百日紅 Miss HOKUSAI

2015年
原恵一 監督
杉浦日向子 「百日紅」原作
丸尾みほ 脚本
板津匡覧 キャラクターデザイン
富貴晴美、辻陽 音楽
椎名林檎 主題歌
声:
杏、、、お栄 (葛飾北斎で絵師)
松重豊、、、葛飾北斎
濱田岳、、、池田善次郎 (北斎宅の居候で絵師)
高良健吾、、、歌川国直 (歌川豊国門下の人気絵師、お栄に恋心を抱く)
美保純、、、こと (母)
清水詩音、、、お猶 (お栄の妹、盲目で尼僧に預けられている)
筒井道隆、、、岩窪初五郎 (北斎門下の人気絵師、お栄が恋心を抱く)
麻生久美子、、、小夜衣 (吉原の花魁、夜首が伸びる)
漸く観ることとなった。が、子供が煩くて落ち着いて観られず後日改めてじっくり見直したい。
オルタナティヴ・ロックとディープなお江戸が実に合う。
文化11年。1814年である。
飛びぬけた腕を持つ女流画家であるお栄を主人公とした物語。
葛飾北斎と娘のお栄とその妹お猶を軸に進行してゆく。
居候や犬や版元や秘かに慕っている相手や吉原の花魁などがそこに色を添える。
オカルティックな闇と光の交錯の眩い「江戸」がどっぷり堪能できる。
これは通常の旅行では味わいようもない「時間」だ。
映画ならではの醍醐味である。
北斎は滅多に家には戻らず仕事場として借りている長屋で絵を描くか、ぶらぶらしているかのどちらかだ。
絵についてはもはや神の域である。だがその風貌から北斎と信じてもらえなかったりする(まさかあ、、、という感じ)。
お栄は基本的に絵の師匠である父についているが、盲目で病弱の妹のケアも献身的にしている。
というより、妹との特別な時間が彼女(の精神)にとっても大切なのだ。
江戸では、絵画(浮世絵)の世界が生き生きと日常的感性に直結していて、そこに描かれる異界や霊魂や穢れや彼岸などがありありと現実に雪崩れ込んでくる。見えないモノの察知や共振や交わりの時間が交錯する日々なのだ。
フラジャイルで果敢ないお猶 の存在はお栄の感性を研ぎ澄ますことにも繋がっているように思える。
彼女が「橋」でいつも物思いに耽るのも象徴的だ。
ムンクの例の絵も突然、橋(という境界)で突然のインスピレーションを得て声のない叫びをあげてしまう様である。
お栄の描く世界は余りにリアルで地獄を描けば持ち主は文字通り地獄に落ちる羽目となった。
しかし父はその絵に持ち主を救うアイテムを描き加えて騒動を治めてしまう。
絵に「始末をきちんとつけろ」と。
なるほど、確かに一枚上手だ。
亡くなったお猶が父北斎のところにたったひとつの椿の花として舞い込む場面で感極まった。
この風情である。
ストーリーではない。この濃密な空間に胸が一杯になってしまった。
お江戸の粋な言葉使い、ニュアンス、所作、立ち振る舞い、生活の機微、異界の気配、光と闇がとてもビビッドであった。
鮮やかな臨場感と体を実際に運ぶような感覚は、まさに旅をしている気分だ。
そしてこれ程、贅沢な旅はない。
この圧倒的な物質性。
風の梵や仄かな香さえ感じられる空間であった。
杉浦日向子さんの世界をしっかり再構築できていたのでは、と思える。
声優陣がピッタリ合っていたことも大きい(岩窪初五郎が何とも雰囲気が良かった)。
杏は江戸にも詳しい人だが、凛としたお栄のキャラにはうってつけだった。
これは何度も見直してしまう映画となりそう。
本当に凄い傑作に出逢ったものだ。
この旅感覚は何とも謂えない。
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