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GOMA28

Author:GOMA28
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七人の侍

7 004

1954年

黒澤明 監督
黒澤明、橋本忍、小国英雄 脚本
中井朝一 撮影
松山崇 美術
早坂文雄 音楽

三船敏郎 、、、菊千代(孤児の自称侍)
志村喬 、、、島田勘兵衛(智将)
加東大介 、、、七郎次(勘兵衛の元家臣)
木村功 、、、岡本勝四郎(郷士の末子、志乃と惹かれ合う)
稲葉義男 、、、片山五郎兵衛(勘兵衛の参謀)
千秋実 、、、林田平八(ムードメーカーの浪人)
宮口精二 、、、久蔵(凄腕の剣客)
土屋嘉男 、、、利吉(侍を集め世話役をする若い百姓)
津島恵子 、、、志乃(万造の娘)
藤原釜足 、、、万造(娘の髪を切り男装させる)
小杉義男 、、、茂助(防衛線の外に家を持つ百姓)
左卜全 、、、与平(中年の百姓、菊千代に目をかけられる)


これほど短い207分を味わうことはまずない。
見始めたかと思ったら、映画時間に吸い込まれ終わった後に時間の経過を知った。
観ている自分をこの間ほとんど意識しなかったため、こちら側での時間感覚はないに等しい。
(わたしは向こう側に飛んでいた)。
この比類ない直截的な臨場感はどこから来るのか。
脚本、演出・美術、撮影、役者の存在感と演技力、音楽どれもが優れたものであるからだろうが、ひとつ具体的に言うと、敵と味方をはっきり分断して描くことを徹底している点にあると思う。
敵は名のない野武士=エイリアンであり。
こちらの感情を傭兵と百姓との葛藤と協調そして一枚岩になるまでの過程に釘付けする。
これが本当に起伏があり濃密な活き活きした流れなのだ。
もし敵側にも個々の名のある個性があってその描写にシーンが行ったり来たりと飛んでいたら、われわれの視座が非常に揺らいで定まらない超越的なものにならざる負えない。恐らく抽象的な視座から距離が生まれ、相当現実味が削がれたはず。
この自然さ~質は現実体験に限りなく近い。
であるからその時間流に一体化してしまうのだ。

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この稠密な時空間は寧ろ夢に似たものかも知れない。
始まりは野武士に村を根こそぎ荒らされもうどうにもならなくなった百姓の苦悩とそこからひねり出された苦肉の策を巡り、村人に共振しつつ寄り添う。何とか侍が7人集まり村に到着してからは、徐々に百姓の強かさ狡賢さも露呈して来る(落ち武者狩りの戦利品を隠し持っていたり、食料も巧妙に貯蔵している)。逆に侍たちの身分~権威を純粋にリーダーシップにのみ発揮した高潔な姿勢に徐々に彼らに対する共感が増してゆく。元々村を野武士から守る間に食料を保証するだけの条件であり、西部劇のヒーローではまず引き受けない内容である。
彼らの献身的な働きで武装した百姓も様になり村は統制された要塞と化してゆく(防衛線の外の家は捨てられ、これを泣く泣く納得した時点で完全に一丸となる)。
侍たちを統率する島田勘兵衛の村の地形から的確に割り出した戦略がことごとく功を奏する知略ぶりとそれぞれ剣術に長けた侍が自分の持ち味を生かしつつチームプレイに徹するところは見事というしかない。そして智将島田とは正反対の無軌道かつ衝動的な爆発力で暴れ回る菊千代が、彼ら侍~百姓陣営に危険(不安)と活力(笑い)を呼び込みダイナミズムを生む。
大きく激しい緩急のなか、確実に戦果は挙げてゆくが、鉄砲に撃たれ侍がひとりまたひとりと死んでゆくと、こちらの胸も痛むほどに侍たちの方に共振を深めていた。
まさにこれらの動きが素早く交錯し気象も彼らの心象風景となって破れ目のない絵として展開し息もつかせぬ夢の時間を生きている。

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そして秀逸なのは、全ての決着のつく頃に大雨が降り出すのだ。
若い岡本勝四郎が尊敬の念を率直に伝えた凄腕の剣客久蔵と菊千代が鉄砲に相次いであえなく倒れ、激高した彼が「野武士はおらんか!」と叫んだ時には、すでに敵は誰も残っていなかった。
この雨がこれまでの非常に濃厚で分厚い時間を何もなかったかのように呆気なく押し流してしまう。
晴れて眩しい翌日、百姓たちは快活に歌と踊りを交えて一心不乱に稲を植えはじめ、その響きは空に木霊する勢いであった。
生き残った島田とその元家臣の七郎次と岡本の三人が立ち去ろうとしても関心を払う者もいない。
岡本と愛し合った情熱的な娘、志乃も一瞥して直ぐに田植えに入って歌を高らかに唄う。
侍は再び浪人として用無しの身となった。
「また戦いに負けた。勝ったのは百姓たちじゃ」呆然として島田が呟く。

確かに百姓たちは勝ち誇った生気が滾る顔をしていた。
こうした逆転もあるのだ。
夢から覚めるときの感覚にも似て。

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