ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

Darkest Hour
2017年
イギリス
ジョー・ライト監督
アンソニー・マクカーテン脚本
辻一弘 特殊メーキャップ
ダリオ・マリアネッリ 音楽
ゲイリー・オールドマン 、、、ウィンストン・チャーチル
クリスティン・スコット・トーマス 、、、クレメンティーン・チャーチル(妻)
リリー・ジェームズ 、、、エリザベス・レイトン(秘書)
スティーヴン・ディレイン 、、、ハリファックス子爵
ロナルド・ピックアップ 、、、ネヴィル・チェンバレン
ベン・メンデルソーン 、、、国王ジョージ6世
非常に説明的な邦題である。判り易いが味気ない。
ゲイリー・オールドマンが跡形もなくウィンストン・チャーチルになっていた。
大変な特殊メーキャップ技術だ。
顔だけでなく体形~シルエットや姿勢や仕草など全体の動きまで研究し尽くして臨んだことが実感できる。
凄まじい役作りだが、余裕を感じさせるところが、ゲイリー・オールドマン。
勿論、外観だけではないことは、言うまでもない。
そこは、ゲイリー・オールドマンなので、実に繊細に大胆に怪演している。いや軽妙で機知に富んだ好演であった。
きっとウィンストン・チャーチルとは、こういう人なのだろうと納得してしまうような。
それは、「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥールみたいに、本人よりも似ていたかも知れない(笑。
愉しみながらやっている感じであった。
「ダンケルク」を観ていたので、ダンケルクのイギリス軍兵士を救出する困難については、映画を一つ作れるくらいのドラマであることは知っていた。
ダイナモ作戦と民間人パワーの賜物である。ダンケルクからは多くの英兵が奇蹟的に帰還を果たすが、それを支援した”カレー”は殲滅してしまう。戦争の不可避の側面であるか。
戦争内閣で首相に任命されたチャーチルの使命は、徹底抗戦で国民のプライドを守り抜くことであった。
ファシズムに断じて屈しない。
確かにあの文脈では(この映画の流れでは)、それ以外にとるべき道はないだろう。
しかしこの映画を観て、ヒトラーとナチスドイツの底力もひしひしと伝わって来た。
それにほぼ孤立した形で立ち向かうチャーチルの恐怖と不安がどれ程のものであったか。
だが、この選択は閣僚が皆靡いていたイタリア(ムッソリーニ)を介した和平策をとるより圧倒的に正しいものであったことは間違いない。
わざわざ意を決して生まれて初めて地下鉄に独りで乗り込み人々の声を聴いて確信を深めたことだ。
この場面は素直に共感でき感動した。
だが、同時にチャーチルが閣外政治家や終盤の内閣での演説のなかで、もし和平案をとればイギリスはドイツの属国~植民地にされてしまうかも知れないという不安を市井の人々は抱えていると語り、彼ら(派閥を超えて政治家たち)を徹底抗戦に向けて奮い立たせるところでは、素直に共感を持って高揚できない距離感も生じる。
言うまでもないが、大英帝国の植民地政策も尋常ではないものであった。
清に対するアヘン戦争など自然に頭を過ってしまうだろう。
とは言え、、、日本も同等の過ちを過去に犯してはきたと言え、今後このような立場に置かれたら毅然たる態度で臨む以外にない。
今現在、この日常においても、、、
どのようなレベルであろうと、ファシズムは叩き潰すだけである。
ファシズムは徹底的に叩き潰すのみ!
何よりも透明化した何気ない日常に潜在するファシズムに対する感覚は、鋭利にしておく必要がある。

ヒッチコックと間違えそうなゲイリー・オールドマンであった(爆。
貫禄である。
そう、音楽も映像によくマッチしていたことも忘れてはならないところだ。
- 関連記事
-
- 七人の侍
- アイ、トーニャ
- ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
- 50回目のファースト・キス
- マグダラのマリア