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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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フジコ・ヘミングの時間

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いきなり、「人生とは時間をかけて私を愛する旅である」ときた。
激しく同意する。全くその通りだ。至言である。
完全につかみはOK(爆。なのだ。

ドキュメンタリー映画。非常に淡々としたものである。
だが、距離感を持って彼女の半生を辿るというような冷静に観れるものではなく、こちらで勝手にクローズ・アップして考えたり感じたりせずにはいられない深くて多様な流れの中で彼女の後をついてゆくようなものであった。
彼女の14歳の時の絵日記(夏休み?)が読まれては現在の彼女の現実が映されてゆく。
この絡みが微妙で面白い。
とても丁寧に綺麗に描かれた絵日記で簡潔な文と共に微笑ましく愛らしいものにも見えるが、そこにははっきりと愛着の問題も浮き彫りにされていた。
彼女の数奇な人生の原因も窺えるものである。
彼女はベルリンで生まれる。ピアニストとして身を立てようとした矢先に中耳炎を拗らせ耳が聞こえなくなる。今は辛うじて片耳だけ40%回復したそうだが、そのためもあり世界的なピアニストとして見出されたのは60歳を過ぎてからであった。

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デザイナーでロシア系スウェーデン人の父が蒸発してしまった後、残された母は独りでフジコと弟をピアノ教師で育ててゆく。
母はフジコにとって厳しいピアノ教師であり、将来の道はピアニストと端から決められていた。
フジコに強い罵声を浴びせては練習をさせていたという。
(そのせいで彼女は40歳くらいまで自分をホントに馬鹿だと思っていたそうだ)。
しかも彼女は顔立ちからしてハーフである。学校でもそのための虐めを受け、ピアノに向かう以外に行き場は無かったのではないか。
大人になって独り立ちした彼女の周りにはたくさんの猫と犬が生活を共にしていた。

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リストの「ラ・カンパネッラ」が絶妙のタイミングでちょっと出てきては消えて、、、最後にしっかり聴くことが出来てほっとする。
とってもよい。これまでに聴いたものの中で一番哀愁が感じられて、、、。
空間が何とも言えない豊潤さに充ちる。
わたしにとって一番印象に残ったものは「月の光」で、これまでに聴いたことのない甘味で濃厚なものであった。

何と言うのか、、、映像で観ているから尚更なのか、どれを聴いてもこの人の曲になる。
「ノクターン」(ショパン)もそうだし、「トルコ行進曲」(モーツァルト)もそうだ。
リストの「ため息」は初めて聴いたが完全に自分のものになっていて惹き付けられた。
「主題と変奏」(リスト)もモーツァルトのピアノソナタも、、、どれもこれもこの人の曲に思えた。
ガーシュインも弾いているではないか、、、「サマータイム」。幅も広い。

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これは何度も聴いて観てみなければ、、、彼女の世界各地にある自宅もとても素敵だし。
内装と調度のアンティーク趣味というか古いものが纏う格調高さを見つけそれを守る姿勢には感銘する。
シトロエンも古いタイプをいつまでも大切に乗っている、、、これはホントに趣味が良い。
音楽に関わる姿勢が、ものにも表れている。彼女は新しいものに気安く飛びつくことを嫌っているようだ。
自分の美意識をあくまで信じ貫いている。

更に自分の気になる人の家の中、書斎を見たいという気持ちにはまったく同感である。
わたしも人の書斎を観るのが無上の愉しみでもある。
それに加え、パリの風景~夜景がたまらない(ウッディ・アレンの映画並みの夜景)。
世界中をコンサートで飛び回り、彼女の行くところその周囲は、どこも素晴らしい絵になって行くが、やはりパリが圧倒的な美しさであった。パリの自宅にはパリ在住の日本の女性画家が丁度訪ねて来た。

この映画だけでも全く違う作曲家の曲のコンサートで、パリ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、ベルリン、ロサンゼルス、東京、京都を回っている。練習だけでも凄まじいものなのに、飛行機、電車、バス、タクシー、徒歩の移動だってその歳で容易なものとも思えない。そう大事なことだが、彼女はマネージャーは持たない。全てを自分一人で管理している。
年間60本のコンサートをこなすのだから大変なバイタリティだ。
それから楽器の特性上、持ち運べないことから会場のピアノの当たり外れにもかなり悩まされるという。
近頃東京がつまらないそうだ。「日本人って新しもの好きなのね」どこもニューヨークみたいになったら面白くないと、、、世界中を回るひとにとっては、その通りだろう。

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終盤、彼女は来日して古都でコンサートを開く。
京都の自宅は古民家を宮大工にリホームさせたこれまた素晴らしく味わいのあるものだ。
(彼女は母の大切に弾いていた古いピアノも完全にリストアしている)。
彼女の孤独な憩いのひと時、練習に向かう姿~それにしてもどの曲も譜面が完璧に頭に入っている、いや身体化されていることに驚く~友人とのさっぱりしたお茶会、手をさすりながら後何年弾けるか不安を漏らす彼女、、、。
(わたしはそれでもいつまでも16歳の気分なのよ、と漏らした言葉が印象に残る)。
今の彼女は、しっかり自分を認め確信~自信をもってピアニストの人生を歩んでいることが分かる。
ラ・カンパネッラは他の大演奏家とも聴き比べてくれと胸を張っていた。
そんな時々を琴の演奏をバックにした編集画像は素晴らしく、胸にぐっと込上げるものがあった。
ここで終わっても良いかなと思ったがその後で、何度か出てきたリストのラ・カンパネッラがしっかり聴ける。

ちょっと蛇足に感じる映像が流れてから「月の光」でエンドロールになるが、何とフジコのデザイナーであるお父さんの作品が最後の最後で彼女に見せられる(美術館所蔵のもののようだ)。
「世界一周客船のチケットの広告」のポスターである。
確かに一流作家のものだと感じられる。アール・デコ調の幾何学的デザインであった。
フジコの活躍によって再発見されたデザイナーとなったのだ。
何とも言えない彼女の表情で締めくくられる、、、その作品の出来栄えで父を認めることが出来たのか、、、。

意外なエンディングである。


絵になる人である。
これはもう一回観たい。



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