当の警官に、この謎の死体の検死を頼まれたのが、検死官ティルデン父子である。
関連性が説明できるよう一晩のうちに検死を済ませて欲しいとのこと。
それを素直に受ける、とても真面目な親子だ。
如何にもプロらしい洗練された手際の良さで手順よく仕事を進めてゆくのだが、、、。
死んでいるのに、体は柔らかいし、何処にも外傷が見つからない。
メスを入れれば何と、血が出てくる。鼻から血と共に蠅も出て来た。
一体いつ死んだのか?
灰色の瞳からして少なくとも一日は経過していなければならない。
手・足首は骨が砕かれており、ウエストは強力なコルセットのようなもので締めあげられ不自然に細くなっていた。
爪や髪には泥炭がついていた。北部の地方に見られる土壌である。
外見には傷などの傷みが一切見られないことがとても不自然に思える。
(運び入れた警察がそもそも不思議に思わなければならぬはずだが)。
しかし身体を開いてみると、内臓器官は悉く損傷を受けており、肺に至っては燃やされているのだ。
明らかに惨い拷問にかけられ殺されたことが分かるものである。
何故、この凄まじい内部でありながら外観に何の傷みも見られないのか。
それにただ殺すだけなら銃や毒で殺せるのに何故こんなことをしたのか。
ただ、彼女を苦しませることが目的であったとしか考えられない。
そして消化器官を開くと、抜いた歯を包んだ布が見つかる。
何やらそれには儀式で使われた呪文や幾何図形が描かれているようだった。

不穏な空気で解剖室が満たされてくる。
これは尋常でない事件に巻き込まれたことを二人ははっきり認識するのだった。
更に、頭部を切開して脳の組織を顕微鏡で調べた二人は驚愕する。
彼女は生きているのだ!
彼らは混乱を極める。父の謂うように「不測の事態」である。
死因が掴めぬというより、生きているのか死んでいるのかも分からぬ状態の女性であることが分かって来る。
そして読み取れなかった布の文字が何を意味するのかが分った。
レビ記20章27節とある。
ここから一気に現代医学からオカルトの世界に雪崩れ込む。
彼女が魔女裁判にかけられ惨い拷問に苦しめられた復讐であることに気づく。
物音が響いたり足音が聞こえたかと思うと激しく扉を叩く。
亡き妻の形見の愛猫がダクトのなかで重傷を負い、安楽死させる。
先ほどから、暴風雨の荒れた天候の話しが続いていたところに被るように、不気味な歌が流れてくる。
「心を開いて明るく照らしましょう、、、」童謡のような妙に単純で明るい歌が聴こえるのだ。
足音や物音が響きだす。死体の足に括り付けた錫が鳴る。
突然、停電し蛍光灯が割れる。
警察に電話をするが、通じない。二人は、脱出を試みる。
その途上で、安置所の死体に襲われ恐怖に駆られて逃げ惑う。
エレベーターまで来た時に死体~ゾンビがやって来たため、父が手に持った斧で一撃を加えるが倒れた死体はエマであった。
全て解剖台の上の彼女の仕業であることが実感されてくる。

完全なホラーモードになる。
だが、ここで二人は冷静になり、解剖室に戻り、真相を究明して彼女を止めるという使命感に燃える。
彼女に火を放っても室内は燃え出すが彼女自身は全く燃えた痕跡もない。
やはり彼女は魔女に他ならない。
父は彼女と契約を結ぶ。「わたしは味方だ。息子には手を出さないでくれ」と目を見つめて囁く。
すると父に彼女がされた拷問が全てなされる。
もがき苦しみ彼は力尽きメスで心臓を刺して死ぬ。
彼女ジェーン・ドウの切り刻まれた身体は急速に元に綺麗に戻ってゆく。
息子はひとり脱出を図るが、息子を助けに来たと受け取った声は、人間のものではなかった。
死んだはずの父の姿に驚いた彼は手摺が壊れた拍子に下の床に落下してしまう。
終盤はかなりあっさり息子も殺され、綺麗な体のままのジェーン・ドウは大学の解剖室へと車で運ばれてゆく。
彼女の他に運ばれた死体は二つであることから、エマの死体は幻~ゾンビの替え玉であったか。
割れた天井の蛍光灯が父の死後、全部電力が復旧し点いたことから、かなりの出来事が幻想であったように受け取れる。
ラジオもここ数日間ずっと晴天であることを告げていた。
恐ろしい磁場に翻弄され真面目で善良な父子の命が奪われたものである。
たまたまジェーン・ドウと関係してしまったばかりの不幸であった。
ともかく、生理的に怖い痛い映画であり、わたしの耐性を超えていたと謂える。
だが、終盤のオカルトホラー場面以外の緊張感は素晴らしく、よく練られた流れであった。
本作のノルウェー人監督であるアンドレ・ウーヴレダルの話題作、「トロール・ハンター」も機会を見つけて観てみたい。
かなり期待できそう。
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