ソイレント・グリーン

Soylent Green
1973年
アメリカ
リチャード・フライシャー監督
スタンリー・R・グリーンバーグ脚本
ハリイ・ハリスン『人間がいっぱい』を下敷きに。
チャールトン・ヘストン 、、、ソーン(刑事)
エドワード・G・ロビンソン 、、、ソル・ロス(本、資料係)
リー・テイラー=ヤング 、、、シャール(家具、家に付属するメイド~愛人)
チャック・コナーズ 、、、タブ・フィールディング(護衛)
ジョセフ・コットン 、、、ウィリアム・R・シモンソン
ブロック・ピータース 、、、ハッチャー
ポーラ・ケリー 、、、マーサ
スティーヴン・ヤング 、、、ギルバート
古い映画特有の質感が良い。
2022年の近未来デストピアが描かれる。
もう明後日くらいの世界だ。
一年中猛暑が続き、公害で水は汚染され、動植物も激減し、少なくとも庶民の目の前からは姿を消す。
大変な人口増加に加え、極度な食糧難。
所謂、生の食材などの流通は絶え、無味無臭の「ソイレント・グリーン」などの合成食と水が配給されるのみ。
人々は配給時に長蛇の列を作り、配給量が足りないと「暴動」を起こす。
刑事のソーンは毎週、配給時の庶民の暴動鎮圧に駆り出される。
ここで管理社会の人に対する姿勢が露骨に現れる場面が、人々をパワーシャベルで石ころみたいに掬い上げて捕えているところである。単なる物というか頭数に過ぎない。とは言えわれわれも統計上の数に過ぎなかったりする。

富裕層は豪邸に住み、そこには「家具」と呼ばれる美しい娼婦?が付属する。
水もお湯もエアコンも使い放題で、生の野菜や果物、肉などの食材が冷蔵庫に保管されている。
ちなみに、ソーンとソルが共同で住むアパートでは、電機は脚漕ぎ(自転車)で発電していた。
上流層では、香りのよさそうな石鹸があったり、リビングにでかいゲーム機器が置いてあったりと、、、。
貧富の格差はここまで進んでいた。
貧困層は、夜など建物の階段に折り重なるように寝ている。
施設の床にも隙間なく寝ている。
こうなると、最早生活水準とかいうレベルではない。
辛うじて生きながらえている状況だ。
社会としてみれば、これは言うまでもなく、Degenerationではないか。

刑事であるソーンも金持ちの家で事件~殺人などあると、現場検証したついでに金目のものや食料を枕カバーに入るだけ入れてかっさらってしまう。何とも浅ましい。
そこで得た戦利品をソルと共にひとつずつ眺めては、昔を懐かしみ感動しているところなど、何とも言えない。
しかし、生の野菜をフォークで食べ、リンゴを丸かじりし、牛肉で作ったシチューを味わってボトルの酒を呑んでいる時のふたりの表情を観ていると、こちらまでニンマリしてしまう。妙に共感するところがある。食生活は大事なのだ。
ソルへのお土産として書物をプレゼントする。もう本など一切売ってはいないのだ。
まあ、酷い未来である。
1970年代初頭に考えられた2022年。明後日くらいに迫った未来。
こうはならないにしても、気象異常と人口増加は他人事ではない。
人を人とも思わぬ管理社会という面においても。

「本」(情報収集にあたる知識人)や「ホーム」(高齢者を安楽死させる施設)や「家具」(豪邸付属の美女)など、人のモノ化~記号化は、この映画の隅々まで行渡っていた。
主人公のソーンは、「ソイレント・グリーン」を製造する企業の上層部の有力者(弁護士)が暗殺された事件を追ってゆくうちに、その背景には巨大な組織が控えていることを推察する。
ソルが「交換所」で例の書物の内容を他の「本」たちと検討し合い「ソイレント・グリーン」が実は何であるか、その恐ろしい事実をついに突き止める。
ソルはその足で「ホーム」へ行き、ベッドに横たわってベートーベンの「田園」を聴きつつ、昔の地球の荘厳な自然の光景が広がる映像を眺めて静かに死出の旅に出ようとする。
だが、そこへソーンが駆け込んで来て、ガラス越しに相棒との最期の対話を果たす。
「証明するのだ。交換所へ行け。全てをあばけ」と、まさにソルの遺言である。
ソーンは独り密かに、ソルの遺体が運ばれる先を追ってゆく。
廃棄物処理場からベルトコンベヤーに乗って運ばれてゆく死体の群れは、ソイレント・グリーンとなって流れ出していくのだった。
ソイレント・グリーンが海洋プランクトンから生成されると言うのは全くの嘘であった。実際はプランクトン資源も枯渇しており、人は人を食っていたのだ。
それを突き止めたソーンは、警備兵との激しい撃ち合いとなり自らも撃たれて重傷を負う。
逃げ込んだ教会で最後の死闘となり死力を尽くして敵を倒す。
上司に隙を見て連絡していたため、瀕死の状態で警察に救助される。
「交換所に行って本は正しかったと伝えてくれ」「海は死にかけている。ソイレントの原料は人間なんだ。証拠は掴んだ」と言って担架に運ばれてゆく。
「牛のように人間を飼育するぞ。彼らにそれを伝えてくれ」「何とかして奴らを止めろ」と血に染まった指を突き出し叫ぶ彼に対し、上司は判った、必ず伝えると返すが、、、。
その担架が病院に向かったようには見えない。
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