プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
必ずパソコン画面(PCビュー)でご覧ください。

*当サイトはリンクフリーです。

PICKUP
ハイヒール
お嬢さん
とうもろこしの島
セールスマン
トラピスト1に寄せて
「労働疎外より人間疎外」によせて
カッシーニ グランドフィナーレ
カッシーニ グランドフィナーレⅡ
シチズンフォー  スノーデンの暴露
スノーデン
シャイン
鑑定士と顔のない依頼人
英国王のスピーチ
やさしい本泥棒
末期の目
レヴェナント: 蘇えりし者
透明な身体性
森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ
ヴィデオドローム2 ~イスラム国 ~アノニマス
見えない重力を描く Ⅱ
美の翳りに寄せて
写真についてーⅡ
午前零時の奇蹟(シュル・レアリスム覚醒の時間)
パーフェクト・デイ ~ルーリード ~ローリー・アンダーソン ~スーザン・ボイル
未来派の画家~ウンベルト・ボッチョーニ
Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。
「ゴールドベルグ変奏曲」 バッハ  ~グールド ~P・オトゥール ~ニーチェ
大昔のスケッチ(詩画集のための試作)
すでに世界は終わっていたのか ~ ヒエロニムス・ボスその1
スヌーズレン002
情報リテラシー  ~華氏911 ~不都合な真実
南伸坊「歴史上の本人」
プラトーン
カレンダー
08 | 2019/09 | 10
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

桜桃の味

Taste of Cherry001

Ta'm-e-Gīlāss   Taste of Cherry
1997年
イラン

アッバス・キアロスタミ監督・脚本・製作
ホマユン・パイヴァール撮影

ホマユン・エルシャディ、、、バディ
アブドルホセイン・バゲリ、、、バゲリ(トルコ人剥製師)
アフシン・バクタリ、、、クルド人兵士


今度はジグザグ坂をランドローバーで走る。その点で心配はなく観る事に専念出来る(笑。

バディは自殺を決意しその手助けしてくれる人間を車で探していた。
深く掘られた穴があり、そこに自分は睡眠薬を飲んで寝るから翌朝覗いて呼びかけに反応無ければスコップ20杯分土をかけてくれと言う依頼である。
どれほどの悩みと苦痛により自殺を選んだのかは一切語らないが、他人に話しても頭で理解は出来ても実感する事は所詮不可能であるから話さないと言う。確かにそれはもっともだ。
礼金は20万払うと約束である。相当な金額らしい。

Taste of Cherry002

最初に出逢ったのは、若いクルド人兵士で、金が儲かる簡単な仕事ということで、一度は乗りかかったが、仕事内容を察すると気味悪がって逃げていってしまう。
自殺の手助けなんてとても出来そうにない、まだ幼さの窺える内気な感じの青年である。
人選を誤ってはいないか。

次の男は、アフガニスタンの神学生であった。彼も貧しい苦学生のようであったが、バディの話を聴くと、コーランの教えのもと自殺は神に背く行為だと否定を繰り返すだけであった。
彼の立場ならそうするのは自然であろう。
普通、、、神学生にこういうことを頼むか?

コンクリート会社の掘削場で死んだように座り込み、思いに沈むバディの人影に土砂が勢いよく零されていく。この演出は実際に翌朝土をかけられる死のイメージを掻き立て秀逸であった。
映画ならではの演出を最大限に活かしている監督である。


いつのまにか助手席にいた老人は、バディの仕事を引き受けたただ独りの人間であるようだった。
最初、いきなり助手席にいるところから話が始まるため、バディの脳裏に浮かんだ架空の人物かと思った。
苦痛と悩みの内容は知らされないが、初老の男は彼をまるごと受け止め、彼の願いを聞き入れたのだ。
そして自分も過去に自殺を企てたが、首を釣ろうとロープを掛けた桑の実の甘味な味に助けられ自然の美しさに打たれ生還したと謂う。死を意識した後の生の素晴らしさを語る。
彼はバディの願いを受け止めた上で語る。夕日の美しさ、星空の美しさ、緑の美しさ、それらに君は目をつぶってしまうのか、と。
君が変われば世界も変わる。
わたしはむしろ君が生きる手助けがしたい、友よ、、、と呼びかける。

Taste of Cherry003

バディの幻想かと、思った彼は自然史博物館まで送らせて中に消えてゆく。
バディは帰りかけるが気持ちを高ぶらせまた博物館に取って帰す。
そして剥製の製作方法を講義している彼バゲリを外に呼び出し、明日自分がただ眠っているだけかも知れないから、声をかけるだけでなく石を投げて起こしてみてくれ、腕を持って揺らしてみてくれと頼む。
バゲリはよおく分かったと言って講義に戻ってゆく。

Taste of Cherry004

座り込んで空を眺めるバディ。
明らかに彼の心に変化が訪れているのが見て取れる。
長く伸びて行く美しい飛行機雲を見つめる。その後まさにターナーの夕日が燃え広がった。
そして黒い雲が空を覆い月も隠れて行く。
バディはその夜、穴に降り横たわる。

Taste of Cherry005

とても解像度の荒いビデオ画面に切り替わっている。翌朝であろう。
穴から青空が窺え、外には撮影スタッフがカメラや集音マイクなどを持って働いている。
バディ役の俳優が緩んだ表情で歩いており撮影スタッフ、監督か?と何やら話す。
若い兵士達が号令をかけながら勢いよく列をなして走っている。
不思議に唐突に変わったとか物語を中断してしまったという感がない。

兵士達に監督から撮影終わり、もう休んで結構と言う指示が伝わる。
若い兵士達はめいめいに疲れた様子で腰を下ろし、談笑する。
映画自体は昨夜で終わってしまっていたのか、、、。
バゲリの出る幕はなかった。つまり、バディがどうなったかは示されない。
いや、それでよいのかも知れない。
この目の荒い光景が陽の光に包まれているようだ。
桜桃の味をあの自然史博物館のベンチで知ってしまったのかも知れない。
(バディ独りではなく、こちらも)。


そういう映画だったのか。
アッバス・キアロスタミという監督、かなり形式~様式美にこそ拘るひとに想える。
窓の扱い、光と影の使い方になど特に。
そういえば、小津安二郎の大ファンということだ。
(分かるような気がする)。








関連記事

COMMENT

EDIT COMMENT

非公開コメント

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: