フェリスはある朝突然に

Ferris Bueller's Day Off
1986年
アメリカ
ジョン・ヒューズ監督・脚本・製作
マシュー・ブロデリック、、、フェリス・ビューラー
アラン・ラック、、、キャメロン・フライ(フェリスの親友)
ミア・サ、、、スローン・ピターソン(フェリスの恋人)
ジェニファー・グレイ、、、ジーニー・ビューラー(フェリスの妹)
ジェフリー・ジョーンズ、、、エドワード・ルーニー(学生部長)
ベン・スタイン、、、経済教師
チャーリー・シーン、、、ドラッギー
シカゴは都会だということを改めて認識。
これ程気軽に観れる映画も珍しい。

フェリス・ビューラーという高校3年生が、ある日、学校をずる休みして、親友と彼女と3人で街に繰り出しやりたいことして暴れ回る噺である。(ある日といってもその日で9回目のずる休みで、学生部長は業を煮やしている)。
彼を怪しみ尻尾を掴んでお仕置きをしようとしている学生部長との攻防戦もあるが、全てにフェリスが上を行き、部長は散々な目に逢う。これが実にコメディというよりギャグマンガのノリなのだ。
ずる休みして彼女を誘い出すには極めつけの高級車が欲しいフェリスは、本当に病で寝込んでいる友だちキャメロンをたたき起こし、彼の父が実際には運転もせず、ただおむつで磨いているだけのスーパーカーを勝手に借りることにする。
キャメロンは父の言いなりになっていて自分を抑圧してしょっちゅう病気に逃げ込んでいる状況にあり、彼を父から解き放とうという試みもあり父の権威の象徴でもある世界に数えるほどしかないフェラーリ1961年型250GTに(キャメロンが必死に止めるにも関わらず)乗り込み突っ走る。
狼狽えるキャメロンを尻目に暫くフライ家の家宝で突っ走った後、適当な場所に駐車し怪しげな男に後を頼み、シカゴの待ちに3人で繰り出す。
ウィリス・タワーにお上りさんみたいに登って下を見下ろして気が大きくなったのか、ソーセージ王に成りすまして高級レストランで食事をし、シカゴ・カブスの試合を観戦するが、その時血眼になってフェリスを探している学生部長の目の前のTV画面に彼らが映っていたのを彼は見逃す。そう、見逃されるのだ。3人が食事をとったレストランにはこともあろうにフェリスの父が商談も兼ねて食事に来ていたのだが、うまく気づかれないようにかわしてしまう。
そしてお祭り?のパレードの車のステージに上がり歌を唄い出す。
これにはキャメロンも彼女のスローンも驚き何とか止めようとするが聞く耳を持たない。
思いっきり目立つが、波に乗ってやりたいことをするほど、強いものはない、という証明か。
そのまま中央突破である。あとの二人は呆れるばかり。
ジョンレノン(ビートルズ)の「ツイスト・アンド・シャウト」がホントに久々に聴けたが、こんなに良い曲だったのだと感慨深い。
やはりジョンのボーカルは聴かせる。声が良い。(俳優は実際には全く唄ってない)。
フェリスの人気と影響力は凄いもので、ずる休みの際に友人に腎臓が悪いと出任せに伝えたら「フェリスを救え」と謂う募金活動を始める友人も出ていた。
校内だけでなく街にもフェリスを救えと電光掲示板やポスター、壁面にペインまでされている始末。新聞にも取りざたされていた。後でどうするつもりだ。
街中で派手に遊びまくっているのに関係者には誰にも見つからない。
親にニヤミスすること何度あっても誤魔化してすり抜ける。
ここは、かつてのドリフのコント並みではあるが。
ここまで両親が騙されているのなら(フェリスを信じきっているのなら)平和でよいというもの。
(どんな映画でも、この両親程、平板で単純なキャラはあるまい。ちょっと呆れるが、まさに狙ったキャラなのだ)。
そして敵対するルーニー学生部長は噺を面白可笑しくするだけの道化に過ぎない。
フェリス・ビューラーはこんなに自由で何でも出来てしまうなら、別に学校をずる休みしなくとも学校で好き放題すれば良いのでは、、、とも思うが、外の世界でこそ何をかやらかしたいのだ。

「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(ジョルジュ・スーラ)が意味深に出てきたが、あれは結局、、、。
キャメロンの深層心理に何らかの影響を与えたのは確か。
(芸術~ポスト印象主義の威力か)。
光学理論に基づいた点描に、魂が吸い取られるような顔をしていた。
その後の彼の父の至宝であるフェラーリ1961年型250GTをぶっ壊すシーンに潜在的に繋がって行く。
ほとんどフェリスにそそのかされてやったようなものだが、その頃はもうキャメロンは父に反抗して自立にかける心づもりになっており、そのきっかけをくれたフェリスに感謝している。彼もこのはちゃめちゃな遊びを通して逞しさを身に付けた。
この引き寄せ力、巻き込む力は、感化させる力は、才能としか言いようもないだろう。
将来はタレント、アクター、歌手でも何でもスターとして成功することは間違いなし。
何ともやることなすこと良い方にとられ、彼の嘘を見抜き尻尾を掴もうとする人間は手ひどくやられてしまう。
何と恵まれた人だろうか。向うところ敵無しである。
唯一、彼のことを妬んで妨害しようとしていた妹も彼氏が出来た途端、兄の味方に変貌している。
大したペルソナだ(兄妹共に)。

噺全体は変わった作りもなく、特に異質で創意を感じるところもなく、寧ろ紋切り型にエンボス加工を施したような、開き直った感じを受けるのだが、そこが爽快で心地よく感じられるのかも知れない。
キャストがきっちりと嵌っていた。
それも大きな要素だ。
皆憎めない面々なのだ(笑。これは確かに大きい。
「人生は短い。たまには立ち止まって楽しめ。」よく言ったものである。
わたしはここのところ立ち止ったままであるが、ちっとも楽しんでいない、気がする(笑。
いい加減に、こころの底から愉しみたい。
ホントだ(爆。

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