羊と鋼の森

2018年
橋本光二郎 監督
金子ありさ 脚本
宮下奈都『羊と鋼の森』 原作
世武裕子 音楽
久石譲×辻井伸行「The Dream of the Lambs」主題曲
山﨑賢人、、、外村直樹(新人調律師)
鈴木亮平、、、柳伸二(直樹の先輩調律師)
上白石萌音、、、佐倉和音(ピアニストを目指す高校生)
上白石萌歌、、、佐倉由仁(和音の妹のピアニスト)
三浦友和、、、板鳥宗一郎(ベテランコンサートチューナー)
堀内敬子、、、北川みずき(江藤楽器の事務員)
仲里依紗、、、濱野絵里(柳伸二の恋人~妻)
城田優、、、上条真人(バーのジャズピアニスト)
森永悠希、、、南隆志(引き籠りのピアニスト)
佐野勇斗、、、外村雅樹(直樹の弟)
光石研、、、秋野匡史(元ピアニストの調律師)
吉行和子、、、外村キヨ(直樹の祖母)
大晦日に観るにはよい映画であった。締めくくりにほっとする映画は助かる。
娘と一緒に観た。
主人公が何もない森の中で育てられた、というバックボーンを基調にして物語全体を調律している。
感覚を研ぎ澄ませて行う熟練を要する繊細な作業と、やはりその極みと謂えるピアノの演奏が交互に絡みつつ、張り詰めたトーンが最後まで途切れない。
最小限に抑えられたセリフと表情に、森の幻影とピアノの音色~音楽が静謐に重なりあって濃密に何をか語って行く手法は心地よいものであった。
(吉行和子などセリフは一言もなかったはず)。
ラヴェルの「水の戯れ」や「なき女王のためのパバーヌ」も鮮やかで良かったが「子犬のワルツ」にはふいに驚かされた。
あの入り方にはやられた。
とっても重い時間を畳み込んで籠っている人は少なくない。
その時間からの解放が手伝えるって、素敵な仕事ではないか。
山﨑賢人の笑顔がとっても良かった。
とは謂えサービス業である。様々な客相手に難癖付けられたりして結構すり減る職業でもある。

山﨑賢人のセンシティブで純粋な直向きさと三浦友和の詩的で寡黙な熟達した職人ぶりは印象的であった。
鈴木亮平の先輩の距離感も爽やかで理想的に思えた。
「ずっと好きでいられるってことが才能なんだ」、、、彼の言う通り、恐らくそうだ。
周囲の人たちみなが魅力的であったが、役を作り込まずに感覚を研ぎ澄ます形で臨んでいる雰囲気が良く伝わった。
上白石姉妹が劇でも姉妹というのが、何とも言えない(笑。
何と言うか、阿吽の呼吸が窺えた。モーツァルトの「きらきら星の変奏曲」愉しかった。(どのくらい実際に弾いているのか分からないが、結構弾けているように思える)。
上白石萌音のいつもの明るさがなく、ひたすらストイックで神経質なのは、役柄が芸術家タイプであることが良く分かるところ。
モーツァルトの「ピアノソナタ第3番」によく表れていた。
終盤で、才能ある妹が姉がプロのピアニストになる決意を知り、自分は調律師として彼女を支える決心をする。
「姉妹って、いいですねえ」と彼女らの支え合う絆の深さに感じ入る山崎の言葉を聴いて、家のふたりが声をそろえて「よくない!」とピシャリと返してきた。そういうところはしっかりシンクロしている。
ああいう(仲の良い)姉妹もいるんだよ、とだけ返しておいた。
上白石萌音の「366日」はヘビーローテで姉妹でよく聴いたものだ。(今回のピアノも、結構ホントに弾いてるように思う)。

演奏技術が確立されていれば、後は調律次第ということか。
勿論、調整・調律がしっかりされていることは、演奏の前提条件であろうが、余りに神経質に調律師に依存しているかに思えてしまった。普通なら一回調律してもらえば、半年は大丈夫だろうし、非常に弾き込む演奏家なら気になった時点で呼ぶのだろうが、ちょっと呼びすぎではないのか?
確かに演奏者は孤独であり不安も募るものだ。音そのものにナーバスになった時に頼れるのは調律師だけかも知れない。
技術・譜面の解釈レベルの相談なら自分のついている先生であろうが。
(何故か先生は一度も出てこない。迷いが生じたら寧ろ先生かとも思うのだが)。
何よりもピアノ調律の繊細な奥の深さが伝わって来る映画であるが、つい先日家にも調律師が来たが、何か随分違った。
家の調律師が別にいい加減とは想わないが、あそこまで神経を使うキメ細かい作業には感じなかった。
(わたしはずっと近くで見ていたのだが、「普段通りにしてください」とも言われなかったし、暇なため(笑)。

山﨑賢人は”ジョジョ”よりこっちの方が(こうしたアプローチが)圧倒的に良かった。
三浦友和の静かで重厚な存在感は申し分なかった。こんな良い役者だったのかと気づいたものだ。
「舟を編む」や「海街diary」のような映画と同じような感覚で観る事が出来た。
北海道の旭川のロケというのも趣き深い、、、。
久石譲×辻井伸行の主題曲には次女が感動していた。
久石譲の曲は、すぐにそれと分かるようになってきたものだ、、、。
(これだけたくさん映画等で聴いていると)。
親子で観る映画のベストかも、、、。
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